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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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124/132

第124話 最初に呼んだ名前

『やっと』


『僕の番だ』


その声を聞いた瞬間。


俺の胸の奥が。


強く。


強く。


震えた。


「……」


世界樹の根元。


そこにある。


名もない扉。


誰も。


触れていない。


それなのに。


扉は。


少しずつ。


開いていく。


――ギィ……。


「レオン」


ルナが。


俺の腕を掴む。


「うん」


「この声……」


「ああ」


俺も。


分かっていた。


この声は。


初めて聞く。


なのに。


知っている。


ずっと昔から。


俺の中に。


残っていた。


そんな声だった。


――。


扉の向こうには。


何もなかった。


白い。


白い。


空間。


でも。


その中央に。


小さなものが。


浮かんでいる。


光。


小さな。


白い光。


「……」


俺は。


それを見た瞬間。


言葉を失った。


「これ……」


ルナが。


小さく呟く。


「最初の光」


「……?」


俺が。


振り向く。


「最初の光?」


ルナは。


頷く。


「うん」


「でも」


「アサじゃない」


「……」


「アサより」


「もっと前」


俺の胸が。


ざわつく。


「じゃあ」


「これは」


光が。


ゆっくり。


こちらへ。


近づいてくる。


『僕は』


『ずっと』


『君の中にいた』


「……」


『でも』


『君は』


『僕を』


『忘れた』


「……」


「俺が?」


『うん』


『でも』


『責めてない』


「どうして?」


『だって』


『忘れることも』


『君が』


『生きるために』


『必要だったから』


「……」


その言葉を聞いた瞬間。


胸の奥が。


痛んだ。


「俺が」


「忘れなきゃ」


「生きられなかった?」


『そう』


『君は』


『最初の世界を』


『作る前に』


『一度だけ』


『僕を』


『置いていった』


「……」


記憶が。


揺れる。


白い空間。


小さな光。


俺。


そして。


もう一人。


ルナ。


――。


『ねえ』


『どうする?』


『この子』


『どうしよう』


『……』


俺の声。


幼い。


今よりずっと。


弱い。


『名前』


『つける?』


『うん』


『でも』


『名前をつけたら』


『この子も』


『選ばれちゃうよ』


「……!」


俺は。


思わず。


息を呑んだ。


ルナが。


俺を見る。


「レオン……」


俺は。


記憶の続きを。


見る。


――。


白い光が。


俺の前に。


浮かんでいる。


『僕は』


『名前がほしい』


幼い俺が。


答える。


『でも』


『君は』


『自分で』


『選びたい?』


『うん』


『じゃあ』


『今は』


『つけない』


『……』


『待ってて』


『僕たちが』


『もう少し』


『自分で選べるようになったら』


『その時』


『ちゃんと』


『君の名前を』


『一緒に』


『選ぼう』


――。


「……」


俺は。


目を開ける。


光が。


目の前にいる。


『思い出した?』


「……少し」


『うん』


「俺は」


「お前に」


「名前を」


「つけなかった」


『そう』


「なのに」


『君は』


『僕を』


『一度だけ』


『呼んだ』


「……」


「何て?」


光が。


小さく。


揺れる。


『僕は』


『その名前を』


『ずっと』


『待ってた』


「……」


俺は。


必死に。


記憶を探る。


名前。


最初に。


俺が呼んだ名前。


アサではない。


ノアでも。


ユウトでも。


ルナでもない。


もっと。


もっと。


古い。


まだ。


俺が。


レオンと名乗る前。


――。


『ねえ』


『名前』


『どうする?』


『……』


『じゃあ』


『君は』


『――』


「……!」


その瞬間。


名前が。


口から。


自然に。


こぼれた。


「……ゼロ」


光が。


止まった。


「ゼロ……」


ルナが。


繰り返す。


白い光が。


大きく。


輝いた。


『……うん』


『それ』


『僕の名前』


「……」


俺は。


呆然と。


光を見る。


「ゼロ……」


『君は』


『僕を』


『そう呼んだ』


「どうして」


『何もなかったから』


「……」


『何もないところから』


『始まると思ったから』


「……」


そうだった。


ゼロ。


何もない。


でも。


何もないからこそ。


何にでもなれる。


「俺は」


「お前を」


「捨てたのか?」


ゼロは。


少しだけ。


黙った。


『違う』


『君は』


『僕を』


『置いていった』


「……」


『捨てたんじゃない』


『戻ってくるつもりだった』


「でも」


『戻れなかった』


「……」


『君は』


『世界を作った』


『一つ』


『また一つ』


『そして』


『何度も』


『やり直した』


『そのたびに』


『僕のことを』


『少しずつ』


『忘れていった』


「……」


俺は。


拳を握る。


「じゃあ」


「今までの」


「第零日目は?」


『僕』


「……」


『僕が』


『ずっと』


『待っていた場所』


「……!」


「じゃあ」


ルナが。


声を震わせる。


「第零日目って」


ゼロは。


答える。


『始まりじゃない』


『戻る場所』


「……」


『君が』


『いつか』


『帰ってくるために』


『残していた場所』


俺は。


言葉を失った。


第零日目。


最初の日。


最初の世界。


俺たちは。


ずっと。


そこを。


