ep17-6 ジッタ出陣
聖域のジッタ邸では、出陣準備が着々と
進んでいたが、当の本人が一向に姿を
表さない。
カーチスもそのことは折込済みで、出ない
のであれば、ミントか次席の者を新たな柱
として任命するつもりだった。
残り時間5分というところでジッタが現れた。
いつものにやけた顔はなく、酷くやつれた
顔で、側近の言葉もうわの空という感じ
だった。
「…ですが、あの〜よろしいですか?」
「何がだ。」
側近が、え?という顔で、
「ですから、全勢力の半数の出兵となりますが
よろしいでしょうか?」
ジッタが血走った目で側近の襟首を掴んで、
「お前!状況を理解できているのか!?
半分残してどうするんだ!
ダメだったらあとはないんだ、全投入に
決まってるだろう!!」
側近は、慌てて走って関係者と協議を始めた。
ジッタはミントがいる研究所に行って、
ミントを呼出した。
「おい!出来ているのか。」
ミントは鬱陶しいやつが来たなという顔で
「出来てるぞ、ほれ。」
紙に包まれた、コントローラーが渡された。
「な、何だこれは?」
「保険だ。制御不能になったら押せ、
それ以外は音声指示で大丈夫だ。」
ジッタがミントを指差して怒鳴った。
「制御不能!?そんなものをつくったのか!」
「言ったろ、保険だって。事故は起こる
ものだからな。」
ミントがスイッチを押して、扉を開く。
獣人兵達は続々と外に出ていった。
ジッタがまた叫んだ。
「たった、あれだけか!?」
「お言葉ですが、あなたの部隊の数千倍の能力
を発揮致します。」
と、言いきった。
「チッ!」
ジッタは、舌打ちをして出て行った。
「カーチス様、ジッタ様が出陣した様です。」
カーチスは頷いて、側近に指示をした。
「ジッタ邸を廃棄、跡地をミント邸の別邸
として、研究施設に作り変えよ。」
側近は、え?という顔をしたが、すぐに
「りょ、了解しました。」
と言って走って行った。
「ま、善戦はしても勝てはしないだろ。」
と、カーチスは苦笑いをした。
出陣した、ジッタは移動中に珍しく作戦を
考えていた。
側近に、油汗をかきながら命令口調で聞いた。
「城塞都市の化け物は来るのか?」
ジッタは、城塞都市での1件以来、
あの攻撃が悪夢の様に脳裏から離れなく
なっていた。
「いえ、城塞都市には動きはありません。」
ジッタは、それを聞いて胸をなで下ろした。
「相手の戦力は?」
側近はデータを見ながら報告した。
「長剣を扱う剣士と短剣を扱う剣士と
不明な情報ですが、獣化して剣を扱う者
がいる様です、あとは非戦闘員の様です。」
「たった…3人ということか?」
「は、はい。」
ジッタは、側近に指示を出した。
「精鋭部隊を前線に獣人部隊をバックアップ
で、獣人部隊の攻撃は指示があるまで禁止
する」
「他の部隊は?私の周りに居れば良い。」
側近は頭を下げて、
「了解しましまた。」
と言って下がろうとした。
「待て待て、獣人部隊はこれで命令する
らしいぞ、全く面倒な話だ。」
と言ってミントから貰ったコントローラーを
側近に投げつけた。
側近は、獣人部隊の所に行って、ジッタからの
命令を伝達するため、コントローラーで会話
しようとすると、獣人部隊のリーダーから
「それは、そういうものではない。
緊急時に我等を自爆させるだけのもの、
通常は普通に会話して頂いて大丈夫です。」
それを聞くと側近は安堵し、ジッタの命令を
獣人部隊に伝えた。
「端的にいうと我等に戦うなと…。」
側近は苦笑いして、
「いや、命令があるまでは…ということです。」
「自己防衛は?」
「ダメです。戦闘は許可できません。」
「戦闘区域で戦わず立っていろと?」
「いまはそういう命令です。」
獣人部隊のリーダーは頷き、
「命令は理解しました。」
側近は、頭を下げて帰って行った。
その内容をモニタしていたミントは絶句
し、拳を机に叩きつけた。
「ばかな…勝てる戦いが負けるぞ。」




