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被告人質問、検察官

「検察官は被告人質問をはじめてください。」


検察官は力強く立ち上がった。


法廷中の視線が検察官に突き刺さっていた。


「被告人、先ほど弁護人も述べましたが、あなたには黙秘権があります。語りたくない事情があるならば、語らなくて問題ありません。私が質問しますので、否定したい時は否定してください。」


「異議ありですな。検察官の今の言葉は、被告人の黙秘がまるで肯定しているかのように思わせる印象操作であり、黙秘権を著しく侵害しています。」


「異議を認めます。あらためて被告人に黙秘権があることをお伝えします。あなたは黙っている権利があります。それは、肯定でも否定でもありません。検察官は黙秘権を侵害することがないようにしてください。」


「失礼しました。親切に述べただけですが、ここまで黙秘する被告人は、私もはじめてですので、戸惑っております。」


検察官は表情を変えずに、事務的に言った。


「では、質問をはじめます。」


被告人は下を向いて黙っていた。


「あなたは、殺意がありましたね。」


被告人は下を向いて黙っていた。


「あなた、若いときに、ホストにハマって多額の借金をしてますね。」


「異議ですな。本件とは関係ありませんわ。」


裁判長は陪席裁判官の意見を確認した。


「検察官はどのような意図がありますか。」


「被告人の執着性に関して、本人の意見を確認したいと思っております。」


「異議を却下します。検察官は続けてください。」


「あなた、借金返済のために、一時期スナックで働いていましたね。」


被告人は下を向いて黙っていた。


「あなた、その時にホストのことを『殺してやりたい』と呟いたそうですね。」


「異議ですな。検察官は……」


弁護人は、そこまで言って言葉に詰まった。


被告人は顔を上げていた。


検察官を真っ直ぐ見つめ、そして少しだけ笑った。


法廷中が静まり返った。


法廷には、エアコンの音だけが聞こえていた。


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「それは肯定ですか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「ピーナッツクリームを追加しましたか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「被害者に殺意を抱いていましたか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「本件当日の朝にピーナッツパンを買ったのはなぜなんですか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「有罪になっても構わないのですか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「黙っているのはなぜですか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「……今、私のことも殺したいと思ってますか。」


被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


「以上です。」


検察官が慌てて座る間も、被告人は何も言わずに、検察官を真っ直ぐ見つめ、笑みを浮かべていた。


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