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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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115/132

第115話 十三日目まで来ないで

『十三日目まで』


『来ないで』


未来のミナの声は。


聞こえなかった。


でも。


確かに。


そう言っていた。


「……」


俺は。


しばらく。


空を見上げていた。


何もない。


いつもの空。


青い空。


白い雲。


風。


鳥の声。


どこにでもある。


普通の空。


なのに。


さっきまで。


そこに。


千年後のミナがいた。


「レオン」


アリアが。


隣に立つ。


「……うん」


「どうする?」


「分からない」


「……」


俺は。


正直に答えた。


「未来のミナは」


「来るなって言った」


「でも」


「何が起きるのか」


「分からない」


「……」


「それに」


俺は。


世界樹を見る。


「十三日目は」


「千年後なんだろ?」


「うん」


「だったら」


「今から千年」


「時間がある」


ユウトが。


苦笑する。


「兄貴」


「気が遠くなるな」


「ああ」


「千年だぞ」


「分かってる」


「普通に考えたら」


「俺たち生きてないけどな」


「……」


俺たちは。


顔を見合わせる。


そして。


同時に。


笑った。


そうだ。


俺たちは。


普通じゃない。


時間そのものが。


俺たちの前では。


もう。


普通じゃない。


――。


翌朝。


世界樹の時計は。


二日目を。


示していた。


十三日目には。


なっていない。


「……」


俺は。


時計を確認して。


少し。


安心した。


でも。


その安心は。


長くは続かなかった。


「レオン」


ミナが。


呼ぶ。


「ん?」


「これ」


ミナが。


一枚の紙を。


持っている。


「どこにあった?」


「私の部屋」


「……」


紙には。


何も書かれていない。


真っ白。


ただ。


一番下に。


小さな文字が。


一つ。


「一日ずつ、選べ。」


「……」


俺は。


その言葉を。


見つめる。


「十三日目を」


「今から」


「心配する必要はない」


時間の外側の少女が。


言った。


「……」


「未来は」


「一日ずつ」


「来る」


「だから」


「十三日目のために」


「今日を捨てる必要はない」


「……」


俺は。


頷いた。


「そうだな」


――。


その日は。


何も起きなかった。


昼。


ノアが。


川に落ちた。


「お兄ちゃーん!」


「だから」


「走るなって言っただろ!」


「滑った!」


「分かったから」


俺は。


川から。


ノアを。


引っ張り上げる。


「びしょびしょ」


「えへへ」


「笑ってる場合か」


「だって」


「お兄ちゃんが」


「助けてくれたから」


「……」


「ありがとう!」


「……まったく」


俺は。


頭を撫でる。


その横で。


ハジメが。


笑っている。


「ノア」


「何?」


「さっき」


「魚を追いかけてたよね」


「……」


ノアが。


目を逸らす。


「追いかけてない」


「追いかけてた」


「……」


「食べようとしてた?」


「……ちょっと」


「やっぱり」


みんなが。


笑った。


――。


夕方。


世界樹の下で。


アリアと。


二人で。


座った。


「……」


「静かだな」


俺が。


言う。


「うん」


「こういう時間」


「久しぶりな気がする」


「そうだね」


アリアは。


空を見る。


「未来のこと」


「怖い?」


「……」


俺は。


少し。


考えた。


「怖い」


「うん」


「でも」


「前ほどじゃない」


「どうして?」


「昔の俺なら」


「未来を変えようとしてた」


「……」


「でも」


「今は」


「未来を」


「変えるんじゃなくて」


「今日を」


「選びたい」


アリアは。


微笑んだ。


「うん」


「それが」


「レオンだね」


「……」


「変わったね」


「俺が?」


「うん」


「昔のあなたなら」


「十三日目を」


「今すぐ消そうとしてたと思う」


「……」


「扉ごと」


「壊して」


「未来そのものを」


「無かったことにして」


「……」


俺は。


苦笑する。


「否定できない」


「でも」


アリアは。


俺の手を握った。


「今は」


「違う」


「ああ」


「怖い未来があっても」


「その未来に」


「今を支配させない」


「……」


「それでいいと思う」


俺は。


頷いた。


――。


その夜。


世界樹の根元で。


小さな異変が。


起きた。


ハジメが。


突然。


立ち止まる。


「……?」


「どうした?」


俺が。


聞く。


「何か」


「聞こえる」


「何が?」


ハジメは。


世界樹に。


耳を当てる。


「……」


「時計の音」


「時計?」


「うん」


「でも」


「今の時計じゃない」


「……」


「もっと」


「古い」


俺も。


耳を澄ませる。


――カチ。


――カチ。


――カチ。


確かに。


聞こえる。


でも。


世界樹の時計は。


止まっている。


「……」


時間の外側の少女が。


青ざめる。


「その音」


「知ってる」


「何?」


「一日目より前の時計」


「……!」


俺は。


世界樹を見る。


根元。


そこに。


小さな穴が。


開いている。


「……」


中から。


光が。


漏れている。


ハジメが。


言う。


「これ」


「僕のいた場所」


「……」


「開けてみる?」


俺は。


少し。


迷った。


でも。


頷いた。


「一緒に」


「うん」


二人で。


穴に。


手を入れる。


――。


世界が。


反転した。


「――っ!」


目を開ける。


そこは。


白い空間。


でも。


零日目とは。


違う。


何もないわけじゃない。


床がある。


空がある。


そして。


中央に。


大きな。


円形の台座。


その上に。


一つの。


椅子。


誰も。


