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攻略

 翌日、海斗とウェンズデイはギルド『ヴァルハラ』にて試練のダンジョンを受けようとした。


 ギルドは昨日よりも人で溢れかえっており、二階の欄干からも海斗達を一目見ようと、人が鮨詰め状態になっていた。


 海斗が『ヴァルハラ』の扉を開けるとたくさんのフラッシュに出迎えられた。向けられたカメラと共に、どこからか実況と解説の声が聞こえる。


「さぁ!ギルド『ヴァルハラ』に現れました!小林海斗ぉ!パーティー【百蓮】のリーダーを務めます彼は超一流の空間魔法の使い手!その右におわしますは【水帝】ウェンズデイです!解説のタイガーマスクさん。今日の見どころはどこですか?」


「そうだなぁ!まずはどう言う面子で攻略するのかが気になるなぁ!」


「そうですね!前回は剣を追求する者達の秘境にて師範を務める【剣神】ガーフィールに、魔法大国、円卓の魔女達の頭【全能】アウラ・デウス・マキナに、ただの【村人】ポッカで挑みましたが、今回はどんな面子で挑むのでしょうか!?」


 海斗は自分の行動が実況されるということに違和感を感じながらもアイテムボックスを開いた。海斗は【百蓮】のメンバーをアイテムボックスに放置してからアイテムボックス内がどう開拓されているのか、怖くて直視していなかった。


「海斗ぉ!ようやく俺の出番か!?」


「おおっと!【水帝】の次は【晩王】ヴラトだ!難攻不落の城を持つ吸血鬼は最近アイテムボックス内に新しい城を建てたと専らの噂だぁ!」


 海斗はヴラトに肩を掴まれて、頭を揺さぶられた。海斗は揺さぶられながら尋ねる。


「ヴラト、城作っちゃったの?」


「ああ、何か問題あるか?」


「いや、無いけど...」


ヴラトはファンサービスと言わんばかりに体を蝙蝠にしてギルド内を飛んだ。海斗は纏わりつく蝙蝠を剥がしながら二人目を呼ぶ。現れたのは鬼の面をして槍を持った落武者のような格好をした男だった。


「次は【鬼槍】エドモンドだぁ!人間によって滅ぼされた鬼の村に拾われた人間。槍を愚直に鍛え続けて【鬼槍】の名前を襲名した男!」


 エドモンドは短文で話す。


「敵...殺す!」


 鬼の仮面を海斗に息遣いが聞こえる距離まで近づけてそう言った。


「さぁ!メンバーが出揃いました!ギルド『ヴァルハラ』から離れたこの特設会場でも沢山の人が押し寄せています。皆さん、今のテンションはどうですか!?」


FOOOOOOOOOO!


バンッバンッババンッ! 小林海斗! バンッバンッババンッ! 小林海斗!


 歓声を上げる者、手に持っているバルーンを鳴らす者、色々な方法で海斗に己の熱を伝えようとした。


 四人揃ったメンバーと顔を見合わせて、海斗は拳を突き上げた。


 ギルド内は興奮を抑えきれない様子だった。


FOOOOOOOOOO!


 海斗は宣言する。


「我々【百蓮】はこの攻略で1000階に到達する!」


「出ました!【人徳】小林海斗はこの迷宮都市に来て二日で1000階に到達するようです。タイガーマスクさんの最高到達数はおいくつですか?」


「俺は738階だぞ!受付嬢のお姉ちゃんは386階だ」


「さぁ、一発でタイガーマスクさんの記録を塗り替えれるでしょうか?【百蓮】のファーストファイトが今始まります!」


 海斗達は上方に剣と盾のマークがついた転移魔法陣を踏み締めた。魔法陣が光る。


 目を開けた先は銀河が広がっていた。海斗達は広大な宇宙に漂っていた。足元を見るとそこには半透明な道がどこまでも遠くに繋がっていて、その道の途中に敵が何体もいた。どうやら、一体一体、エンカウントして倒していくしか無いらしい。


 海斗は息を吐いて気合を入れた。


〜五時間後〜


「ウェンズデイ!エドモンド!敵の隙を作ってくれ!」


「ヴラト!敵の撹乱を!」


 巨大な石像を前にして、海斗はアイテムボックス闘法を放つ隙を窺っていた。ヴラトが体を蝙蝠にして、巨大な石像の視界を奪った。視界を失った石像は両手をやたらめったに振り回す。


