とりあえず無双もしたけど、この先どうしよう!
聖剣を手にした私は、もう無敵中の無敵。
水を得た魚。
チート中のチート。
『聖剣を手にした私』と言ったが、聖剣を使ってたのは最初だけで、後はほぼ手刀……だって邪魔臭いんだもん。
試しに『ほわたぁ~!(私)』とやってみたら『あべしっ!!(敵)』と倒れたので、途中からは指だった。
正直ダンジョンなんかじゃ物足りない。
私の特殊能力には魔物を『テイム』する能力はないようだが、怖れ戦いた魔物の方から
『姉御! 自分を下僕にしてつかぁさい!!!』
……等と言われるので、仲間(下僕)がいっぱいできた。
無益な殺生、よくない。
殿下は私を非常に熱の籠った眼差しで見詰めるようになった。
──ただしそれは、敬愛の眼差しだが。
彼は以前の様に私を『ルビー』とは呼んでくれず……『勇者殿』と呼ぶようになってしまった。
超~キラキラした瞳で。
(フム…………これからどうすべきか)
もうすぐダンジョンも塞がれてしまう。
(それこそ『聖女』にジョブチェンジでもしようかな……?)
折角魔物仲間が沢山できたのだ。
聖殿に仕える体で、ダンジョンを完全には塞がずダンジョン経営……
というか、綺麗どころを集めて『異世界居酒屋』を開き、その収益でスローライフでも送ったろうか……
等と考えたりもしたが……
──急に夢を見た。
「咲……早く起きて頂戴」
心配かけてごめん、お母さん。
「咲、お前の誕生日に好きなゲーム買ってやるぞ! 早く起きろ!!」
マジで?! お父さん!!
「咲、ほら、バナナだぞ?」
いや、別に好きじゃないけど?!
なんでバナナなの?! お兄ちゃん!!
(……思い出した)
色々、思い出した。
前世……じゃなくて、『間 咲(16)』の記憶。というか、おそらく、今。
目を覚ました私は泣いていた。
「……どうしたのだ? ルビー……」
「殿下……」
私はもう公爵家からは出た身だ。
『勇者』として生きる為に。
──なので、野営をしている。
聖殿跡地付近で。
『間 咲』の記憶など、まざまざと思い出すべきではなかった。
今……猛烈に風呂に入りたい。
あと、風呂上がりにコーラ飲みたい。
(……公爵家の皆とも思い出はあるけど)
長谷部氏で『いなかったことになる』ってわかってるからなぁ……
(ダンジョンの入口は……まだ開いてるけど……後1日2日で閉じれる位か……)
私が散々無双したので、私の記憶がなくとも暫くは恐怖で出てこないんじゃないかな~と思う。
よし!
ダンジョンは、このまま塞ごう!!
(ちょっと里心が出てしまった……)
だがまだ記憶は明確でもなく、どうでもいいことばかりが強い。
家族のことは、記憶にあるのに……何故か涙が出る程リアルに感じたのは起き抜けだけだった。
──長谷部氏とは大分違う。
(もしかして……この世界に馴染みすぎたのかな?)
良くはわからないが、これは危険な気がする。
もうきっと、帰った方がいい。
……殿下の台詞で帰れるのか?
試してみようと思って殿下を見ると、ブルーの瞳が心配そうにこちらを覗いていた。
……そういやさっき、久し振りに『ルビー』って呼ばれた気がする。
副題は私の気持ちかもしれない……




