つーか、フラグ立てたの私だった!
だが聖殿が壊されたから、なんだというのか……ましてや隕石だと思われてんならそんな重大な話ではない。
「修繕すれば良い話じゃないの?」
「宗教っつーのはめんどくせえとこあるからな……だが」
長谷部氏はその先を言わなかったが、多分想いは同じだろう。
第二王子殿下の婚約者である私はまだしも、なんでニコたんまで呼ばれてるんだよ?
……っつー疑問。
「……嫌な予感しかしない」
「あ、言っちゃった」
一介の男爵令嬢ごときが、国の聖なる神殿破壊で呼ばれると言ったら……あれだ。
きっと『聖女』がどーたらとか言い出す案件に違いない。
それか『魔女』。
そうでもなければ、ただの15の女子学生が呼ばれる意味がわからないが……『聖女』であれ『魔女』であれ、確かにあんまり良い予感はしない。
(待てまて……私は今まさに悪役令嬢だぞ? もし予想が当たってたらポジション的に『魔女』になるに決まっている様なモンだ……)
『魔女』になったら処刑される可能性、大。
これは本気でヤバい……そう思って長谷部氏の方を見ると、殿下と見つめ合っていた。
「あっ……!?」
『何抜け駆けしてやがる』……そう言おうとした瞬間──
消えた。
ニコレットの姿が。(倒置法)
「…………えええぇぇぇぇぇ?!! ででででで殿下っ!!」
慌てて殿下の下に駆け寄ると、殿下はイケショタのあどけない顔で不思議そうにこう尋ねる。
「どうかしたのか? ルビー……化け物でも見たような顔をして」
「?!!」
殿下は不思議面のまま、手にメモを携えていた。
「殿下っ! その紙を!!」
「……紙? おや?」
どうやらそんなものを持っていること自体、認識できていないようだ。奪うようにそれを取ると──
そこには件の台詞。
『あと10年……私が大人になるまで待っててくれ』が書かれていた。
「…………っマジか──成功してやがった……!!」
じゃあコレやっぱりゲームの世界なのか!!?
「あの、殿下……ニコレット嬢は!?」
「『ニコレット嬢』……? ルビー、何を言っているのだ」
「オブライエン男爵家のニコレット嬢ですよ!!」
「はて……? オブライエン男爵家に娘などいたか? その娘がどうしたのだ?」
「いないことになってるぅぅぅ!!?」
どうやら『ニコレット・オブライエン』は元から存在しないことになっているようだ。
(……はっ!! つーか私はどうやったら元の世界に戻れるワケよ?!)
悪役令嬢はプレイヤーではない。
故に完全クリアは存在しない。
長谷部氏の完全クリアでは、私は戻れない様だ。
試しに私も殿下に台詞を言ってもらうべきだろうか。
だが……
(戻れるとしても……そもそも戻っていいのか?!)
なにしろ新展開フラグを立てたのは私である。
考えがまとまらないまま、宰相殿に急かされて大広間に移動した。
大広間には宮廷で働いている要人と、タウンハウスにお住まいの貴族の中でも高位にあたる方々がごっそり集められていた。
家の兄、イグナシオもその一人……おそらく親父様の代わりなんだろう。
私はたまたま長谷部氏のせいで早くに家を出たが……公爵邸は王都から近いとは言っても、馬車で1時間以上かかるのだ。
つまり……
急ぎ要人には伝えなくてはならん案件……ってことだよね?
これはヤバい。
多分、滅茶苦茶ヤバい。
兄ちゃんに相談したいが、殿下の隣に座らされたので動くことができない。
仕方なく、話が始まるまでにある程度予測し、動きを定めておくことにした。
(『魔女』って断罪されたら……そうだ! 『ルビーの身体を乗っ取った』って事にすりゃ公爵家には迷惑がかからんのでは!)
これは私の演技力にかかっている……
だが普段の外面を考えれば、なんてことはない。
『この国で最も穢れなき魂の娘ゆえ!』とか言っときゃ~、親族にはきっと迷惑がかかるまい!!
我ながらナイスアイデア!!
(……もし『聖女』とかだったとしても、いい選択を与えられるとは限らないな)
『生贄』とか『操を捧げろ』とか……逆に『生涯神に操を捧げろ』とかの無茶ブリをされるかもしれん。
……その時も魔女に身体を乗っ取られた事にして逃亡しよう。
うん、そうしよう。
そんなことを考えてるうちに、王がやってきた。
威厳に満ちたイケオジ(王)が、神妙な面持ちで語る。
──それは驚くべき内容だった。




