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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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117/132

第117話 最初に選んだもの

「君は」


少年が。


俺を見つめている。


「最初に」


「何を選ぶ?」


その問いが。


静かな空間に。


落ちた。


――最初。


その言葉が。


胸の奥に。


引っかかった。


最初の日。


最初の世界。


最初の願い。


最初の選択。


俺は。


何度も。


それらを。


見てきた。


何度も。


やり直してきた。


何度も。


失敗して。


何度も。


世界を作り直した。


でも。


今。


目の前にいる少年は。


もっと。


もっと前の。


俺に。


問いかけている。


「……」


俺は。


少年の前に。


しゃがんだ。


「分からない」


正直に。


答える。


少年は。


驚かなかった。


「うん」


「分からないよな」


「うん」


「俺も」


「ずっと」


「分からなかった」


少年は。


首を傾げる。


「じゃあ」


「どうして」


「世界を作ったの?」


「……」


「どうして」


「何度も」


「やり直したの?」


俺は。


拳を。


握った。


「誰かを」


「助けたかった」


「誰?」


「弟」


「ユウト?」


「……ああ」


俺は。


頷く。


「ユウトを」


「助けたかった」


少年は。


静かに。


聞いている。


「でも」


「何度やっても」


「誰かが」


「死んだ」


「誰かが」


「犠牲になった」


「だから」


「やり直した」


「……」


「今度こそ」


「誰も失わない世界を」


「作りたかった」


少年は。


しばらく。


黙っていた。


そして。


小さく。


聞いた。


「それは」


「最初に」


「選んだこと?」


「……」


俺は。


答えられなかった。


違う。


たぶん。


それは。


最初じゃない。


もっと前に。


俺は。


別のものを。


選んでいた。


「……」


俺は。


少年を見る。


「たぶん」


「俺が最初に選んだのは」


「誰かを助けることじゃない」


「……」


「一緒にいることだ」


少年の目が。


少しだけ。


大きくなる。


「一緒に?」


「ああ」


俺は。


笑う。


「誰か一人を」


「選ぶんじゃなくて」


「みんなで」


「一緒にいたかった」


「……」


「だから」


「最初に」


「『全部、一緒にいられたらいいな』って」


「言ったんだと思う」


少年は。


嬉しそうに。


笑った。


「やっぱり」


「そうだった」


「……知ってたのか?」


「うん」


「ずっと」


「待ってたから」


「……」


その言葉に。


ハジメが。


一歩。


前へ出た。


「君は」


「ずっと」


「ここにいたの?」


少年は。


頷いた。


「うん」


「どれくらい?」


「分からない」


「時間は?」


「なかった」


「……」


「だから」


「待つしかなかった」


時間が。


存在しない場所。


そこに。


ずっと。


この少年は。


いた。


世界が。


生まれる前から。


俺が。


俺になる前から。


そして。


誰にも。


選ばれないまま。


それでも。


消えなかった。


「……」


俺は。


少年の手を。


取った。


「ごめん」


少年が。


目を瞬く。


「どうして?」


「俺は」


「お前を」


「知らなかった」


「……」


「ずっと」


「探してたと思ってた」


「でも」


「実際は」


「見えてなかった」


少年は。


首を振る。


「違うよ」


「何が?」


「君は」


「何度も」


「ここまで来た」


「……え?」


「ただ」


「そのたびに」


「別の誰かを」


「助けようとして」


「通り過ぎていった」


「……」


俺の胸が。


痛んだ。


「だから」


「僕は」


「君が」


「自分を」


「選ぶまで」


「待ってた」


「自分を?」


「うん」


「誰かのためじゃなく」


「世界のためでもなく」


「未来のためでもなく」


少年は。


俺の目を見る。


「君自身を」


「選ぶまで」


「……」


俺は。


言葉を失った。


今まで。


ずっと。


誰かを救うことを。


考えていた。


世界を。


未来を。


仲間を。


家族を。


失われた可能性を。


選ばれなかった存在を。


みんなを。


でも。


