迷宮都市
海斗とウェンズデイは転移魔法を使わずに、ジャガーンに向かってゆっくりと旅した。迷宮都市ジャガーンは全国転移同盟に批准していなかったのと、
エスポワール王国が迷宮都市に一番近かったからだ。
そして一月後、海斗達は迷宮都市ジャガーンに辿り着いた。まだ海斗がこれまでの人生で行ったことのない場所だった。
海斗はまずその外観に圧倒された。半透明のバリアで覆われている迷宮都市ジャガーンは遠くから見るとなんてことない普通の都市だが、中に入るとまったく様相が違っていた。
どうやら認識阻害の魔法をかけられていたらしく、中はモノレールが空を飛び、街の中心部には高層ビルが立ち並ぶ海斗のいた現代に限りなく近い世界が広がっていた。
海斗とウェンズデイはあまりの衝撃に口を開けてぽけーとしていると虎の頭をして毛皮を纏った男が、海斗達に話しかけてきた。
「おうおうおう!あんたら新人さんだな。呆気に取られる気持ちも分かるが、そこは邪魔だからこっちにどきな」
海斗とウェンズデイは謎の虎男に驚きながらも、素直に道の端へと移動する。往来をたくさんの人が行き来していた。
「まるでお祭りみたいね」
ウェンズデイがぽつりと漏らすと虎男は豪快に笑った。
「ガッハッハ!この都市では毎日がお祭りみたいなもんだな!」
海斗が人懐こい笑みを浮かべて虎男に訪ねる、
「虎男さん、名前は?」
「いや、拙者はしがないタイガーマスクだ!名乗るような名は持ち合わせない」
ウェンズデイが訪ねる。
「じゃあ虎男さん、私たちはどこに行けばいいのかしら?」
「おっと、そうだよな、忘れてた!お前さん達はまずギルドに行くべきだな!そこでステータス魔法を授かりなさい!ギルドへは三番目の曲がり角を右に曲がったらつくぞ!」
「虎男さん!ありがとう!」
「いいってことよ!」
虎男はそう言うと豪快に笑いながら雑踏の中に消えていった。海斗とウェンズデイが目を見合わせる。二人同時にため息をついた。
「はぁ、なんなのこの都市は」
「まあでも、幸先は良いんじゃないかな」
「良いのかしら?」
ウェンズデイが疑問符を投げかける。二人は人の流れに身を任せながら、三番目の曲がり角にたどり着いた。
ギルドの外観は何の変哲もない酒場で、海斗達が中に入るとそこには沢山の人が様々な服装を着て酒場内を行き来していた。
海斗達は受付を見つけて話しかける。
「すみません、初めてここに来たんですけど」
「こんにちは!ギルド『ヴァルハラ』へようこそ!お名前をお伺いしてよろしいですか?」
茶髪の愛想の良い女性が応対した。
「小林海斗です」
「ウェンズデイよ」
「小林海斗様とウェンズデイ様ですね!初めてと言うことなのでステータス魔法をお授けします。手を出してください」
二人は手を前に出すと、受付嬢の手から淡い光が海斗達の腕に伝わる。
「お二方、ステータスと唱えてください」
二人は恐る恐るステータスと唱えた。すると海斗達の前に半透明のウィンドウが開いた。
小林海斗
体力 300/300
魔力 880/880
攻撃 80
防御 75
俊敏 150
『スキル』
空間魔法 レベルMAX
ウェンズデイ
体力 240/240
魔力 10000/10000
攻撃 30
防御 40
俊敏 80
『スキル』
水属性 レベルMAX
海斗が急に現れたステータスウィンドウにまごついていると【次元】ショータが時空を切り裂いて顔を出してきた。
「なに海斗、面白そうなことしてんじゃん。僕も混ぜてよ」
切り裂かれた時空をみて海斗に視線が集まる。ショータは時空から体をすべて出して受付嬢に言った。
「はい、僕の名前はショータ。ステータス魔法をちょうだい」
受付嬢は突如現れた謎の男に困惑しながらも職務を忠実にこなした。
「へぇ!これがステータスか!」
ショータがそう感嘆していると、開いた時空から次々と人が出てきた。ぞろぞろと現れた人達を巡ってギルドメンバーが驚いた。
