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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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103/132

第103話 最初の選択を見る者

黒い星。


それは。


空に浮かんでいるように見えた。


けれど。


違う。


「……」


あれは。


星じゃない。


目だ。


巨大な。


黒い目。


俺を。


見ている。


「……」


その瞳の中に。


俺がいる。


まだ。


名前すら。


持っていない俺。


世界が。


始まる前。


零日目。


何もない。


白い空間。


そこに。


一人で。


立っている。


「……」


俺は。


目の前の光景を。


見つめた。


「これは……」


ソウが。


小さく呟く。


「兄ちゃんの」


「最初?」


「……分からない」


俺は。


首を振った。


「でも」


「俺だ」


間違いない。


あれは。


俺自身。


まだ。


何も知らない。


まだ。


誰とも。


出会っていない。


まだ。


ルナにも。


ユウトにも。


出会っていない。


そんな俺。


『……』


黒い目が。


ゆっくり。


瞬きをする。


すると。


映像が。


動き始めた。


――。


白い世界。


何もない。


音もない。


時間もない。


その中に。


俺が。


立っている。


「……」


今の俺とは。


全然違う。


不安そうに。


周囲を見回している。


「ここは……」


映像の中の俺が。


呟く。


もちろん。


返事はない。


しばらく。


歩く。


何もない。


どこまで行っても。


白。


「……」


そして。


映像の俺が。


立ち止まった。


「誰か」


「いないのか?」


声が。


白い世界に。


響く。


でも。


返事はない。


「……」


俺は。


その姿を。


見ていた。


胸が。


苦しくなる。


一人。


本当に。


一人だった。


その時。


映像の俺が。


目を閉じた。


そして。


小さく。


呟いた。


「……誰かと」


「一緒に」


「いたい」


――。


俺の胸が。


強く。


鳴った。


「……」


アリアが。


俺を見る。


「レオン……」


「……」


映像の中の俺は。


まだ。


一人だった。


でも。


その願いを。


口にした瞬間。


白い世界に。


小さな光が。


生まれた。


青い光。


『……』


そして。


その光から。


声。


『……私も』


「……!」


ルナ。


間違いない。


映像の中の俺が。


顔を上げる。


「誰?」


『分からない』


「名前は?」


『ない』


「……」


『あなたは?』


映像の俺は。


少し考える。


「……俺も」


「まだ」


「ない」


二人とも。


名前がない。


世界もない。


時間もない。


でも。


そこに。


二つの存在が。


あった。


『……』


『一緒に』


『いる?』


映像の俺が。


頷く。


「うん」


それだけ。


たった。


それだけの。


選択。


でも。


その瞬間。


世界が。


生まれた。


小さな。


地面。


空。


風。


そして。


時間。


――カチ。


初めて。


時計の音が。


した。


「……」


俺は。


息を呑む。


「これが」


「最初の選択……」


そう。


思った。


でも。


違った。


黒い目が。


もう一度。


瞬きをする。


映像が。


さらに。


進む。


二人の前に。


新しい光が。


生まれた。


黄色い光。


『……』


ルナが。


その光を見る。


『誰?』


光が。


揺れる。


そして。


小さな声。


『……分からない』


映像の俺が。


近づく。


「一緒にいる?」


光が。


輝く。


『……うん』


三つ。


存在が。


増えた。


そして。


さらに。


光が。


生まれる。


四つ。


五つ。


六つ。


次々と。


小さな光が。


生まれていく。


「……」


俺は。


言葉を失った。


「最初の世界には」


「もっと」


「いた?」


ソウが。


聞く。


「ああ」


「……」


「たくさん」


でも。


映像は。


そこで。


止まった。


五つ目。


その光だけが。


黒く。


染まっている。


「……」


俺は。


息を呑む。


五人目。


違う。


まだ。


五人目と呼ばれる前。


ただの。


一つの光。


その光が。


震えている。


『……』


そして。


映像の俺が。


その光へ。


手を伸ばした。


「お前も」


「一緒に」


「いよう」


黒い光が。


輝く。


『……』


でも。


その瞬間。


白い世界に。


別の声が。


響いた。


『待って』


「……?」


映像の俺が。


振り返る。


誰もいない。


『まだ』


『決めないで』


「誰?」


『……』


声の主は。


姿を見せない。


『まだ』


『全部を』


『選ぶ必要はない』


映像の俺は。


黙っている。


そして。


五つの光を見る。


「……」


俺は。


現在の映像を。


見ながら。


思った。


あの時。


俺は。


何かを。


決めた。


でも。


それは。


世界を作ることじゃなかった。


もっと。


単純なもの。


「一緒にいる」


それだけ。


だから。


最初の世界には。


複数の可能性が。


同時に。


存在していた。


ところが。


その後。


何かが。


起きた。


映像が。


急に。


乱れる。


――ザザッ。


――ザザッ。


黒いノイズ。


そして。


声。


『一つに』


『してください』


「……!」


映像の中の俺が。


顔を上げる。


『世界は』


『一つでなければ』


『成立しません』


「……」


『未来も』


『一つ』


『存在も』


『一つ』


『選択も』


『一つ』


「……」


俺は。


その言葉を。


聞いて。


背筋が。


冷たくなった。


それは。


今まで。


何度も。


聞いた思想。


一つを。


選ぶ。


一つを。


残す。


一つを。


正解にする。


そして。


それ以外を。


捨てる。


「……」


映像の俺が。


聞く。


「どうして?」


『……』


「どうして」


「一つじゃなきゃ」


「いけない?」


沈黙。


そして。


声が。


答える。


『選ばなければ』


『世界は』


『前へ進めない』


「……」


映像の俺が。


五つの光を見る。


『……』


五人目の光が。


震えている。


『僕も』


『選んでいい?』


「……」


その言葉に。


映像の俺が。


手を伸ばす。


「もちろん」


『……』


でも。


その瞬間。


世界が。


大きく。


揺れた。


――ドンッ!