その中に。


一つだけ。


足りなかったものがある。


――俺自身。


「……」


アリアの声が。


遠くから。


聞こえた気がした。


『レオン』


俺は。


目を閉じる。


母さん。


父さん。


ユウト。


セリア。


アリア。


みんなの顔が。


浮かぶ。


そして。


最後に。


俺自身が。


浮かんだ。


泣いている俺。


怒っている俺。


失って。


絶望して。


それでも。


立ち上がってきた俺。


「……」


俺は。


少年の手を。


握った。


「俺は」


「自分を」


「選ぶ」


少年は。


笑った。


「うん」


「でも」


俺は。


続ける。


「自分だけを」


「選ぶんじゃない」


少年が。


黙る。


「俺自身を」


「選ぶってことは」


「俺が」


「俺の人生を」


「自分で決めるってことだ」


「……」


「だから」


「誰かと一緒にいることも」


「俺が選ぶ」


「誰かを愛することも」


「俺が選ぶ」


「誰かを助けることも」


「俺が選ぶ」


「そして」


「誰かに助けてもらうことも」


「選ぶ」


「……」


俺は。


笑った。


「一人で全部やることを」


「やめる」


その瞬間。


少年の身体から。


小さな光が。


溢れた。


「……!」


白い光。


でも。


今まで見てきた光とは。


少し違う。


その光には。


色がない。


名前もない。


役割もない。


ただ。


温かい。


「これ」


ハジメが。


呟く。


「始まりの前の光」


「ああ」


俺は。


頷く。


光は。


俺の胸へ。


近づいてくる。


でも。


入ってこない。


俺の前で。


止まった。


『選んで』


声がする。


「……何を?」


『私を』


「……」


『それとも』


『選ばない?』


俺は。


考えた。


今までなら。


迷わず。


選んでいた。


誰かが。


そこにいるなら。


救おうとした。


一緒にいることを。


求めた。


でも。


今は。


違う。


俺は。


少年を見る。


「お前は」


「どうしたい?」


少年は。


驚いた顔をする。


「僕?」


「ああ」


「……」


少年は。


初めて。


少し。


困った顔をした。


「分からない」


「なら」


俺は。


笑う。


「分からないままでいい」


「……」


「今すぐ」


「選ばなくてもいい」


少年は。


目を見開く。


「それでも」


「ここにいていい?」


「ああ」


俺は。


答えた。


「もちろん」


白い光が。


ゆっくり。


少年の胸へ。


戻っていく。


そして。


少年自身が。


初めて。


光った。


「……」


ハジメが。


泣いていた。


「どうした?」


「分からない」


ハジメは。


涙を拭う。


「なんか」


「嬉しい」


「……」


少年が。


ハジメを見る。


「ハジメ」


「うん」


「僕」


「君のこと」


「好き」


「……!」


ハジメが。


固まった。


そして。


顔を赤くする。


「いきなり」


「何言ってるの……」


「だって」


「最初に」


「僕を呼んでくれたから」


「……」


ハジメは。


小さく笑った。


「そっか」


「うん」


「じゃあ」


「これからも」


「呼ぶよ」


「……うん」


二人が。


笑った。


その光景を。


俺は。


黙って見ていた。


不思議だった。


世界を救う。


そんな大きなことじゃない。


ただ。


誰かが。


誰かを。


呼ぶ。


それだけ。


それだけなのに。


世界が。


少しだけ。


優しくなった気がした。


――。


その時。


遠くで。


音がした。


――カン。


世界樹の時計。


だ。


「……?」


――カン。


もう一度。


「時間が」


少女が。


時計を見る。


「動いてる」


――カン。


針が。


一つ。


進む。


だが。


数字は。


表示されない。


代わりに。


時計の文字盤に。


新しい文字が。


浮かんだ。


「第一日目」


「……」


ユウトが。


呟く。


「一日目?」


「ああ」


「でも」


「俺たち」


「もう」


「何度も」


「一日目を」


「見てるよな」


「……」


俺は。


頷いた。


「でも」


今回は。


違う。


文字の下に。


小さな文章が。


表示されていた。


「これは、最初の一日ではない。」


そして。


その下。


「選び直された、一日目。」


「……」


世界が。


震えた。


空が。


青くなる。


地面が。


生まれる。


遠くに。


山が。


現れる。


川が。


