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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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116/132

第116話 最初の日を選び直す

「最初の日を、もう一度選び直せ。」


その文字を。


俺は。


ただ見つめていた。


「……」


誰も。


口を開かなかった。


空は真っ黒。


星すらない。


世界樹だけが。


白い光を放っている。


「第零日目……」


ミナが。


小さく呟いた。


「でも」


「第零日目は」


「最初の日より前じゃないの?」


「ああ」


俺は。


答える。


「そうだった」


最初の日。


零日目。


その前に。


さらに。


時間の外側があった。


そして。


もっと前。


自分というものすらなかった場所。


俺たちは。


何度も。


世界の始まりを。


掘り返してきた。


なのに。


まだ。


始まりがある。


「……」


ソウマが。


空を見上げる。


「選び直すって」


「どういうこと?」


「分からない」


俺は。


正直に答えた。


「でも」


「一つだけ」


「分かることがある」


「何?」


「最初の日は」


「もう終わった日じゃない」


「……」


「俺たちは」


「今まで」


「最初の日に」


「何が起きたかを」


「ずっと」


「過去として見てた」


俺は。


世界樹を見る。


「でも」


「もし」


「最初の日そのものを」


「今の俺たちが」


「もう一度」


「選べるなら」


アリアが。


静かに言った。


「過去も」


「変えられる?」


「……」


俺は。


首を振った。


「たぶん」


「違う」


「じゃあ?」


「過去を」


「変えるんじゃない」


「……」


「過去に」


「どんな意味を与えるかを」


「選び直す」


その瞬間。


世界樹の葉が。


一枚。


落ちた。


地面に触れる前に。


光になる。


そして。


そこに。


一つの映像が浮かんだ。


――最初の日。


まだ。


何もなかった。


空も。


地面も。


時間も。


世界樹も。


ただ。


六つの光だけが。


浮かんでいる。


俺。


ルナ。


イオ。


そして。


まだ名のなかった存在。


五人目。


ハジメ。


そして。


もう一つ。


小さな白い光。


「……」


ハジメが。


息を呑んだ。


「これ」


「僕たちが」


「最初の日に」


「見た光」


「ああ」


俺は。


頷いた。


だが。


映像は。


これまでと違った。


今まで見てきた記憶では。


俺たちは。


世界を作ろうとしていた。


でも。


今回は。


その前。


さらに。


前だった。


誰も。


何も。


選んでいない。


それなのに。


一つの声が。


響いた。


『どうしますか?』


「……」


誰の声でもない。


男でも。


女でもない。


子供でも。


老人でもない。


ただ。


問いだけ。


『世界を作りますか?』


俺たちは。


答えない。


『名前を決めますか?』


答えない。


『中心を決めますか?』


答えない。


『未来を決めますか?』


答えない。


静寂。


そして。


最後に。


『では――』


『何を選びますか?』


その瞬間。


小さな光が。


一つ。


前へ出た。


「……!」


俺は。


目を見開く。


それは。


俺でも。


ルナでもない。


ハジメでもない。


ソウマでもない。


名前のない。


小さな白い光。


その光が。


震えながら。


言った。


『選ばない』


「……」


『私は』


『何も選ばない』


『でも』


『ここにいたい』


世界が。


静かに。


震えた。


『選ばないことを』


『選択として認めますか?』


声が。


問いかける。


小さな光は。


答える。


『……分からない』


『でも』


『ここにいたい』


「……」


俺の胸が。


熱くなる。


それは。


今まで。


何度も。


俺たちが。


言ってきた言葉だった。


「ここにいていい」


「自分で決めていい」


「選ばなくてもいい」


それは。


最初の日から。


存在していた。


「……」


ソウマが。


呟いた。


「じゃあ」


「最初から」


「この考えは」


「あったんだ」


「ああ」


俺は。


答える。


「最初から」


「誰かが」


「奪ったんじゃない」


「……」


「俺たちが」


「忘れてただけだ」


その時。


映像の中で。


俺が。


動いた。


まだ。


レオンではない俺。


名前を持たない俺。


その俺が。


小さな光に。


手を伸ばす。


そして。


言った。


『一緒にいよう』


小さな光が。


近づく。


『……いいの?』


『うん』


『選ばなくても?』


『うん』


『中心にならなくても?』


『うん』


『名前がなくても?』


俺は。


笑っていた。


『うん』


『それでも』


『一緒にいよう』


――。


俺は。


息を止めた。


「……」


アリアが。


俺を見る。


「レオン?」


俺は。


答えられなかった。


映像の中の俺が。


続ける。


『みんなで』


『一緒にいられたら』


『いいな』


『選ばなければいい』


その言葉。


聞き覚えがある。


ずっと。


前に。


ルナと話した。


記憶。


だけど。


違う。


もっと前。


さらに。


前。


「……」


俺は。


ようやく。


気づいた。


「これ」


「最初じゃない」


「……?」


ユウトが。


俺を見る。


