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丈一

 灰色のローブを纏った男達は、そのままモロにワッパの一撃を受けるかと思いきや、赤褐色の目の男は身体を泥に変化させて、攻撃を避けた。


 海斗が渾身の一撃を外されたことに衝撃を受ける。


「なに!?」


 赤褐色の目の男の右目から血が出た。男はフラフラと立ち上がる。


「まさか禁術・現実騙しを使わされるとはな。お陰で今日はもう戦えなさそうだ」


 ワッパの一撃を直接食らった腕が巨大化した男は地面にうつ伏せに倒れていて、もう戦う体力は残っていなさそうだった。


 海斗は男を逃す気は毛頭なかった。奥の手を使ったウェンズデイをアイテムボックスに戻して【狩人】エアリスを呼び出した。


「エアリス!」


「ええ、任しといて!海斗」


 【狩人】エアリスが放った一撃は300階の転移魔法陣に乗ってダンジョンから脱出しようとした赤褐色の男に刺さった。


 残されたのはへたり込むイビルアイと床に伸びている【剛力】キジンに海斗達だけだった。イビルアイがぽつりと言葉を漏らす。


「お兄ちゃん...どうして...」


 海斗はエアリスにキジンを持ってダンジョンの外に転移して貰うと、一度イビルアイを帰らせた。


 カルラが海斗に尋ねる。


「ダンジョン攻略もうやめちゃうの?」


 海斗は首を振って答えた。


「もちろん止めるつもりはないよ。1000階に行くまで【百蓮】の総力を上げて攻略する」


 そういうと海斗は【海王】ポセイドンと【反射】リングを呼び出した。


 海斗達は黙々と攻略していった。


〜実況席にて〜


「放送席、放送席、こちら実況席でございます!今からちょうど三日前に始まった、小林海斗の試練のダンジョン1000階攻略は只今佳境を迎えています。タイガーマスクさん、これまでの彼らの活躍、いかがでしたか?」


「いやぁ!素晴らしいね!俺の記録も二日目くらいに抜かれて驚いたよ。これから1000階に挑むわけだけど、丈一くんと同じステージに立つものが現れると考えると感慨深いな」


「そうですね!【独行】丈一君もこの瞬間を見守っているのでしょうか?観客の盛り上がりもピークに達しております!」


FOOOOOOOOOO!


 観客達は三日間の間、家に帰ったり、仕事をしながらだったりしながら海斗達に声援を送っていた。


 その声援が報われる時が来た。


「おおっ!海斗選手!最強のアイテムボックス闘法で敵を分解していく!ここで、1000階のボスである巨人が片膝をつきました!その前に佇むのは【一撃】ワッパだぁ!ワッパの一撃が刺さる!攻略終了だぁぁぁぁぁ!」


 観客達は思わず立ち上がって拍手を贈る。


「【百蓮】やるじゃねぇか!」


「海斗!海斗!海斗!」


 人々が口々に【百蓮】を賞賛するなか、灰色のローブの男達は人ごみの中に消えていった。


 海斗は仲間をアイテムボックスに仕舞い、転移魔法陣を踏んだ。出迎えたのは黒いローブの男、丈一だった。


 丈一は心から海斗を賞賛する。


「よくやったな。小林海斗。これで奴らも迂闊には俺や君に手を出さない筈だ」


 丈一と海斗は固い握手をする。その瞬間をカメラのフラッシュが捉えた。


「迷宮都市最高戦力と、外界の最高戦力との絆が生まれた瞬間だぁ!」


 海斗が丈一に提案する。


「よかったらこの腕輪を使ってくれ。自由に僕のアイテムボックス内に入れるようになる。たまに呼ばれるかもしれないが、それでもよければ」


 丈一は受け取ったものを腕につけて太陽に翳した。


「うん、これで俺も【百蓮】の一員か?」


「まぁ、同盟ってことで」


 丈一はある願いを抱えて試練のダンジョンに潜っていた。それを海斗に打ち明ける。


「俺は実は元の世界に戻りたくて、試練のダンジョン1000階まで潜ったんだ。それでも元の世界に戻る方法は見つからなくてな」


 海斗があっさりとした口調で丈一に告げる。


「ん?戻れるぞ」


 丈一が聞き間違いを疑った。


「え?なんて?」


「いや、だから戻れるぞ。元の世界に」


 丈一は目を飛び出して叫んだ。


「ええええええええええ!」


 海斗は地球に戻った勇者の例をこんこんと説明する。丈一は後退り、腰を抜かした。


「ま、まさか。そんな簡単に帰れるなんて、思ってもみなかった」


 海斗が尋ねる。


「もしよかったら今日帰るか?」


 丈一は提示された選択肢に飛びつきたい思いでいっぱいだったが、この地に残した責任を思い返して踏みとどまった。


「いや、朧月や終末の日(ラグナロク)のこともある。それらを解決してから帰ることにするよ」


「そうか、それじゃあ俺のアイテムボックス内で遊んでてくれ」


 そう言って海斗は時空の裂け目に新たな仲間を入れた。待っていたかのように海斗を取材陣が取り囲んだ。


「海斗さん!今のお気持ちは!?」


「二人目の1000階攻略になった気分は?」


「一番手強かった敵は誰ですか!?」


「海斗さんに彼女はいますか!?」


 海斗は苦笑いしながら、取材陣を突っ切っていった。実況席に向かった。


「おお!小林海斗がこちらに向かっているようだ!私何か失礼なこと言ったっけ...」


 海斗は実況のメリーに三日間盛り上げ続けてくれたことに感謝を伝えた。解説のタイガーマスクとはニヤリと笑い合ってハイタッチをした。


 観客が温かい拍手を三人に贈る。海斗は最後に応援してくれたファンのみんなに深々と頭を下げて、泊まっているホテルに帰っていった。


 海斗はホテルの中でアイテムボックスを開く。アイテムボックス内に入ると、外の部屋よりも豪華絢爛な部屋があった。そして海斗はイビルアイを呼んだ。


 イビルアイはおずおずと部屋に入ってくる。海斗は灰色のローブの男との関係性を聞いた。イビルアイは朴訥に話し始める。


「私たちの村は魔眼持ちが生まれてくることで有名だったの。そんな村で私とお兄ちゃんは魔眼持ちとして生まれた。魔眼にはランクがあって、神眼、魔眼、赤眼の順に強力だと言われてるの。


 うちの家庭は魔眼が生まれたことに大変喜んだわ。なぜなら魔眼は高く売れるから。お兄ちゃんは十歳の時に村の外に売られたわ。私は十歳になる前に逃げて、ギルドでお金稼ぎをしている時に奴隷商人に捕まったところを海斗君、いや、お兄ちゃんに救われたの。


 だから私に取って本当のお兄ちゃんは海斗君であってお兄ちゃんじゃない。それでもあいつは家族だから私が止めないといけないとも思ってる」


 イビルアイは一息に言い切ると海斗に抱きついた。海斗がそっと頭を撫でてやるとイビルアイは海斗の服を濡らした。


「よく頑張ったね。イビルアイ。お前のお兄ちゃんの目を覚まさせてやろう!」


 ガシガシとイビルアイの頭を撫でるとイビルアイは髪型を気にしながら離れた。そして満面の笑みで海斗に向かって頷いた。

読んでくださりありがとうございます。


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