論告求刑
「それでは検察官、論告をお願いします。」
検察官は、静かに立ち上がった。
手元には分厚い資料に、大量の付箋が貼ってあった。
「本件は被告人が被害者に対して、一方的な恋愛感情を抱き、自分以外の異性に対して性的行為をしている被害者を目撃し、殺意を抱いた。その殺意を成就させるために、被害者のピーナッツアレルギーを利用することを思いつき、実行した結果、被害者を死に至らしめたものである。」
被告人は下を向いたまま黙っていた。
「防犯カメラ映像により、被告人が『森下製菓、ピーナッツパン!』を購入した事実に疑いはない。また、被告人はピーナッツパンだけではアレルギー物質の摂取量が足りないのではないかと考え、『森下製菓、追い追いピーナッツクリームかい?チューブ入り』を準備していることから、その殺意は非常に強かったと推察できる。また、証人の証言から、被告人が被害者のピーナッツアレルギーを知らなかったとは考えられない。さらに、本件発生直後に、『森下製菓、ピーナッツパン!』の空き袋を所持していたことから、被告人がピーナッツ成分を意図的に摂取したと考えられる。また、『森下製菓、追い追いピーナッツクリームかい?チューブ入り』の内容物が著しく減っていることから、被告人がピーナッツ成分の不足を懸念して、ピーナッツ成分を意図的に付着させたと推察される。さらに、被告人のSNS記録を調べると、被害者への異常な執着性を示しており、通常の恋愛感情の範囲を逸脱している。取調べ映像や、被告人質問からも明らかなように、被告人自身も自らの殺意に同意しており、殺意があったことは明らかである。ドライブレコーダーの映像から、被告人が被害者に対して接触した可能性は限りなく高く、被告人から被害者に対して有形力の行使があったことは明白である。これらの事実から、被告人を通してピーナッツ成分が被害者に侵入したことは偶然の事故であったとは考えられない。」
「以上より、被告人の刑事責任は重大である。」
検察官は、被告人に一瞬だけ視線を向けた。
被告人は下を向いて黙っていた。
「したがって、被告人を拘禁十五年に処するのが相当と思料する。」
検察官は、静かに着席した。
被告人は下を向いて黙っていた。




