だが任せろ!責任はとる!!
遅くなって申し訳ない!
『聖殿によって封じられていたダンジョンが動き出した』──それが王の話した内容だった。
それこそ長谷部氏がいたら『聖女』とか言い出していたのかもしれない……今となってはわからないが。
「ダンジョンから魔物は出てきていないようだが……そこから出てこれると気付かれたら最後、この国は魔物達によって蹂躙され、滅ぼされるであろう」
この世界に魔物は数少ない。
かつて世界が統一されていた頃、住み分けを行ったらしい。
しかし無法者というのはどこの世界にも存在する為、互いの入口は厳重に塞がれたそうだ。
主に人間側から。
禁を破った場合は攻め込むのも可能……魔界とこちらとでは倫理観が違い、魔物達は法に縛られないし、食の好みも違う。
ぶっちゃけ人間を食ったり、色々するようだ。
これは由々しき事態である。
幸いなことに環境が違うため、魔物は拠点とするところからあまり離れられないらしく……ギルドを設置して出てきた魔物を退治したり、敢えてダンジョンに入って魔界の金品を強奪したり(ダンジョン内はグレーゾーンなのでアリらしい)している国もあるという話だが……
そんな余裕も人員も、今まで人間だけの平和を謳歌していたこの国にはない。
ちなみに周辺諸国にもないという。
ダンジョン自体が珍しいのだ。
「民に被害が及ばぬよう、ダンジョンを再び塞ぐまでは、戦わねばならぬだろう……」
王の御前にも関わらず、波打つようにザワザワし出す。
(これは相当ヤバいことをやらかした……)
まさかダンジョンとは……
想定の範囲外だ。
「こんなとき、伝説の勇者がいてくれたら……」
隣で殿下がそう呟いた。
殿下は非常に健全な8歳児であり、女の子よりもカッコいいモノが大好きだ。
おそらく現代日本にいたら、にゃんたらメカとか超合金とか好きなんじゃないかなーと思う。
(ん?……『勇者』?)
これは使える……
「──皆様、御安心なさって!!」
私はそう言って席を立った。
発言の許しなど請わない。
こういうのは勢いが大事なのだ……後でその辺は上手くやる。
「私、ルビー・バートレットこそ……『勇者』!! 今朝そう神託が降りたので、こちらに参ったのです!!」
波打つようだったザワザワが、どよめきに変わる。
「ルビー?!『火急の案件』とはその事だったのか!!?」
ナイスアシスト!殿下!!
説得力がイイ感じで増した!!
よもやここにきて、長谷部氏の指示で早馬に持たせた手紙が役に立つとは思わんかったが!
私は恭しく王の方へ向き直り、カテーシーをとる。
「突然の発言をお許しください……皆様の不安気な様子に堪えられませんでした」
「よい。 ……面を上げて続けよ。 『勇者』と申したか?」
「はい、先日謎の高熱を出した際に。 熱に浮かされていたのだ、と思いましたが、元気になった筈の昨夜も『お前は勇者である』と……これは『神託』なのだとその時ようやく理解し、まずアーヴィング殿下の下へ。 まさか聖殿が壊れているなどとは夢にも思いませんでしたが」
我ながら嘘が上手い。
口から先に産まれてきたに違いない。
──だがそれは真実になった。
王と神官に連れられて行った聖殿跡地……
中央に埋まっている聖剣が、アッサリ抜けたのだった。
「うわぁぁぁぁぁ!? ルビー、超カッケェェェェェ!!!!」
最早ただの8歳児と化した殿下は、そう叫んでいた。