「何が?」


「この記憶」


「最初の日じゃない」


「じゃあ」


「もっと前だ」


「……」


世界樹の時計が。


逆回転する。


十二。


十一。


十。


九。


八。


数字が。


どんどん。


減っていく。


七。


六。


五。


四。


三。


二。


一。


そして。


零。


――カチ。


時計が。


止まった。


世界樹の根元に。


一本の線が。


走る。


地面が。


左右に。


割れた。


「……!」


中から。


黒い階段が。


現れた。


下へ。


下へ。


どこまでも。


続いている。


「地下?」


ユウトが。


覗き込む。


「違う」


時間の外側の少女が。


首を振る。


「下じゃない」


「じゃあ?」


「始まりの方向」


「……」


意味が。


分からない。


でも。


その言葉だけで。


妙に。


納得した。


階段を。


下りる。


それなのに。


どんどん。


空へ。


近づいているような。


不思議な感覚。


やがて。


階段の先に。


一枚の扉が。


見えた。


白い扉。


黒い取っ手。


そして。


扉の上に。


文字。


「名前を持つ前」


「……」


俺は。


手を伸ばす。


すると。


扉の向こうから。


声がした。


『レオン』


「……!」


「また」


「俺を」


「レオンと呼ぶのか?」


『そう』


「どうして?」


『それが』


『君が選んだ名前だから』


「……」


『だが』


『名前を選ぶ前の君も』


『ここにいる』


俺は。


扉に。


手を置く。


「じゃあ」


「この先にいるのは」


『君ではない』


「……」


『君になる前の』


『可能性』


「ハジメ?」


ハジメが。


首を振った。


「違う」


「……」


「僕は」


「生まれなかったレオン」


「でも」


「ここにいるのは」


「もっと前」


「……」


ハジメが。


扉を見る。


「僕より」


「前の」


「君」


「……」


「自分になる前の」


「レオン」


俺は。


しばらく。


動けなかった。


――自分になる前。


そんなものが。


存在するのか。


でも。


考えてみれば。


当たり前なのかもしれない。


俺だって。


最初から。


俺だったわけじゃない。


生まれた瞬間。


名前を呼ばれ。


記憶を積み重ね。


誰かと出会い。


誰かを失い。


何度も。


選び直して。


ようやく。


「俺」になった。


なら。


その始まりが。


あっても。


おかしくない。


「……」


俺は。


扉を開けた。


中には。


何もなかった。


ただ。


一人。


小さな少年が。


座っていた。


黒い髪。


赤い瞳。


でも。


俺とは。


少し違う。


もっと。


幼い。


もっと。


何も知らない。


少年。


その少年が。


俺を見る。


「……」


そして。


首を傾げる。


「誰?」


俺は。


答えられなかった。


「お前こそ」


「誰なんだ?」


少年は。


少し考えて。


言った。


「分からない」


「名前は?」


「ない」


「じゃあ」


「何をしてる?」


少年は。


自分の胸を。


指差した。


「ここに」


「誰かが」


「来るのを」


「待ってる」


「……誰を?」


少年は。


俺を見た。


「君」


「……」


俺の背筋が。


凍った。


「俺?」


「うん」


「どうして?」


「分からない」


少年は。


笑った。


「でも」


「ずっと」


「待ってた」


その瞬間。


背後から。


ハジメの声が。


聞こえた。


「……レオン」


「ん?」


「その子」


「僕」


「知ってる」


「……!」


ハジメは。


少年を見つめていた。


そして。


震える声で。


言う。


「この子は」


「僕が」


「生まれる前に」


「見た」


「最初の光」


「……」


少年は。


ハジメを見る。


「ハジメ」


「……!」


「名前」


「自分で」


「選んだんだね」


ハジメの目が。


見開かれる。


「どうして」


「僕の名前を」


知ってる?


少年は。


笑う。


「だって」


「君が」


「最初に」


「僕を」


「呼んだから」


「……」


「え?」


俺たちは。


言葉を失った。


ハジメが。


少年に。


近づく。


「僕が?」


「うん」


「いつ?」


「ずっと前」


「……」


「世界が」


「始まる前」


ハジメが。


震える。


俺は。


少年を見る。


「お前は」


「一体」


「何なんだ?」


少年は。


しばらく。


考えた。


そして。


小さな声で。


答えた。


「僕は」


「まだ」


「名前を」


「もらってない」


「……」


「でも」


「一つだけ」


「覚えてる」


「何を?」


少年は。


俺を見る。


そして。


指を。


空へ向けた。


そこには。


何もない。


それでも。


少年は。


笑っていた。


「君が」


「言った」


「最初の言葉」


「……」


俺は。


息を呑む。


少年の口から。


出た言葉は。


――。


『全部、一緒にいられたらいいな』


俺が。


最初の日より。


さらに前に。


言った言葉。


俺は。


その場で。


動けなくなった。


「……」


少年が。


手を伸ばす。


「だから」


「今度は」


「僕が」


「君に」


「聞きたい」


「……何を?」


少年は。


笑った。


「レオン」


「君は」


「最初に」


「何を選ぶ?」

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