黒い線が。


空間を。


切り裂く。


五人目の光が。


引っ張られる。


『……!』


「待て!」


映像の俺が。


手を伸ばす。


でも。


届かない。


五人目が。


白い世界の外へ。


押し出される。


『嫌だ!』


初めて。


声が。


大きく響いた。


『僕も』


『選びたい!』


「……!」


俺は。


思わず。


前へ出た。


「やめろ!」


でも。


映像は。


止まらない。


五人目が。


外へ。


落ちていく。


そして。


その瞬間。


映像の俺が。


何かを。


叫んだ。


――。


「……」


でも。


音が。


消えている。


俺は。


眉を寄せる。


「何を」


「言った?」


黒い目が。


俺を見る。


そして。


映像を。


巻き戻した。


一度。


二度。


三度。


何度も。


同じ場所へ。


戻る。


そして。


音が。


戻った。


『待って!』


映像の俺が。


叫んでいる。


『俺が』


『選ぶ!』


「……!」


その瞬間。


俺は。


凍りついた。


映像の俺は。


五人目を。


助けるために。


叫んだ。


『俺が』


『世界の中心になる!』


「……」


アリアが。


息を呑む。


ユウトが。


俺を見る。


ソウも。


黙っている。


映像の俺は。


続けていた。


『俺が全部を決める!』


『だから』


『みんなを残して!』


「……」


その言葉。


それが。


始まりだった。


世界を。


一つにしたのは。


誰か。


外側の存在ではない。


最初の俺自身が。


「みんなを残すため」に。


世界の中心になることを。


選んだ。


「……」


俺は。


言葉が。


出なかった。


世界を。


一つにした。


理由。


それは。


支配でも。


傲慢でも。


誰かを。


捨てたかったからでもない。


逆だった。


「全部を」


「救いたかった」


そのために。


俺は。


自分を。


中心にした。


そして。


「一つの世界」を。


選んだ。


結果。


世界は。


一つになった。


でも。


中心になれなかった存在は。


外へ。


押し出された。


五人目も。


その一人だった。


「……」


ソウが。


静かに。


言う。


「兄ちゃん」


「ん?」


「じゃあ」


「五人目を」


「外へ出したのは」


「兄ちゃん?」


俺は。


答えられない。


「……」


映像の俺が。


泣いている。


五人目へ。


手を伸ばしながら。


「ごめん」


そう。


言っている。


『ごめん』


『でも』


『こうするしか』


『みんなを』


『残す方法が』


『なかった』


「……」


俺は。


その姿を見る。


苦しい。


あまりにも。


自分らしい。


一人で。


背負って。


一人で。


決めて。


一人で。


責任を。


取ろうとする。


その結果。


誰かが。


選ぶ権利を。


失った。


「……」


五人目が。


叫ぶ。


『僕も』


『選びたかった!』


映像の俺は。


答えられない。


そして。


五人目は。


世界の外へ。


消えた。


――。


映像が。


終わる。


黒い星の目が。


閉じる。


静寂。


俺は。


しばらく。


動けなかった。


「……」


アリアが。


そっと。


俺の手を。


握る。


「レオン」


「……」


「あなたは」


「間違ってたのかもしれない」


「……」


その言葉に。


俺は。


顔を上げる。


「でも」


アリアは。


続ける。


「今のあなたは」


「違う」


「……」


「だから」


「今度は」


「一人で」


「決めなくていい」


俺は。


アリアの手を。


握り返す。


