黒龍王
難民達を全て取り込むとアイテムボックス内は随分騒がしくなった。
喧騒を得た見せかけの国は民が入ることによって本当の国へと早変わりした。【建築王】が暇つぶしに設計した都の家々を【千影】と【万化】に【久遠】が相まって一つ一つが爆速で建てられた。
アイテムボックス内の都市は生活インフラもしっかりと整備されており、トイレは水洗式で、電気と魔力が通っていた。電気は【雷光】オクトロンが呼び寄せた雷を【貯蓄】チャージが貯めて置いて、必要な時に必要な分だけ供給される。
魔力は【全能】アウラ・デウス・マキナの分裂体であるミニアウラが一人でこの国を余りある魔力で各家庭に供給している。
人々は家庭に備え付けられた魔道具で便利な暮らしをすることができた。その魔道具は一台で一家族を一年間養えるだけの金額が普通に買ったら必要だが、百蓮国の家庭には標準装備されていた。
外では八人の小林海斗がカナルガナル共和国を滅ぼした黒龍王ディアルブレード以外にも他の国にモンスターが出現していないか調査するために海斗達は転移魔法陣で各国に飛んだ。
すると、案の定様々な国でSSSランクモンスター達が暴れていた。
エスポワール王国には【黒龍王】ディアルブレード。
機械国ギアには【時計仕掛け】タイムリー。
軍事国ドーツイには【十面銃】ガンテンス。
神聖国ビームには【極彩色の眷属】リッチリーキン。
帝国アルフリードには【邪霊魂】イビルゴースト。
どれもこれと今まで強力過ぎて封印されていた獣ばかりだった。海斗は分裂体の五人を各国に派遣し二人は難民の相手をし、もう一人は【百蓮】を纏めに行った。
アイテムボックス内では八分の一になったミニ海斗が拡声器の前で音頭を取る。
「諸君!ついに我々の全力を出す時がきた!世界は今危機に瀕している。この騒動を治めるのは誰か!?」
百蓮!百蓮!百蓮!
「この世界で一番強いのは誰か!?」
百蓮!百蓮!百蓮!
「SSSランクモンスターを蹂躙するのは誰か!?」
百蓮!百蓮!百蓮!
アイテムボックス内に熱気が充満する。海斗は討伐メンバーを発表した。
「【黒龍王】ディアルブレード。【一撃】【雲水】【海王】【狩人】【鬼槍】【狂気】【鉄塊】【撃鉄】【ニ刀流】【独行】【仙道】」
「【十面銃】ガンテンス。【剣神】【激烈根性男】【嫉妬】【次元】【瞬身】【消滅】【幸運】【巨人】【魔弾】【闘人】【神童】【白鯨】」
「【時計仕掛け】タイムリー。【全能】【赤燐】【千影】【水帝】【晩王】【万化】【悪辣】【血桜】【時雨】【激震】【圧縮】」
「【極彩色の眷属】リッチリーキン。【虹帝】【反射】【封印】【浮遊】【魔王】【天使】【無限】【暴風】【熱拳】」
「【邪霊魂】イビルゴースト。【村人】【魔眼】【魔人】【魔法陣】【迷彩】【雷光】【幻影】【怠惰】【獣人】【鋼鉄】」
「戦闘要員と生産要員どちらもフル稼働で民達を救ってもらうことになる。準備はいいか!?」
うおおおおおおおおおお!
六人の海斗がアイテムボックスを開ける。
「全員、敵を蹂躙せよ!」
【百蓮】のメンバー達が次々にアイテムボックスの外へ飛び出していく。海斗は戦闘要員全員が外に出たのを確認してから、分裂体を集めて、一つの体に合体した。
海斗は被害が深刻なエスポワール王国に転移する。
転移した先は火の海になっていた。王城からルシア姫の張り上げる声が聞こえる。
「騎士の皆さんは国民に家財を捨てて逃げるように告げてください!このピンチに必ずあの人は来ます!それまで耐えてください」
海斗は【仙道】李鉄の力を借りて仙人のエネルギーを得る。海斗の体に力が湧いた。海斗は仙人エネルギーで空に飛ぶ。既に避難が完了している地域を確認した。
海斗はエスポワール王国を見渡すと、アイテムボックスから池や川の水を放出した。ほとんど無限にある海斗のアイテムボックス内の水は尽きることを知らなかった。
突如空から現れた水はエスポワール王国に覆い被される。ルシアはその様子を見て、海斗を指差した。
「ほら、来たでしょう!私の騎士...」
海斗はアイテムボックス内の使われていない場所に向かって避難が完了している地域の酸素を収納した。一瞬、火が消えたかと思うと、エスポワール中に風が吹き込んだ。そして風が止んだ時にはエスポワール王国の八割の火は消えていた。
海斗は【黒龍王】ディアルブレードを睨みつける。ディアルブレードは名に恥じない漆黒の鱗をした巨大な龍で、もう既に【百蓮】のメンバーがディアルブレードに襲いかかっていた。
【独行】と【一撃】が協力して【黒龍王】を叩きのめしている。他の面々も己の能力を活かして【黒龍王】にダメージを与えているが、【黒龍王】の無尽蔵な体力を前にして肩で息をしている。
海斗がアイテムボックスでディアルブレードを収納しようとするが気配を読まれて避けられてしまう。海斗は拳に空間魔法を纏う。仙人エネルギーを纏った状態でディアルブレードの前に降り立った。
ディアルブレードは海斗が集団のボスだと認識すると、海斗を威圧した。
GYOOOOOOOOOOOO!
