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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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126/132

第126話 本当の最初

「これが、本当の最初。」


その文字を。


俺は。


何度も見つめた。


「……本当の最初」


目の前には。


小さな男の子。


まだ名前を持っていない。


俺と同じ顔。


俺と同じような髪。


でも。


今のユウトとは違う。


もっと幼い。


もっと何も知らない。


それでも。


俺を見る目だけは。


不思議なくらい。


懐かしかった。


「お兄ちゃん」


「……ああ」


「僕」


「名前を」


「決めたい」


俺は。


頷いた。


「好きな名前を選べ」


「……」


少年は。


しばらく。


考えていた。


「レオン」


「ん?」


「お兄ちゃんは」


「どうして」


「レオンって名前なの?」


「……」


突然。


そう聞かれて。


俺は。


答えに詰まった。


「それは……」


俺は。


胸に手を当てる。


昔。


誰かに。


与えられた名前。


何度も。


呼ばれた名前。


何度も。


捨てようとして。


それでも。


最後には。


自分で。


選び直した名前。


「俺は」


「この名前を」


「自分で選び直したんだ」


「……」


「最初から」


「俺が考えた名前じゃない」


「でも」


「今は」


「俺が」


「俺自身の名前だと思ってる」


少年は。


じっと。


俺を見る。


「じゃあ」


「僕も」


「そうしたい」


「うん」


「誰かが決めた名前じゃなくて」


「自分で」


「選んだ名前」


「ああ」


少年は。


目を閉じた。


――。


長い沈黙。


そして。


小さく。


口を開く。


「……ユウ」


「ユウ?」


「うん」


「どうして?」


少年は。


少し。


恥ずかしそうに笑った。


「優しく」


「なりたいから」


「……」


「僕」


「まだ」


「何も知らないけど」


「お兄ちゃんみたいに」


「誰かを守るだけじゃなくて」


「誰かに」


「優しくできる人に」


「なりたい」


「……」


胸の奥が。


熱くなった。


「いい名前だ」


「……本当に?」


「ああ」


「じゃあ」


少年は。


自分の胸に。


手を当てる。


「僕」


「ユウ」


「それが」


「僕の名前」


――。


世界が。


震えた。


空に。


光が走る。


そして。


見えないところで。


何かが。


確かに。


変わった。


「第一の弟――ユウ」


その文字が。


空に浮かぶ。


そして。


その下に。


新しい文字。


「第36原則――名前は、願いではなく選択である。」


「……」


俺は。


その文字を見る。


名前。


願い。


選択。


昔の俺は。


名前に。


意味を込めれば。


その人の未来まで。


決まると思っていた。


強くなってほしい。


優しくなってほしい。


幸せになってほしい。


だから。


名前を与えることが。


未来を与えることだと。


思っていた。


でも。


違う。


名前は。


未来を決めるものじゃない。


ただ。


自分が。


どう生きたいか。


最初の一歩を。


自分で選ぶためのもの。


「ユウ」


「うん」


「これから」


「好きなように」


「生きろ」


「……」


「優しくなれなくてもいい」


「失敗してもいい」


「怒ってもいい」


「泣いてもいい」


「それでも」


「ユウは」


「ユウだ」


少年は。


少し。


驚いた顔をした。


それから。


笑った。


「うん」


「ありがとう」


――。


ルナが。


その様子を。


静かに見ていた。


「……」


「ルナ?」


「ううん」


「何でもない」


でも。


ルナの目には。


涙が浮かんでいる。


「どうした?」


「昔のレオンも」


「今みたいだった」


「……俺が?」


「うん」


「まだ」


「何も知らないのに」


「誰かが」


「自分で選べるように」


「ずっと」


「考えてた」


「……」


俺は。


少し。


笑う。


「なのに」


「途中で」


「忘れたんだな」


「うん」


「それで」


「何度も」


「間違えた」


「……」


ルナは。


首を振った。


「間違えたんじゃないよ」


「え?」


「選び直したの」


「……」


「あなたは」


「何度も」


「間違えた」


「何度も」


「苦しんだ」


「でも」


「そのたびに」


「また選んだ」


「だから」


「今ここにいる」


「……」


俺は。


ルナを見る。


「それって」


「結局」


「最初から」


「変わってないってことか?」


ルナは。


微笑んだ。


「うん」


「あなたは」


「ずっと」


「レオンだったよ」


「……」


その言葉が。


胸に。


静かに。


落ちた。


――。


その時。


ユウが。


空を見上げた。


「……ねえ」


「どうした?」


「これ」


「何?」


ユウが。


指を差す。


空に。


一つ。


小さな光。


「……」


その光は。


世界樹の葉よりも。


小さい。


でも。


確かに。


そこにある。


「何だろう」


「分からない」


ルナが。


その光を。


見つめる。


「……」


そして。


顔色が。


変わった。


「ルナ?」


「……これ」


「知ってるのか?」


「ううん」


「でも」


「覚えてる」


「……?」


ルナは。


空を見たまま。


呟いた。


「この光」


「最初の世界より」


「前から」


「ずっと」


「そこにあった」


「……」


俺も。


見る。


確かに。


何かが。


ある。


小さな。


白い光。


でも。


ゼロとは違う。


ゼロは。


俺の記憶の中に。


ずっと。


存在していた。


これは。


違う。


もっと。


遠い。


もっと。


古い。


「……」


すると。


その光から。


声がした。


『ユウ』


「……!」


ユウが。


驚く。


『おかえり』


ユウは。


首を傾げる。


「僕」


「ここに」


「来たことあるの?」


『うん』


「いつ?」