「……ああ」


ユウトも。


隣に立つ。


「兄貴」


「ん?」


「俺は」


「ここにいる」


「……」


「兄貴が」


「昔」


「何を選んだとしても」


「俺は」


「今」


「自分で」


「ここにいる」


「……」


俺は。


目を閉じる。


「ありがとう」


ソウも。


俺を見る。


「僕も」


「ここにいる」


「……ああ」


「だから」


ソウは。


少しだけ。


笑った。


「昔の兄ちゃんに」


「伝えよう」


「……?」


「一人で」


「全部」


「決めなくていいって」


「……」


俺は。


笑った。


「そうだな」


その時。


空に。


もう一度。


黒い星が。


現れた。


でも。


今度は。


目ではない。


一つの。


小さな扉。


扉には。


文字が。


刻まれている。


最初の選択を、選び直しますか?


「……」


俺は。


扉を見る。


選び直す。


その言葉は。


第3原則。


再選択。


何度も。


俺たちが。


大切にしてきたもの。


でも。


今回の選び直しは。


一人では。


できない。


俺は。


みんなを見る。


「……」


アリア。


ユウト。


ソウ。


セリア。


ミナ。


ノア。


ユラ。


カナ。


ハネ。


カイ。


ソア。


ハル。


リク。


ミライ。


リオ。


エレナ。


そして。


名前のない。


時間の外側の少女。


彼女も。


こちらを。


見ている。


「……」


俺は。


言う。


「みんな」


「もし」


「最初の選択を」


「やり直せるとしたら」


「……」


「どうする?」


誰も。


すぐには。


答えない。


でも。


一人。


また一人。


手を。


上げる。


「私は」


アリア。


「一緒に決めたい」


ユウト。


「俺も」


セリア。


「もちろん」


ミナ。


「みんなで!」


ノア。


「……一緒」


ユラ。


「終わりも」


「自分で」


カナ。


「私も」


ソア。


「僕も」


ハル。


「俺も」


リク。


「自分で決める」


ハネ。


「私も」


リオ。


「俺は」


「生きたい」


ミライ。


「まだ」


「決めてない」


「でも」


「一緒に考えたい」


エレナ。


「世界の未来も」


「世界自身に」


「選ばせたい」


そして。


最後に。


時間の外側の少女が。


小さく。


笑った。


「私は」


「……」


「待つ」


「……」


「みんなが」


「決めるまで」


「待つ」


俺は。


頷いた。


そして。


扉へ。


手を伸ばす。


「じゃあ」


「やり直そう」


――。


扉が。


開く。


でも。


その先に。


あったのは。


過去ではなかった。


「……?」


そこには。


何もない。


ただ。


一つの。


巨大な。


白い部屋。


中央に。


椅子。


その椅子に。


誰かが。


座っている。


黒い髪。


白い服。


赤い瞳。


「……!」


俺は。


息を呑む。


その顔は。


俺に。


そっくりだった。


でも。


違う。


そいつは。


笑っている。


そして。


言った。


「やっと」


「ここまで来たね」


「……誰だ?」


そいつは。


答える。


「僕は」


「お前が」


「最初に」


「選ぶ前に」


「捨てた」


「もう一人の」


「お前だ」


「……!」


世界が。


静かになる。


「そして」


そいつは。


立ち上がる。


「僕こそが」


「最初の世界で」


「一番最初に」


「選ばれなかった」


「存在だ」

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