海斗はその威圧を軽々と受け流し、足に力をこめてディアルブレードの目に向かって飛ぶ。地面が捲れた。海斗の拳がディアルブレードの右目を捉える。海斗は拳の先に纏った空間魔法でディアルブレードの右目を抉った。
「アイテムボックス闘法、その四、抉痛」
ディアルブレードが悶絶する。顔を上げたディアルブレードは悪魔のような顔をして海斗に咆哮を喰らわせる。
GYOOOOOOOOO!
死角からワッパがディアルブレードにパンチを放つ。
「全力の二分の一パンチ!」
ワッパは全力を出すと動けなくなってしまうので、当てられる攻撃を確実に当てて相手を削っていく。【独行】丈一は腕中につけられたステータス上昇の腕輪を攻撃力増加に一瞬で変化させて、ディアルブレードを殴る。
【狂気】ピエロが隙を見てディアルブレードに触る。ピエロの内なる狂気がディアルブレードに伝染する。精神を汚染されたディアルブレードは近くの巨岩で頭を何度も殴打する。
【雲水】寂蓮は仙人エネルギーを【仙道】李鉄と共に集めて、ディアルブレードを中から破壊して回った。
そんな中【二刀流】武蔵がペタペタと裸足でディアルブレードに近づいていくと、ディアルブレードの前で息巻いた。武蔵の集中が高まっていく。異様な気配に気づいた。ディアルブレードが腕で武蔵を押し潰した、かのように見えたが【鉄塊】ホウヘイが武蔵を鉄よりも硬い体で守っていた。
武蔵が二本の刀を抜くと、一息にディアルブレードの腕を切断した。ディアルブレードは地面に蹲る。
海斗はディアルブレードと闘っていて違和感を覚えた。この龍のどこか必死な感じが自然なものとは思えなかった。海斗が破壊されていない左目を見ると、ディアルブレードの虹彩は不気味に暗く染まっていた。
海斗はディアルブレードとの対話を試みる。海斗がディアルブレードの隙を縫って、【狂気】ピエロの力を借り、精神内部に侵食すると、そこには四肢と体を鳥居で抑えつけられたディアルブレードがいた。
ディアルブレードが吠える。
(人間よ!殺せ!)
海斗はディアルブレードの咆哮によって精神世界から追い出された。
「海斗!危ない!」
はっと意識を取り戻すとディアルブレードの翼が海斗を切り裂こうとしているところだった。【二刀流】と【鉄塊】が辛うじてガードする。
「すまない!助かった!」
二人は頷くと攻撃に戻っていった。【撃鉄】アサルトがディアルブレードの目を狙って射撃をした。海斗は閃く。
「そうだ!目をつぶせば何か変わるかもしれない!アサルト、僕たちが隙を作るからとっておきのやつをディアルブレードの目に打ち込んでくれ」
アサルトは短く答える。
「了解」
海斗は残っている仙人エネルギーを搾り出してなんとかディアルブレードの上空に鎮座した。アイテムボックスから大量の海水をディアルブレードに放出した。
「ポセイドン!これだけあったら行けるだろ!」
ポセイドンが全ての海水を受け止める。
「バッチシだ!海斗よ!海王の槍!」
ポセイドンは海水を集めて巨大な槍の形にした。発射された槍はディアルブレードの首を捉えて、地面に突き刺さった。
ディアルブレードの頭が固定される。【撃鉄】アサルトが背中に背負ったアサルトライフルを構えて、ディアルブレードの黒い瞳を撃った。
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