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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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127/132

第127話 最初の選択者

『やあ』


『レオン』


『今度こそ』


『僕の選択を』


『聞いてくれる?』


その声が。


空から。


降ってきた。


俺は。


世界樹を見上げる。


「……最初の選択者」


名前を。


口にしただけで。


胸の奥が。


ざわめいた。


かつて。


俺たちの前に現れた存在。


世界を。


一つに固定しようとした者。


誰かが選ばなければ。


世界は進まないと。


そう信じていた者。


そして。


何より。


自分自身を。


「選ぶ側」に。


固定してしまった者。


「……」


空の境界。


朝と夜の間に。


一人の男が。


立っている。


白い髪。


白い服。


黒い瞳。


そして。


無数の鍵。


その姿を見た瞬間。


ユウトが。


小さく息を呑んだ。


「……あいつ」


カインが。


拳を握る。


「また来たのか」


だが。


男は。


以前とは。


違っていた。


鍵を。


持っていない。


一本も。


持っていない。


「……」


男は。


両手を。


空っぽのまま。


こちらへ。


向けた。


『もう』


『鍵はいらない』


「……」


『少なくとも』


『僕には』


「どうして?」


俺が。


聞く。


男は。


少し。


笑った。


『君たちを』


『選ぶために』


『必要だった』


『でも』


『今は』


『違う』


「……」


『僕自身が』


『選ばれる側に』


『なってしまったから』


――。


その言葉に。


誰も。


何も。


言えなかった。


「選ばれる側?」


男は。


頷く。


『十三日目』


『この日になると』


『すべての選択者は』


『選択される』


「……」


『誰かに』


『ではない』


『世界そのものに』


『そして』


『自分自身に』


俺は。


男を見る。


「それで」


「お前は」


「何を選ぶ?」


男は。


答えなかった。


代わりに。


空を指差した。


朝と夜の境界。


そこに。


巨大な時計が。


浮かんでいる。


針は。


十三日目。


その文字の下に。


一つ。


小さな数字。


「一」


『最初の選択』


「……」


『十三日目には』


『十三の選択がある』


『一つずつ』


『全員が』


『選ぶ』


「何を?」


『自分の未来』


「……」


『ただし』


『一度選んだら』


『二度と変えられない』


「……」


俺は。


首を振る。


「それは」


「今までと」


「同じじゃないか」


男は。


黙る。


「俺たちは」


「もう知ってる」


「選び直せる」


「……」


「未来は」


「固定されない」


「……」


「一度選んだことを」


「間違いにしなくても」


「変えていい」


「それが」


「俺たちの」


「積み重ねてきた答えだ」


男は。


しばらく。


俺を見る。


そして。


静かに。


笑った。


『……そうだったね』


「?」


『だから』


『僕は』


『ここへ来た』


男は。


胸に。


手を当てる。


『僕自身も』


『選び直すために』


――。


その瞬間。


空から。


一枚の紙が。


落ちてきた。


俺の足元に。


ふわりと。


落ちる。


拾う。


そこには。


一行。


「最初の選択者――選択権を放棄します。」


「……」


男が。


言う。


『僕は』


『もう』


『誰かの未来を』


『選ばない』


『だから』


『選択者という名前も』


『いらない』


俺は。


紙を見る。


「じゃあ」


「お前は」


「何になる?」


『……』


男は。


困ったように。


笑った。


『それが』


『分からない』


「……」


『だから』


『今度は』


『名前から』


『自分で』


『決めたい』


俺は。


笑った。


「そうか」


『うん』


「なら」


「考えればいい」


『……』


「急がなくていい」


『ありがとう』


――。


世界樹が。


静かに。


揺れた。


一本の枝から。


白い葉が。


落ちてくる。


その葉に。


文字が。


浮かんだ。


「第三十七原則――役割を手放す自由。」


「……」


最初の選択者は。


その文字を。


じっと見つめている。


『僕は』


『ずっと』


『選択者でいなければ』


『存在できないと』


『思っていた』


「……」


『でも』


『役割が』


『なくなっても』


『僕は』


『僕なんだね』


「ああ」


俺は。


頷く。


「役割が」


「お前の全部じゃない」


『……』