「水帝級魔法アクア・フラアド」


 ウェンズデイの後ろから濁流が襲い掛かる。石像は流れに足を取られ、バランスを崩す。その隙をエドモンドは見逃さなかった。


「鬼・天・魔・真・槍!」


 エドモンドの放った一撃は巨大な石像の足を破壊した。石像が頭から地面に堕ちる。石像が起きあがろうと腕に力を込めた瞬間、海斗が両腕を前に突き出して手を開いた。


 石像の頭の上に時空の裂け目が広がって、【創造】ファシリテート特注の百トンほどの重さのダンベルが落ちてきた。


「アイテムボックス闘法、そのニ、圧壊!」


 石像の頭は破裂し、全員が石像の動きが止まったことを確認すると、仰向けに倒れ込んだ。


「ハァハァ、これで100階クリアかしら?」


 ウェンズデイが肩で息をしながら尋ねる。ヴラトは息も絶え絶えに答えた。


「ああ、そうみたいだな」


 海斗はアイテムボックスから冷たい水を取り出し、ヴラト、エドモンド、ウェンズデイに配る。


 全員がありがたそうに水を受け取り、勢いよく飲み干した。ウェンズデイが額の汗を拭う。


 海斗は地面に横たわるともうピクリとも動けなくなったような気がした。海斗は今後の方針を決める。


「よし。僕達のパーティーはここまでにして次のパーティーにバトンタッチしよう」


 海斗達はアイテムボックスの中に入っていた。すぐそばに【剣神】ガーフィールと【浮遊】エルデ、【千影】ダンゾウ、【狂気】ピエロが待機していた。


 ガーフィールが片手をあげる。海斗も片手を上げてバトンタッチした。実況と解説の声が試練のダンジョンに響き渡る。


『おおっと!ここでパーティー交代だぁ!これは果たして迷宮のルールに抵触しないのだろうか?』


『これはいわゆるテセウスの船だな。パーティーメンバーが変わっても同じパーティーと言えるのだろうか』


『さあ!見事な連携で100階まで進んだ【百蓮】だが、これまでのように雑魚は無視すると言う戦法をここからさき通用しないぞ!』


 海斗がアイテムボックス内に入ると、エルデの悪ふざけだろうか入ってすぐの空に「ようこそ、百蓮の遊び場へ」と書かれた文字が浮かんでいる。


 海斗は恐る恐る周囲を見渡すと、舗装された道路があり、一人一人の家が存在していて、そこには生活があり、一つの国が存在していた。


 海斗は腕輪で【久遠】ハルカを呼び出した。ハルカはすぐに近くの転移魔法陣からこの場所に転移してきた。ピンク色の髪をポニーテールで纏めて、元気溌溂と言った様子の学生だった。


 海斗は疑問に思っていたことをハルカに聞く。


「ハルカ、疑問に思ってたんだけど、アイテムボックス内の時間と外の時間ズレてないか?」


 ハルカはにこやかに答える。


「海斗さん、もちろんですよ。だって私がズラしてますから」


「やっぱり、君の仕業だったか...」


 海斗は徐々に化け物じみていくアイテムボックスに戦慄した。もう既に手遅れだというのに...。


「ちなみにどれくらいズレてるんだ?」


「外での一日かここでの十日になるよう抑えてます」


「十倍か...」


 海斗は深刻な顔をして頷いた。ウェンズデイが海斗に尋ねる。


「どうしてそんな深刻そうな顔をしているの?」

 

「いや、考えたらこの空間にいる限り十倍の速度で老いていくってことだろ?」


 ハルカが首を振って否定する。


「【不老】アークシュナイダーがここでの加齢は止めてくれてますよ」


 海斗がドン引きする。


「えぇ、それじゃあここにいる限りほとんど不老不死じゃん...やり過ぎでしょ。僕でさえ神様に止められたんだよ」


ハルカは照れながら頭を掻く。


「いやぁ、それほどでも!」


「褒めてない!」


 海斗達は疲労困憊の身体にツッコミの役は重すぎると判断して国の中心部にある豪邸に転移して、無理矢理休んだ。

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