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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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125/132

第125話 初めて別れた日

「私」


ルナの手が。


俺の手から。


ゆっくりと離れた。


「この日だけは」


「思い出したくなかった」


「……」


世界樹の時計。


その文字を。


俺は見つめていた。


-二日目――最初の二人が、初めて別れた日。


「ルナ」


「……うん」


「俺たちは」


「この日に」


「別れたのか?」


ルナは。


すぐには答えなかった。


ただ。


空を見上げている。


そこには。


まだ。


星すらなかった。


世界が。


始まる前。


何もない場所。


そこに。


俺たち二人がいた。


「正確には」


ルナが。


静かに言う。


「別れようとした」


「……」


「でも」


「本当には」


「別れられなかった」


「どういうこと?」


ルナは。


少し笑った。


「見れば」


「分かるよ」


――。


その瞬間。


世界が。


白くなった。


俺の目の前から。


世界樹が消える。


アリアも。


ユウトも。


みんな。


消えていく。


最後に残ったのは。


俺と。


ルナ。


そして。


何もない空間。


「……また」


俺が。


呟く。


「ここか」


ルナが。


頷く。


「うん」


「でも」


「今度は」


「もっと昔」


――。


足元に。


何かがある。


小さな。


白い床。


そこに。


二人分の影。


俺と。


ルナ。


まだ。


名前すらない。


俺たち。


そして。


少し離れた場所に。


小さな白い光。


ゼロ。


『……』


ゼロは。


黙っている。


俺は。


その光を見る。


「お前も」


「いたんだな」


『うん』


『でも』


『この時は』


『まだ』


『僕も』


『君たちの隣には』


『いなかった』


「……」


ルナが。


前へ歩く。


「ここで」


「私は」


「レオンに」


「言ったの」


「何を?」


ルナは。


答えない。


代わりに。


昔の俺たちが。


現れた。


――。


『ねえ』


幼い俺が。


言う。


『うん?』


幼いルナが。


振り返る。


『このまま』


『ずっと』


『一緒にいる?』


『……』


ルナは。


黙った。


『嫌?』


『違う』


『じゃあ』


『どうして?』


ルナは。


少しだけ。


俯いた。


『怖いの』


『何が?』


『このまま』


『ずっと一緒にいたら』


『いつか』


『どちらかが』


『どちらかのために』


『全部を決めちゃう気がする』


「……」


俺は。


息を呑んだ。


それは。


今の俺たちが。


何度も。


何度も。


繰り返してきたことだった。


ルナが。


続ける。


「私は」


「最初から」


「怖かった」


「レオンが」


「私のために」


「全部を捨てることが」


「……」


「だから」


「この日に」


「離れようとした」


――。


昔の俺が。


ルナを見る。


『じゃあ』


『別々に行く?』


『……うん』


『どこへ?』


『分からない』


『僕も』


『分からない』


二人は。


黙った。


何もない世界。


道すらない。


行く場所もない。


それでも。


二人は。


それぞれ。


別の方向を向いた。


一歩。


歩く。


また一歩。


距離が。


少しずつ。


広がる。


「……」


俺は。


その光景を。


見ていた。


不思議だった。


悲しい。


でも。


どこか。


違う。


これは。


捨てる別れじゃない。


縛らないための。


別れ。


相手の未来を。


自分のものにしないための。


選択。


「……」


そして。


昔の俺が。


立ち止まる。


『ルナ』


『なに?』


『一つだけ』


『約束していい?』


『……うん』


俺は。


昔の自分を見る。


何を言うのか。


分からない。


けれど。


胸の奥では。


もう。


答えを知っていた。


『また』


『会おう』


ルナの目に。


涙が浮かぶ。


『うん』


『いつ?』


『分からない』


『どこで?』


『分からない』


『どうやって?』


『それも』


『分からない』


それでも。