流れ始める。


木々が。


芽吹く。


世界が。


また。


始まっていく。


でも。


以前の世界とは。


違う。


中心がない。


一人だけの。


王もいない。


誰か一人の。


願いだけで。


動く世界でもない。


それぞれの場所から。


それぞれの光が。


生まれていく。


「……」


俺は。


その光景を。


見つめた。


そして。


気づいた。


最初の日は。


一度しかないと思っていた。


でも。


違った。


始まりは。


一度きりじゃない。


「……」


俺は。


笑った。


「始め直せるんだ」


アリアが。


隣に来る。


「うん」


「何度でも?」


「たぶん」


「……」


俺は。


空を見る。


「それなら」


「十三日目も」


「変えられるかもしれない」


アリアは。


首を振った。


「違うよ」


「え?」


「十三日目を」


「変えるんじゃない」


「今日を」


「選び直すの」


「……」


俺は。


笑った。


「そうだったな」


――。


新しい一日。


選び直された一日。


俺たちは。


歩き始めた。


すると。


世界の端に。


小さな家が。


見えた。


「家?」


セリアが。


首を傾げる。


「誰か」


「住んでるのかな?」


みんなで。


近づく。


扉を開ける。


中には。


何もない。


ただ。


壁に。


一枚の紙が。


貼ってある。


そこには。


こう書かれていた。


「ここは、帰る場所を選ぶための家。」


ハルが。


静かに。


前へ出た。


「……」


「ハル?」


ハルは。


家の中を。


見回す。


そして。


小さく。


笑った。


「僕」


「ここ」


「好きかも」


「……」


「帰ってきたい」


俺は。


頷いた。


「じゃあ」


「ここを」


「お前の場所にするか?」


ハルは。


少し。


考える。


「うん」


「自分で?」


「うん」


「……」


その瞬間。


家の窓から。


光が差し込んだ。


壁に。


新しい文字。


「第二十八原則――帰る場所を自分で選ぶ自由。」


ハルは。


嬉しそうに。


笑った。


「ありがとう」


「俺は」


「何もしてないぞ」


「ううん」


「聞いてくれた」


「それだけで」


「十分」


――。


その日の夜。


俺たちは。


新しい家の前で。


食事をした。


パン。


スープ。


焼いた魚。


ノアは。


魚を見て。


目を輝かせる。


「今日」


「魚!」


「川にいたやつ?」


「違う」


「……」


「たぶん」


みんなが。


笑う。


俺も。


笑った。


こんな時間が。


ずっと。


続けばいい。


そう思った。


でも。


胸の奥で。


小さな声がした。


――。


「ずっと」という言葉に。


未来を。


縛らせてはいけない。


だから。


俺は。


言い直した。


「明日も」


「こうして」


「一緒に食べられたらいいな」


アリアが。


笑う。


「うん」


ユウトも。


頷く。


「明日もな」


ノアが。


叫ぶ。


「明日も魚!」


「お前はそればっかりだな」


「だって美味しい!」


笑い声が。


夜空に。


広がった。


――。


その時。


俺は。


ふと。


空を見上げた。


星が。


一つ。


流れた。


そして。


その星が。


落ちた先。


そこに。


黒い扉が。


現れた。


「……」


誰も。


気づいていない。


俺だけが。


見ている。


扉には。


文字があった。


「第二日目」


その下に。


さらに。


一行。


「選び直す前に、失ったものを一つ思い出せ。」


「……」


俺は。


立ち上がった。


そして。


扉へ。


歩き出す。


すると。


背後から。


声がした。


「レオン」


振り返る。


アリアだった。


「どこへ行くの?」


俺は。


扉を見る。


「……」


「たぶん」


「過去を」


「見に行く」


アリアは。


少しだけ。


不安そうな顔をした。


「一人で?」


俺は。


首を振る。


「いや」


「今度は」


「一緒に行こう」


アリアが。


微笑む。


「うん」


俺たちは。


二人で。


黒い扉の前に立った。


俺が。


取っ手に。


手をかける。


すると。


扉の向こうから。


聞こえた。


――。


「レオン」


「……」


「忘れたんじゃない」


「……?」


「君は」


「捨てたんだ」


「何を?」


声が。


答える。


「最初の約束を。」

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