座っていない。


「……」


ハジメが。


立ち尽くす。


「ここ」


「知ってる」


「……」


「僕が」


「最初に」


「目を開けた場所」


「お前が?」


「うん」


「でも」


ハジメは。


首を振る。


「違う」


「……?」


「僕が」


「生まれた場所じゃない」


「僕が」


「選ばれるはずだった場所」


「……」


俺は。


台座を見る。


そこには。


一つの文字。


「中心」


「……」


胸が。


ざわつく。


「ここで」


「最初の世界の」


「中心を」


「決めたのか?」


ハジメは。


頷く。


「たぶん」


「でも」


「僕は」


「選ばれなかった」


「……」


「代わりに」


「君が」


俺は。


台座に。


近づく。


その瞬間。


椅子が。


光る。


『座れ』


声。


低い。


冷たい。


俺は。


止まる。


『お前は』


『一度』


『ここに座った』


「……」


『そして』


『世界を』


『一つにした』


「違う」


俺は。


答える。


『何が違う?』


「俺は」


「世界を」


「一つにしたかったわけじゃない」


「……」


『だが』


『結果は』


『一つだった』


「……」


その通りだった。


最初の世界。


一つ。


中心。


俺。


そして。


選ばれなかった存在たち。


「……」


俺は。


椅子を見る。


『もう一度』


『座れ』


「嫌だ」


即答した。


ハジメが。


俺を見る。


『なぜ?』


「俺は」


「もう」


「一人で」


「世界の中心には」


「ならない」


『ならば』


『誰が座る?』


「……」


俺は。


答えない。


『中心は』


『必要だ』


「誰が決めた?」


『世界だ』


「なら」


「世界に」


「決めさせない」


『……』


沈黙。


そして。


台座に。


ひびが入った。


「……!」


パキッ。


一つ。


また一つ。


中心という文字が。


崩れていく。


『中心を』


『失えば』


『世界は』


『どうなる?』


俺は。


答えた。


「みんなが」


「それぞれ」


「自分の場所に」


「いればいい」


『……』


「中心なんて」


「いらない」


その瞬間。


台座が。


完全に。


崩れた。


そして。


その下から。


無数の。


光が。


溢れ出した。


赤。


青。


白。


黒。


黄色。


無数。


それぞれが。


違う方向へ。


飛んでいく。


ハジメが。


呟く。


「……」


「何だ?」


「これ」


「全部」


「最初の日に」


「選ばれなかった」


「可能性」


「……」


「中心が」


「なくなったから」


「外に」


「出られたんだ」


俺は。


光を見る。


一つ一つ。


小さな。


命のようだった。


「……」


これまで。


消えたと思っていた。


数えきれない。


可能性。


それらは。


消えたんじゃない。


中心の外側に。


閉じ込められていた。


「……」


俺は。


思った。


世界を。


一つにする。


そのためには。


中心が。


必要だった。


でも。


世界を。


一つにしないなら。


中心は。


いらない。


「……」


その時。


白い光が。


一つ。


俺の前に。


来た。


『レオン』


「……」


『私は』


『あなたの』


『中心には』


『ならない』


「……」


『でも』


『あなたの』


『隣には』


『いられる』


俺は。


笑った。


「それでいい」


白い光が。


消える。


代わりに。


世界樹へ。


新しい文字が。


刻まれた。


「第二十七原則――中心を必要としない自由。」


「……」


ハジメが。


その文字を。


見上げる。


「レオン」


「ん?」


「これで」


「君は」


「もう」


「世界の中心じゃない」


「ああ」


「じゃあ」


「僕と」


「同じだね」


「……」


俺は。


笑う。


「そうだな」


「みんな」


「同じだ」


――。


白い空間が。


崩れ始める。


「戻るぞ!」


俺たちは。


走る。


光の中を。


駆け抜ける。


そして。


世界樹の下へ。


戻った。


「……!」


みんなが。


駆け寄ってくる。


「大丈夫!?」


アリア。


「何があった?」


ユウト。


「お腹空いた?」


ノア。


「そこ?」


俺は。


笑った。


「大丈夫」


「……」


俺は。


世界樹を見る。


その枝には。


新しい葉が。


増えていた。


第二十七原則。


中心を必要としない自由。


でも。


その葉のすぐ隣に。


もう一枚。


まだ。


文字のない葉が。


生まれている。


「……」


ハジメが。


それを見る。


「次は」


「何だろうね」


「さあ」


俺は。


答えた。


その時。


世界樹の時計が。


突然。


動いた。


――カチ。


二日目。


――カチ。


三日目。


――カチ。


四日目。


――カチ。


五日目。


「……!」


針が。


止まらない。


六日。


七日。


八日。


九日。


十日。


十一日。


十二日。


そして――


十三日。


「……!」


全員が。


息を呑む。


だが。


十三日目の文字が。


表示された瞬間。


世界樹の葉が。


一斉に。


白くなった。


そして。


空に。


一つの文字が。


浮かぶ。


「十三日目――開始条件、未達成。」


「……?」


十三日目なのに。


始まっていない?


その瞬間。


未来のミナの声が。


空から。


聞こえた。


『まだ……』


『まだ来ちゃだめ……』


『だって――』


声が。


震えている。


『十三日目は』


『最後の日じゃない』


「……!」


『本当の』


『最後の日を』


『始める日だから――』


空が。


真っ黒に。


染まる。


そして。


その黒い空の中央に。


巨大な文字が。


浮かんだ。


「第零日目」


俺は。


息を呑んだ。


十三日目の先に。


あるはずのない。


零日目。


そして。


その下に。


もう一行。


「最初の日を、もう一度選び直せ。」

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