二人は。


笑った。


『じゃあ』


『その時に』


『また』


『選ぼう』


――。


俺の胸が。


締め付けられた。


「……これが」


「最初の約束」


ルナが。


隣で。


頷く。


「うん」


「でも」


俺は。


記憶を見る。


昔の俺たちは。


そこで。


完全に別れた。


俺は。


右へ。


ルナは。


左へ。


そして。


二人の間に。


何もない空間が。


広がった。


「……」


俺は。


呟く。


「このあと」


「俺は」


「世界を作った」


「うん」


「ルナは」


「願いを作った」


「うん」


「それで」


「何度も」


「離れた」


「……」


ルナは。


目を閉じた。


「でも」


「一度も」


「約束を」


「忘れてなかった」


「……」


「だから」


「私が」


「アカツキを作った時」


「名前を」


「そうしたのか?」


ルナが。


微笑む。


「うん」


「アカツキ」


「夜明け」


「また」


「朝が来る」


「……」


「別れても」


「終わりじゃない」


「また会える」


「そのための」


「世界」


俺は。


目を閉じた。


――。


その時。


背後から。


声がした。


『だから』


「……?」


ゼロだった。


『僕は』


『ここに』


『残った』


「……」


『君たちが』


『また会うために』


『道を』


『残したかった』


「ゼロ」


『でも』


『君たちは』


『何度も』


『僕を忘れた』


「……」


『それでも』


『僕は』


『待った』


『ずっと』


『第零日目で』


「……」


胸の奥が。


熱くなる。


「ありがとう」


『……』


ゼロが。


少し。


光った。


『でも』


『まだ』


『終わってない』


「……?」


世界が。


突然。


暗くなった。


昔の風景が。


消える。


そして。


空に。


一つの。


巨大な文字が。


浮かんだ。


「第一の別れ――完了」


「……完了?」


ルナが。


眉を寄せる。


その下に。


さらに。


文字が現れる。


「第二の別れ――未完了」


「……」


俺は。


息を呑む。


「第二の別れ?」


ルナも。


黙っている。


すると。


遠くから。


声がした。


『次は』


『君たちが』


『世界を作った後』


「……」


『君が』


『誰かを守るために』


『離れた日』


俺の胸が。


痛む。


『そして』


『ルナが』


『願いを』


『一人で』


『抱えた日』


「……」


それは。


俺たちが。


知っている歴史。


何度も。


何度も。


繰り返した歴史だった。


俺は。


ルナを見る。


「……あの日か」


「うん」


「俺が」


「全部を」


「背負おうとした日」


「うん」


「ルナが」


「全部を」


「願おうとした日」


「……うん」


俺は。


拳を握る。


「でも」


「それは」


「最初の別れとは」


「違う」


ルナが。


俺を見る。


「どうして?」


「最初は」


「俺たち」


「お互いの自由のために」


「離れた」


「……」


「でも」


「二回目は」


「怖くて」


「相手を守ろうとして」


「勝手に」


「離れた」


ルナの目が。


揺れる。


「……そう」


「だから」


「そこから」


「全部」


「おかしくなった」


「……」


ルナは。


俯く。


「ごめん」


「違う」


俺は。


首を振る。


「俺も」


「ごめん」


「……」


「俺たちは」


「悪かったんじゃない」


「ただ」


「怖かったんだ」


「……うん」


二人の間に。


沈黙が。


落ちる。


すると。


世界が。


再び。


動き始めた。


遠くに。


一つの扉。


黒い。


扉には。


こう書かれている。


「第二の別れ」


俺は。


扉を見る。


「開ける?」


ルナに。


聞く。


ルナは。


すぐに。


答えなかった。


「……」


そして。


俺の手を。


握る。


「今度は」


「一緒に」


「開けたい」


「……ああ」


俺たちは。


同時に。


扉へ。


手を伸ばした。


――。


だが。


触れる直前。


扉の向こうから。


声がした。


『待って』


「……?」


聞き覚えのある声。


俺は。


息を呑む。


『その扉は』


『二人だけでは』


『開けられない』


「誰だ?」


扉の向こう。


少し。