「なんだなんだ?一体何が起こってる?」
「空間魔法レベルMAXの奴が現れたみたいだぞ」
「空間魔法って人を収納できるのか?」
【全能】アウラ・デウス・マキナが興味深げに淡い光を見た。【魔眼】イビルアイが分析結果をアウラに伝えると、アウラはステータス魔法を再現した。
「ふむ、海斗よ。邪魔したな」
そう言うと、アウラはステータス魔法を求める人達を連れてアイテムボックス内に戻っていった。
ギルド内は嵐のように去ったアウラ達を見て茫然自失といった様子だった。海斗が驚きすぎて白目を向いた受付嬢を揺さぶって起こす。
「はっ!白昼夢かしら、まさか神の御業であるステータス魔法がコピーされるなんて、あり得ませんよね」
海斗は空笑いする。
「はっはは、そうですね。それでこの後僕らはどうしたら?」
「え?あ、そうですね。これからあなた達には五種類のダンジョンに挑む権利が与えられます。火、風、水、光、闇の五つのダンジョンです。それぞれ地下百階まであり、現時点での最高階数は、火63階層。風62階層。水64階層。光38階層。闇37階層です!奮ってご攻略ください」
ウェンズデイが素朴な疑問を受付嬢に訪ねる。
「これを攻略したらどうなるの?」
「もちろん!富!名声!力!なんでもござれです」
「神様と会えるって本当?」
「それは全ての階層をクリアしたら、その可能性もあるといった話ですね」
受付嬢は海斗からの質問を少し濁して答えた。
「そして!この迷宮都市の一番の醍醐味は攻略配信です!あなたの攻略が街中のスクリーンに映し出されて、道ゆく人の耳目を集める...のは人気配信者になってからですけど、あなたの攻略はすべて配信されます!」
「おお〜。なら【百蓮】みんなで攻略したら盛り上がりそうだな」
「ちなみに!攻略人数は四人までです!ダンジョン内でパーティーの生体反応が五人になった瞬間、そのパーティーは強制的に外に転移させられるので悪しからず」
海斗はええーと非難の声をあげた。
「ちなみに!ステータスの上げ方はダンジョンに落ちている装備品を装備することでステータスは上がります!強くなりたければダンジョンに潜ってくださいな!」
海斗は受付嬢が自漫げに見せびらかした腕輪を見つめる。
(アウラとイビルアイに頼んで複製してもらおうかな)
「このアクセサリーは神が作りしものなので、複製等は不可能なのでお気をつけください!」
海斗がまたええ〜と非難の声を上げた。
「さて!長くなりましたがこれでダンジョンの説明は以上です!何かご質問はありませんか?」
ウェンズデイがたずねる。
「宿はどうすれば良いの?」
「宿はですね!皆様は攻略に行った際にもらえるポイントで生活してもらっています!宿もポイントで得られますので、まずは攻略をお薦めしております!」
「なるほど、ともかく攻略していったらいいわけね」
ウェンズデイは海斗の肩をたたく。
「海斗!あなたの最強パーティーで迷宮を一発で攻略なさい!」
ギルドメンバーがその発言を聞きつける。
「おっ!姉ちゃん言うねぇ〜」
「ここに来た人は皆最初にそういうんだよなぁ」
海斗は受付嬢に尋ねる。
「闇のダンジョンに行くにはどうするんですか」
「右手の闇マークが描かれた転移魔法陣に乗って頂ければ、すぐに一階から始められます」
海斗は転移魔法陣に足を運ぶと、【百蓮】最強格の三人を呼び出した。
サムライの格好をした男【剣神】ガーフィール。抜群のプロポーションをした魔女【全能】アウラ・デウス・マキナ。何の変哲もないどこにでもいそうな男【村人】ポッカ。小柄だが整った顔立ちをした冒険者【荷物持ち】小林海斗。
【百蓮】の中でも最強の四人が揃った。
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