『ずっと前』


「……」


『まだ』


『君が』


『君になる前』


ユウの顔が。


曇る。


「……」


俺は。


光を見る。


「お前は」


「誰だ?」


光は。


すぐには。


答えなかった。


しばらくして。


小さな声。


『僕は』


『名前を』


『持たない』


「……」


『君たちが』


『最初の世界を』


『作るより前』


『ずっと』


『ここにいた』


俺の胸が。


ざわつく。


また。


“最初より前”。


また。


“もっと古い場所”。


「お前も」


「忘れられた存在なのか?」


『違う』


「じゃあ」


『忘れられたんじゃない』


『まだ』


『思い出されていない』


「……」


その言葉に。


背筋が。


冷たくなった。


忘れられたんじゃない。


まだ。


思い出されていない。


それは。


意味が。


まるで違う。


「じゃあ」


「誰が」


「思い出すんだ?」


光は。


静かに。


答えた。


『君』


「……」


『レオン』


『君が』


『最後に』


『思い出す』


「……俺が?」


『うん』


「どうして?」


『だって』


『君が』


『最後に』


『忘れたから』


――。


その言葉と同時に。


俺の胸に。


激しい痛みが走った。


「……っ!」


アリアが。


駆け寄る。


「レオン!」


「大丈夫……」


「でも!」


「大丈夫だ」


俺は。


胸を押さえる。


その奥。


いくつもの光のさらに。


奥。


今まで。


一度も。


触れたことのない場所。


そこに。


何かが。


いる。


「……」


俺は。


目を閉じる。


そして。


見えた。


――。


白い部屋。


二人の少年。


一人は。


俺。


もう一人は。


ユウ。


そのさらに。


少し離れたところ。


誰かがいる。


顔は。


見えない。


でも。


声だけが。


聞こえる。


『レオン』


「……」


『ユウ』


「……」


『二人とも』


『まだ』


『知らなくていい』


『でも』


『いつか』


『全部』


『思い出す』


――。


そこで。


記憶が。


途切れた。


俺は。


目を開ける。


「……」


ルナが。


心配そうに。


見ている。


「何を見たの?」


「……」


俺は。


ゆっくり。


答える。


「俺と」


「ユウの」


「もっと前に」


「誰かがいた」


「誰?」


「分からない」


「顔は?」


「見えない」


「でも」


「俺たちを」


「知ってた」


ルナは。


黙る。


そして。


少し。


震える声で。


言った。


「……私」


「何?」


「その人を」


「知ってる」


「……!」


「でも」


「思い出せない」


「名前は?」


「……」


ルナは。


首を振る。


「名前も」


「顔も」


「全部」


「忘れてる」


「……」


「でも」


「一つだけ」


「覚えてる」


「何を?」


ルナは。


空の光を見る。


「その人は」


「私たちに」


「最初に」


「別れを」


「教えた人」


「……」


俺は。


息を呑んだ。


「別れを?」


「うん」


「そして」


「同時に」


「再会を」


「教えた」


「……」


それは。


あまりにも。


今の俺たちと。


繋がりすぎていた。


別れ。


再会。


選択。


自由。


全部。


最初から。


誰かが。


教えていた。


――。


その時。


世界樹の時計が。


動いた。


一。


二。


三。


数字が。


高速で。


進んでいく。


「……何だ?」


第零日目。


第一日目。


第二日目。


第三日目。


第四日目。


第五日目。


そこから。


さらに。


六。


七。


八。


九。


十。


十一。


十二。


十三。


「……!」


そして。


時計が。


止まった。


十三日目。


俺は。


息を呑む。


また。


この数字。


けれど。


今回は。


以前とは。


違った。


時計の下に。


一つの文章が。


浮かんでいる。


「十三日目――最後の日を始める日。」


「……」


ユウトが。


息を呑む。


「ついに」


「来たのか?」


俺は。


首を振る。


「まだだ」


「え?」


「これは」


「最後の日じゃない」


「……」


「始める日だ」


その瞬間。


空が。


二つに割れた。


片方は。


夜。


片方は。


朝。


境界線の中央に。


一人の人影が。


立っている。


長い黒髪。


白い服。


顔は。


見えない。


でも。


声だけは。


はっきり。


聞こえた。


『レオン』


「……」


『ユウ』


「……」


『ルナ』


「……」


『ゼロ』


「……!」


全員の名前を。


呼んだ。


そして。


最後に。


こう言った。


『今度は』


『誰か一人が』


『最後の日を』


『選ぶんじゃない』


「……」


『ここにいる全員が』


『自分で』


『選ぶ』


『十三日目は』


『そのための日』


――。


俺は。


空を見上げた。


「……なら」


「まだ」


「終わってない」


『うん』


「始まるんだな」


『そう』


『本当の意味で』


『君たちが』


『全員で』


『選び直す日が』


来る。


俺は。


ルナを見る。


ユウを見る。


ゼロを見る。


そして。


後ろにいる。


みんなを見る。


誰も。


逃げない。


誰も。


俺に。


答えを求めない。


それぞれが。


それぞれの目で。


未来を。


見ている。


俺は。


笑った。


「……じゃあ」


「行こう」


十三日目へ。


最後の日を。


誰かに決めさせないために。


俺たち自身で。


選ぶために。


――。


その瞬間。


世界樹の時計が。


大きく鳴った。


――ゴォォォン。


そして。


空に。


新しい文字が。


浮かんだ。


「十三日目――選択者、全員。」


その下に。


さらに。


一行。


「最初の選択者が、帰ってくる。」


「……!」


俺の胸の奥。


最も古い場所から。


一つの声が。


聞こえた。


『やあ』


『レオン』


『今度こそ』


『僕の選択を』


『聞いてくれる?』

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