間があった。


そして。


声が答える。


『君が』


『最初の世界で』


『最初に』


『救おうとした者』


「……!」


俺の心臓が。


大きく。


鳴った。


ユウト。


いや。


違う。


もっと。


もっと前。


世界を作る前。


最初の選択。


最初の願い。


俺が。


「救いたい」と。


思った。


最初の存在。


「……誰だ?」


扉の向こうから。


答えが返る。


『君が』


『最初に』


『名前を』


『呼んだ者』


「……!」


俺は。


ゼロを見る。


ゼロは。


静かに。


光っている。


『僕じゃないよ』


「……」


『僕は』


『君が』


『最初に』


『名前をつけた者』


「……?」


『でも』


『その前に』


『君が』


『名前を』


『呼んだ者が』


『いる』


「……」


ルナが。


小さく。


呟く。


「レオン」


「……?」


「私も」


「思い出した」


「何を?」


ルナは。


涙を浮かべながら。


答えた。


「最初の名前」


「……」


「あなたが」


「初めて」


「誰かを」


「呼んだ名前」


世界が。


静まり返る。


ルナが。


その名前を。


口にする。


「――ユウト」


「……!」


俺は。


息を呑んだ。


「でも」


「今のユウトじゃない」


「……」


「もっと」


「もっと最初の」


「まだ」


「世界に」


「生まれていなかった」


「あなたの弟」


「……」


俺の胸の奥。


一番深い光が。


震えた。


その光の中から。


小さな声が。


聞こえる。


『お兄ちゃん』


「……!」


俺は。


反射的に。


手を伸ばした。


「ユウト……?」


返事は。


なかった。


ただ。


扉の向こうから。


小さな。


足音が。


一歩。


近づいてくる。


――トン。


また。


一歩。


――トン。


そして。


扉の向こうから。


幼い声。


『今度は』


『僕も』


『一緒に』


『選んでいい?』


俺は。


涙を。


拭った。


そして。


答えた。


「ああ」


「今度は」


「絶対に」


「お前一人には」


「決めさせない」


扉の向こうから。


小さな笑い声。


『違うよ』


『お兄ちゃん』


『僕が』


『自分で』


『決めたいんだ』


「……」


俺は。


笑った。


「ああ」


「そうだな」


「お前の未来は」


「お前が」


「決めればいい」


――。


黒い扉に。


亀裂が入った。


光が。


漏れ出す。


そして。


扉に。


新しい文字が。


刻まれた。


「第二の別れ――再選択可能。」


俺は。


ルナと顔を見合わせる。


「……行こう」


「うん」


俺たちは。


同時に。


扉を開いた。


その先にいたのは。


小さな男の子だった。


黒い髪。


赤い瞳。


俺と。


よく似た顔。


でも。


今のユウトとは。


違う。


まだ。


名前すら。


持っていない。


少年は。


俺を見上げた。


そして。


笑った。


「……お兄ちゃん」


その瞬間。


俺の胸の中にある。


すべての光が。


一つに。


重なった。


――。


そして。


世界樹の時計が。


遠くで。


鳴った。


第三日目。


ではなく。


-一日目。


さらに。


その下に。


新しい文字。


「最初の弟――再会。」


俺は。


少年の前に。


しゃがむ。


「……名前」


「まだ」


少年は。


首を振る。


「じゃあ」


「どうする?」


少年は。


俺を見て。


少し考えた。


そして。


自分の胸に。


手を当てた。


「僕」


「自分で」


「決めたい」


俺は。


笑った。


「ああ」


「好きな名前を」


「選べ」


少年は。


空を見上げた。


何もない。


真っ白な空。


でも。


少年の目には。


そこに。


何かが。


見えているようだった。


「……じゃあ」


少年が。


初めて。


自分の名前を。


選ぼうとする。


その瞬間。


世界樹のどこかで。


まだ。


誰にも。


知られていない。


古い時計が。


動き始めた。


――カチ。


――カチ。


――カチ。


そして。


文字盤に。


一つの数字が。


浮かんだ。


「一」


その下に。


小さく。


こう刻まれる。


「これが、本当の最初。」

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