男は。


目を閉じた。


そして。


初めて。


無数の鍵を。


持たない手を。


自分自身で。


握った。


『じゃあ』


『僕は』


『何になろうかな』


――。


その時。


ユウが。


男へ。


近づいていった。


「ねえ」


『……?』


「名前」


『まだ』


「じゃあ」


「僕と一緒だね」


男は。


少し。


驚いた。


『君も』


『まだ』


『名前を』


『持っていないのか?』


「違うよ」


ユウが。


笑う。


「僕は」


「ユウって」


「自分で決めた」


『……』


「だから」


「君も」


「自分で決めればいい」


『……そうだね』


ユウは。


男の隣に。


立った。


「どんな名前が」


「いい?」


『分からない』


「じゃあ」


「今は」


「分からないでいいんじゃない?」


『……』


男は。


少し。


笑った。


『君は』


『いいことを言うね』


「お兄ちゃんが」


「教えてくれた」


「……」


俺は。


少し。


照れくさくなった。


「俺は」


「そんな大したこと」


「言ってないぞ」


ユウが。


首を振る。


「ううん」


「大事なことだよ」


――。


その時。


世界樹の時計が。


鳴った。


――カン。


「十三日目――第一選択。」


空に。


一つの質問が。


浮かぶ。


「あなたは、誰のために生きる?」


「……」


俺は。


その文字を見る。


誰のため。


昔の俺なら。


すぐ答えていた。


ユウト。


家族。


仲間。


ルナ。


みんな。


でも。


今は。


違う。


俺は。


胸に。


手を当てる。


「……自分のため」


みんなが。


俺を見る。


俺は。


続ける。


「そして」


「一緒に生きたいと思う人たちのため」


「でも」


「誰かのために」


「自分を消すことは」


「もう選ばない」


「……」


アリアが。


微笑んだ。


「うん」


俺は。


空を見る。


「俺は」


「俺として」


「生きる」


その瞬間。


文字が。


消えた。


そして。


新しい文字。


「選択――承認。」


――。


ユウトが。


前へ出る。


「次」


空に。


第二の質問。


「あなたは、誰と生きる?」


ユウトは。


少し。


笑った。


「決まってる」


「……」


「兄貴と」


俺を見る。


「みんなと」


そして。


少しだけ。


考える。


「でも」


「兄貴だけじゃない」


「俺自身とも」


「……」


俺は。


笑った。


「そうだな」


「自分自身と」


「仲良くするの」


「大事だよ」


ユウトが。


笑う。


「兄貴が言うと」


「変な感じだな」


「うるさい」


みんなが。


笑った。


文字が。


消える。


「選択――承認。」


――。


第三の質問。


「あなたは、何を恐れる?」


ソウマが。


前へ出た。


「僕」


「……」


「失うこと」


静かに。


答える。


「でも」


「失わないことだけを」


「選ぶのは」


「もうやめる」


「……」


「離れても」


「また会えるなら」


「それを信じたい」


世界樹の葉が。


揺れる。


「選択――承認。」


――。


第四。


「あなたは、何を愛する?」


アリアが。


前へ。


歩いた。


「私は」


「……」


レオンを見る。


「この人」


「……!」


俺は。


固まった。


みんなが。


笑う。


アリアは。


少し。


顔を赤くしながら。


続けた。


「でも」


「この人だけじゃない」


「自分も」


「仲間も」


「この世界も」


「そして」


「この世界の外にいる」


「まだ会ってない人たちも」


「……」


「愛するって」


「一つにすることじゃないから」


俺は。


胸が。


熱くなった。


「選択――承認。」


――。


第五。


第六。


第七。


一つずつ。


みんなが。


自分の答えを。


選んでいく。


ハルは。


帰る場所を。


選んだ。


カエデは。


自分の名前を。


選んだ。


ミライは。


「まだ決めない」


と答えた。


それも。


承認された。


ゼロは。


「ここにいたい」


と答えた。


それも。


承認された。


ルナは。


「離れても」


「また会いたい」


と答えた。


それも。


承認された。


そして。


残り。


一つ。


十三番目。


最後の質問。


世界樹の時計が。


大きく。


鳴った。


――ゴォォォン。


空いっぱいに。


文字が。


浮かぶ。


「最後の選択。」


みんなが。


息を呑む。


俺も。


空を見上げる。


その文字の下に。


質問が。


現れる。


「この世界を、どうする?」


「……」


誰も。


答えない。


世界樹。


世界。


未来。


過去。


すべて。


そこに。


含まれている。