“始まり”だと思っていた。


違った。


そこは。


――帰る場所だった。


「……だから」


俺は。


呟く。


「世界樹の時計は」


「第零日目より」


「下へ」


「戻れたのか」


『うん』


「-一日目」


『そこは』


『君が』


『世界を作る前の日』


「……」


「じゃあ」


「その前には?」


ゼロが。


答える。


『何もない』


「……」


『でも』


『何もないことは』


『終わりじゃない』


『始める前』


「……」


俺は。


笑った。


「お前」


「昔から」


「難しいこと言ってたんだな」


『君が』


『そういう名前を』


『つけたんだよ』


「……それは」


「俺のせいか」


『うん』


ゼロが。


笑ったような気がした。


――。


その時。


世界樹が。


突然。


大きく揺れた。


「……!」


空が。


暗くなる。


星が。


一つずつ。


消えていく。


アリアが。


剣に手をかける。


「レオン!」


「ああ」


俺も。


空を見る。


星が。


消えている。


でも。


消えたわけじゃない。


何かが。


覆っている。


黒い。


巨大な影。


「……また」


カインが。


呟く。


「選ぶ者か?」


「分からない」


俺は。


答える。


影は。


巨大な目を。


開いた。


――。


『ゼロ』


「……!」


影が。


白い光を見る。


『お前は』


『まだ』


『存在していたのか』


ゼロは。


何も。


答えない。


影が。


続ける。


『ならば』


『今度こそ』


『選べ』


「……」


『存在するか』


『存在しないか』


『二つに一つ』


俺は。


前へ出た。


「違う」


『……』


「ゼロは」


「そんな二択を」


「選ばなくていい」


影が。


俺を見る。


『レオン』


「そうだ」


『お前は』


『まだ』


『同じことを言うのか』


「何が?」


『選ばない』


『決めない』


『自由』


『そんなものでは』


『世界は』


『前に進まない』


俺は。


拳を握る。


「違う」


「世界は」


「誰かが」


「無理やり」


「決めなくても」


「進む」


『証拠は?』


「……」


俺は。


振り返る。


そこには。


みんながいた。


アリア。


ユウト。


ルナ。


ハジメ。


ソウマ。


ハル。


カエデ。


ミライ。


名前を持たない者たち。


そして。


それぞれが。


自分の意思で。


ここにいる。


「これが」


「証拠だ」


『……』


「誰も」


「俺に」


「命令されてない」


「誰も」


「俺に」


「選ばれてない」


「それでも」


「ここにいる」


「……」


「それだけで」


「十分だ」


影が。


しばらく。


沈黙する。


そして。


巨大な目が。


ゆっくり。


閉じた。


『……ならば』


『次の問いを』


「何?」


『ゼロを』


『どうする?』


「……」


『存在させるのか』


『それとも』


『元の場所へ』


『戻すのか』


「……」


ゼロが。


俺の隣に。


浮かんでいる。


小さな。


白い光。


俺は。


それを見る。


「……ゼロ」


『うん』


「どうしたい?」


『……』


ゼロは。


少し。


黙る。


そして。


初めて。


自分から。


答えた。


『僕は』


『ここにいたい』


「……」


『でも』


『レオンが』


『決めるんじゃなくて』


『僕が』


『決めたい』


俺は。


笑った。


「ああ」


「それでいい」


世界樹が。


光る。


新しい葉が。


一枚。


落ちてくる。


そこに。


文字が。


浮かんだ。


「第三十五原則――存在するかどうかを、自分で選ぶ自由。」


「……」


ゼロが。


その文字を見る。


『これ』


『僕のため?』


「違う」


俺は。


首を振る。


「ゼロだけじゃない」


「ここにいる」


「全部の存在のためだ」


「……」


「存在していいかどうかを」


「誰かに」


「決めさせない」


ゼロが。


小さく。


笑った。


『ありがとう』


「礼はいらない」


『じゃあ』


「ん?」


『また』


『一緒にいよう』


「……」


俺は。


笑った。


「ああ」


「今度は」


「置いていかない」


ゼロは。


答えた。


『違うよ』


「え?」


『今度は』


『置いていかれても』


『僕は』


『僕の足で』


『帰る』


「……」


胸の奥が。


熱くなる。


そうだ。


それでいい。


誰かに連れてこられるんじゃない。


誰かに待たされるんじゃない。


自分で。


歩いて。


帰ってくる。


――。


その時。


空の影が。


消えた。


世界樹に。


静けさが。


戻る。


けれど。


時計だけが。


まだ。


動いていた。


第零日目。


-一日目。


さらに。


その下。


存在しないはずの場所へ。


針が。


ゆっくり。


進んでいく。


そして。


新しい数字が。


現れた。


「-二日目」


「……!」


ルナが。


息を呑む。


「レオン」


「ああ」


「ここから先は」


「私も」


「知らない」


「……」


「だって」


ルナは。


俺を見る。


「ここは」


「私たちが」


「まだ」


「何も」


「選んでいなかった場所だから」


「……」


時計の文字が。


変わる。


その下に。


一行。


新しい言葉が。


刻まれた。


「-二日目――最初の二人が、初めて別れた日。」


「……」


俺は。


息を呑んだ。


「別れた……?」


ルナの手が。


俺の手から。


ゆっくり。


離れる。


「……レオン」


「ルナ?」


彼女は。


悲しそうに。


笑った。


「私」


「この日だけは」


「思い出したくなかった」

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