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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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114/132

第114話 俺の名前

「俺は――」


言葉が。


出てこなかった。


世界樹の時計には。


名前選択待ち


そう書かれている。


ソウマは。


何も言わず。


俺を見ている。


「……」


俺は。


自分の名前を。


もう一度。


口にした。


「レオン」


聞き慣れた名前。


ずっと。


呼ばれてきた。


アリアも。


ユウトも。


セリアも。


みんな。


俺を。


レオンと呼ぶ。


だから。


当然だと思っていた。


これが。


俺の名前だと。


でも。


今になって。


疑問が生まれた。


――誰が。


この名前を。


俺に与えた?


「……」


思い出そうとする。


幼い頃。


母さんが。


俺を呼ぶ。


「レオン」


父さんも。


呼ぶ。


「レオン」


ユウトも。


「兄貴」


アリアも。


「レオン」


どの記憶にも。


俺は。


レオンだった。


でも。


その記憶より。


さらに前。


そこには。


何もない。


零日目。


最初の日。


その前。


俺は。


まだ。


名前を持っていなかった。


「……」


なら。


俺が。


レオンになった瞬間は。


いつだ?


――。


「レオン」


声がした。


アリアだった。


「……ん?」


「大丈夫?」


「ああ」


「ずっと」


「自分の名前を」


「見てるから」


「……」


俺は。


少しだけ。


笑った。


「自分の名前って」


「変なものだな」


「どうして?」


「毎日」


「何度も呼ばれてるのに」


「一度も」


「自分で」


「選んだ覚えがない」


アリアは。


黙って。


俺を見る。


そして。


静かに。


言った。


「じゃあ」


「今」


「選べば?」


「……」


「今までの名前を」


「捨てる必要はないよ」


「……」


「あなたが」


「レオンという名前を」


「好きなら」


「自分で」


「もう一度」


「選べばいい」


俺は。


目を見開いた。


「……」


そうか。


名前を。


変える必要はない。


否定する必要もない。


今まで。


俺を呼んでくれた。


みんなの声。


その全部を。


捨てなくていい。


ただ。


一度。


自分の意思で。


「これが俺だ」


そう決めればいい。


「……」


俺は。


立ち上がった。


世界樹の前へ。


歩く。


葉が。


静かに。


揺れている。


「俺は」


世界樹に。


向かって。


言った。


「レオン」


「この名前を」


「選ぶ」


風が。


止まった。


「俺は」


「この名前を」


「捨てない」


「……」


「母さんが」


「呼んでくれた名前だから」


「ユウトが」


「呼んでくれた名前だから」


「アリアが」


「呼んでくれた名前だから」


「みんなが」


「俺として」


「呼んでくれた名前だから」


俺は。


胸に。


手を当てる。


「でも」


「これからは」


「俺自身が」


「この名前を」


「選ぶ」


――。


世界樹が。


大きく。


揺れた。


葉が。


一斉に。


舞い上がる。


そして。


一本の枝に。


文字が。


刻まれた。


「レオン――選択済み」


「……」


ソウマが。


笑う。


「おめでとう」


俺も。


笑った。


「ありがとう」


その時。


世界樹の根元から。


淡い光が。


生まれた。


それは。


俺の胸へ。


ゆっくり。


入ってくる。


「……!」


胸の奥が。


温かくなる。


そして。


声が。


聞こえた。


『ようやく』


『君自身が』


『君を』


『選んだね』


「……誰だ?」


『私は』


『名前ではない』


『役割でもない』


『ただ』


『最初から』


『君の隣にいた』


「……」


俺は。


息を呑む。


隣。


その言葉。


以前にも。


聞いた。


「お前は」


「俺が」


「レオンになる前から」


「いたのか?」


『そう』


「何のために?」


『何のためでもない』


「……」


『ただ』


『一緒にいた』


俺は。


笑った。


「それなら」


「十分だ」


――。


翌朝。


俺たちは。


いつものように。


朝食を囲んだ。


「お兄ちゃん!」


ノアが。


俺を見る。


「何?」


「昨日」


「名前決めた?」


「……」


俺は。


頷く。


「うん」


「何て?」


「レオン」


ノアは。


不思議そうな顔をした。


「変わってないよ?」


「そうだな」


「じゃあ」


「どうして」


「決めたの?」


俺は。


少し。


考える。


「今までは」


「みんなが」


「俺を」


「そう呼んでくれたから」


「でも」


「昨日」


「俺自身が」


「そう名乗るって」


「決めたんだ」


ノアは。


しばらく。


考えた。


そして。


笑う。


「じゃあ」


「これからも」


「レオンお兄ちゃん!」


「……ああ」


「よろしくね!」


「よろしく」


――。


その日の昼。


世界樹に。


異変が起きた。


時計の針が。


二日目から。


動かない。


「……」


時間の外側の少女が。


時計を見る。


「止まった」


「また?」


俺が。


聞く。


「うん」


「でも」