もし。


「このままにする」


なら。


変化しない。


もし。


「壊す」


なら。


終わる。


もし。


「作り直す」


なら。


また。


同じことが。


始まる。


――。


昔の俺なら。


ここで。


一人で。


決めていた。


でも。


今は。


違う。


俺は。


みんなを見る。


「俺一人では」


「決めない」


「……」


最初の選択者が。


驚いた顔をする。


「この世界は」


「俺たち全員のものだ」


「だから」


「全員で」


「選ぶ」


「……」


すると。


空に。


新しい文字が。


現れた。


「全員の意見が一致する必要はありません。」


「……」


さらに。


続く。


「違う答えを持ったまま、共に生きることも選択です。」


「……」


俺は。


笑った。


「そうだな」


アリアが。


頷く。


「それなら」


「私は」


「この世界を」


「続けたい」


ユウト。


「俺も」


ハル。


「僕も」


カエデ。


「私も」


ソウマ。


「僕も」


ルナ。


「私も」


ゼロ。


『僕も』


そして。


最初の選択者。


彼は。


しばらく。


黙っていた。


やがて。


空を見上げる。


『僕は』


『分からない』


「……」


『この世界を』


『続けたいのか』


『終わらせたいのか』


『まだ』


『分からない』


俺は。


頷いた。


「それでも」


「いい」


『……』


「分からないまま」


「ここにいていい」


『……ありがとう』


その瞬間。


世界樹が。


強く。


光った。


十三日目。


最後の質問。


その答えが。


決まらないまま。


時計が。


動き始める。


――カチ。


――カチ。


――カチ。


十三。


十二。


十一。


十。


数字が。


逆に。


減っていく。


「……!」


「何だ?」


誰かが。


叫ぶ。


俺は。


時計を見る。


「十三日目――残り十二。」


「……」


さらに。


一つ。


減る。


「残り十一。」


「おい」


俺は。


世界樹へ。


駆け寄る。


「待て」


「何を」


「カウントダウンしてる?」


ルナが。


時計を見る。


「……うん」


「何の?」


ルナは。


答えない。


その時。


最初の選択者が。


静かに。


言った。


『十三日目は』


『最後の日を』


『始める日』


「……」


『そして』


『十三日目が終わった時』


『本当の最後の日が』


『始まる』


「……!」


世界樹の文字が。


変わる。


「十三日目――残り十。」


「……」


俺は。


息を呑む。


残り。


十。


そして。


時計の横に。


今まで。


なかった文字が。


現れる。


「最後の日を始める者――未選択。」


「……」


俺は。


空を見上げた。


最初の選択者が。


俺を見る。


『レオン』


「何?」


『この最後の選択だけは』


『僕には』


『できない』


「……」


『君にも』


『できない』


「……」


『だから』


『誰が選ぶのか』


『みんなで』


『探さなきゃいけない』


「……」


世界樹の向こう。


遠い空。


そこに。


一つの。


小さな扉が。


開いた。


その扉の向こうから。


聞き覚えのある声。


『……レオン』


「……?」


『私を』


『忘れないで』


俺の胸が。


凍った。


その声は。


未来から来た。


ミナの声だった。


『千年後の私は』


『まだ』


『最後の日を』


『選んでいない』


「……!」


『でも』


『もう一人』


『選ぶ人が』


『いる』


「誰?」


長い沈黙。


そして。


未来のミナが。


答えた。


『千年後の』


『あなた』


「……」


『未来のレオンが』


『最後の日を』


『選ぶ』


その瞬間。


俺の胸の奥で。


千年後の。


あの声が。


蘇った。


――君は今、幸せ?


――もし幸せなら、僕は最後の日を選ばない。


そして。


もう一つの問い。


――もし、幸せじゃなかったら?


「……」


俺は。


拳を握った。


十三日目。


残り。


十。


そして。


千年後。


最後の日を選ぶ者は。


未来の俺。


でも。


未来は。


固定されない。


なら。


未来の俺が。


何を選ぶかも。


まだ。


決まっていない。


「……だったら」


俺は。


空を見上げる。


「千年後の俺に」


「会いに行けばいい」


その瞬間。


世界樹の時計が。


初めて。


逆ではなく。


未来へ向かって。


一気に。


回転した。


そして。


文字盤に。


新しい数字が。


浮かぶ。


「1000」


その下に。


一行。


「未来の自分との再会――開始。」

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