「今回は」


「前と違う」


「どう違う?」


彼女は。


時計の裏側を。


指差した。


そこに。


小さな文字が。


浮かんでいる。


「時間は、名前を持つ者だけのものではない。」


「……」


ハジメが。


その文字を。


見る。


「名前がなくても」


「時間は」


「進む?」


「たぶん」


少女が。


答える。


「じゃあ」


ハジメは。


笑う。


「よかった」


「何が?」


「名前がない時間も」


「ちゃんと」


「存在するんだね」


俺は。


頷いた。


「ああ」


「だから」


「急がなくていい」


「……うん」


――。


その日の夕方。


ソウマが。


一人で。


世界樹の根元にいた。


「どうした?」


俺が。


声をかける。


ソウマは。


空を見上げたまま。


答える。


「僕」


「名前を選んだけど」


「まだ」


「自分が」


「何者なのか」


「分からない」


「……」


「名前を決めれば」


「全部」


「分かると思ってた」


「でも」


「全然」


「変わらない」


俺は。


笑った。


「当たり前だ」


「……」


「名前は」


「答えじゃない」


「じゃあ」


「何?」


「入口だ」


「……」


「名前を決めたから」


「これから」


「自分が何者なのか」


「探せる」


ソウマは。


静かに。


頷いた。


「……そっか」


「うん」


「じゃあ」


「僕は」


「これから」


「探してみる」


――。


その時。


世界樹の上から。


何かが。


落ちてきた。


白い。


小さな紙。


ソウマが。


拾う。


「……?」


そこには。


一行だけ。


書かれていた。


「名前を選んだ者へ――次は、居場所を選べ。」


「……」


ソウマが。


俺を見る。


「居場所?」


「ああ」


その瞬間。


世界樹の周囲に。


いくつもの。


光の扉が。


現れた。


一つ。


二つ。


三つ。


四つ。


五つ。


十。


二十。


数えきれないほど。


それぞれの扉には。


違う景色が。


映っている。


雪の世界。


海の世界。


空中都市。


静かな森。


何もない白い空間。


そして。


その中の一つ。


俺たちのいる世界。


「……」


ソウマは。


扉を。


見つめる。


「これ」


「全部」


「僕が」


「選べるの?」


「ああ」


俺は。


答えた。


「どこへ行くかも」


「ここに残るかも」


「お前が決めていい」


ソウマは。


一歩。


扉へ近づく。


そして。


止まった。


「……」


「どうした?」


「僕」


「ここがいい」


「……」


「この世界」


「みんながいる」


「ご飯も」


「美味しい」


「ノアが」


「うるさい」


「おい」


ノアが。


遠くから。


叫ぶ。


「聞こえてるよ!」


ソウマが。


笑う。


「だから」


「ここがいい」


俺は。


頷いた。


「なら」


「ここがお前の居場所だ」


ソウマが。


一つの扉に。


触れる。


すると。


扉が。


光になって。


消えた。


世界樹に。


新しい文字。


「第二十六原則――居場所を自分で選ぶ自由。」


「……」


ソウマは。


嬉しそうに。


笑った。


「僕」


「ここにいていいんだ」


「ああ」


「自分で」


「決めたから」


「うん」


――。


その夜。


俺たちが。


眠ろうとした時。


世界樹の時計が。


突然。


鳴った。


――カン。


一回。


――カン。


二回。


――カン。


三回。


四回。


五回。


六回。


七回。


八回。


九回。


十回。


十一回。


十二回。


「……?」


夜なのに。


鐘が。


十二回。


鳴った。


そして。


十三回目。


――カン。


音が。


止まる。


「……」


世界樹の時計に。


数字が。


浮かぶ。


「十三日目」


「……十三?」


ユウトが。


呟く。


「まだ」


「二日目だろ?」


「ああ」


俺も。


時計を見る。


なのに。


時計は。


確かに。


十三日目を。


示している。


そして。


その下に。


小さな文字。


「十三日目は、千年後に存在する。」


「……!」


ミナが。


立ち上がる。


「千年後?」


すると。


空が。


一瞬。


白くなる。


その白い空の中に。


一人の少女が。


現れた。


長い髪。


見覚えのある顔。


千年後の。


ミナ。


「……」


ミナ本人が。


驚く。


「私……?」


未来のミナは。


こちらを見て。


笑った。


でも。


その顔は。


昨日とは。


違っていた。


泣いている。


「……」


そして。


未来のミナは。


口を動かした。


声は。


聞こえない。


けれど。


読めた。


『レオン』


『お願い』


『十三日目まで』


『来ないで』


「……!」


映像が。


消える。


そして。


最後に。


世界樹へ。


一行だけ。


刻まれた。


「十三日目――最後の日が始まる。」


俺は。


その文字を。


見つめた。


最後の日は。


まだ。


選ばれていない。


そう思っていた。


でも。


違う。


最後の日は。


「選ぶ日」ではなく。


――。


選ばなければならない日。


そんな未来が。


千年後に。


待っている。


そして。


その十三日目へ向かう時間が。


今。


静かに。


動き始めた。

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