僕は夢を見た(27) 街に皇女がやって来た
いつもの城門の前に立つ僕。
昨日までこの街の名前すら知らなかった。
今日は何をどうしようかと悩む。
お姫様が僕に会いに来たという事は、いつ呼ばれてもいいように騎士宿舎にいるべきだろうって事は分かっていた。
騎士宿舎へと向かって歩き始める。
途中、八百屋の前を通りかかり、リズの親父さんに挨拶をする。
よしひろう:「おはようございます!」
リズの親父さん:「おぅ!おはよう!」
よしひろう:「お姫様が来たの知ってます?」
リズの親父さん:「あったりめえだ!街中大騒ぎだからな!がはは」
八百屋を離れ求人板のある広場まで来た。
よしひろう:「街中大騒ぎか…」
王直属の騎士が50人も来ただけの事はあったみたいだ。
普段なら求人板の周辺は柄の悪そうなのがたむろしていたが、今では一切見なくなっていた。
よしひろう:「すげーな、姫様。」
と呟きながら、泊まっているだろう宿屋の三階をチラッと見る。
その場を通りすぎ騎士宿舎へと着いた。
いつもとは雰囲気が違う。
何かこう何て言えばいいのか…張りつめた空気とでも言えばいいのか。
そんな空気が漂っていた。
守衛:「こんにちは。」
よしひろう:「ちわっす~。」
守衛:「宿舎に入るのなら名前を書いていってください。」
よしひろう:「え?マジで?」
守衛:「(姫様がいる間だけですから)」
うんうんと頷き記名をする僕。
部隊長室前に行きノックをする。
アスター隊長:「誰か?」
よしひろう:「よしひろうです。」
アスター隊長:「入れ。」
部隊長室に入るとアスター隊長と、もう一人の男が居た。
軽く会釈をするとその男が話しかけてきた。
男:「君が噂のよしひろう殿か。」
よしひろう:「噂になってるんですか?」
と苦笑いする僕。
男:「私は王国騎士団の副隊長を任されているウォレスです。」
ウォレス副隊長:「よろしくお見知りおきを。」
笑顔で手を差し出してきた。
僕も手を差し出し握手をする
ウォレス副隊長:「山賊討伐での見事な働きを私も直に見たかったよ。」
なんだかエラく誇張されてるんじゃないか疑惑がわいてきた。
レンジャーさんはどんな報告をしたんだろうかと心配になってくる。
山賊討伐の時の事をアスター隊長、ウォレス副隊長、僕の3人であれやこれやと話をしていると時間がすぐに過ぎて、気がつくと夕刻になっていた。
そこにノックの音が。
アスター隊長:「誰か?」
男:「王国騎士団のアオザです。」
アスター隊長:「入れ。」
アオザ:「報告します。」
アオザ:「山賊残党がエリザベート様を襲撃するとの噂があります。」
一瞬その場の空気が凍りつく。
ウォレス副隊長:「至急警備を強化せよ!」
とアオザに命令し、部屋を出ていくウォレス副隊長。
アスター隊長も武装しながら部屋を飛び出して行った。
その場に独り取り残される僕。
よしひろう:「そうだ!僕にしかできない事で援護しよう。」
僕も急ぎ騎士宿舎を出て、飛翔して宿屋へと向かう。
あっという間に宿屋上空へとたどり着く。
眼下には宿屋の屋根と周りの路地が一望できた。
ここからなら賊がいればすぐに発見できるはずだ。
僕の姿を見て賊と勘違いして騒いでいる騎士が数名いたが、アスター隊長が味方だと説明してくれたようで、その騒ぎもすぐに収まった。
今では宿屋の周囲は騎士だらけになっている。
よしひろう:「来るなら来い!」
と上空で目を凝らす。
夕闇がどんどん迫ってくる。
一番星が見え始めた。
よしひろう:「あれ?賊が来る気配すらないぞ?」
と宿屋の裏路地に降り立つ。
うーんと首を傾げていると、突然背後から肩を掴まれた。
ビクッとする僕。
振り向くとそこにはレンジャーが居た。
レンジャー:「久しぶりですな、よしひろう殿」
よしひろう:「お、お久しぶりです。」
と言いつつも四人のうちの誰だかは分からないんだが…
レンジャー:「姫様がよしひろう殿の事を呼んでおられるようなのでな。」
レンジャー:「行って差し上げてもらえぬだろうか?」
よしひろう:「エリザベート様がですか?」
うむと頷くレンジャー。
レンジャー:「ここは我らにお任せを。」
そう言うと闇にスゥーっと消えていくレンジャー。
僕は表へと廻り宿屋に入っていった。
するとメイドの一人が僕に気づいたらしく手招きしてくる。
メイドとともに三階へと上がり、一番奥の部屋の前に立つ。
メイドがノックをする。
中から別のメイドの声がした。
メイドA:「どなたですか?」
メイドB:「よしひろう様をお連れしました。」
メイドA:「中へどうぞ。」
部屋の中へ通される僕。
そこには就寝前に髪をといてもらっているエリザベートが居た。
僕に気がつくと笑顔で手招きをしてくるエリザベート。
エリザベート:「お前達は下がってよい。」
とメイド達に命令する。
メイドA:「ですが…」
と僕の事をチラッと見るメイド。
どうやら警戒されているようだ。
エリザベート:「よいと言ったらよいのじゃ!」
そう言われて渋々退室するメイド達。
初めて会った時の淑やかさは演技だったのだろうか。
思った事をハッキリという闊達な娘だなと感じる僕。
二人っきりになった。
ベッドに入るエリザベート。
そしてベッド脇の椅子に座れと手で合図する。
椅子に座る僕。
エリザベートから話し始めた。
エリザベート:「よしひろうは空を飛べるというのは本当か?」
よしひろう:「はい。本当ですよ姫様。」
エリザベート:「空を飛ぶというのはどんな感じじゃ?」
うーんと返事に困る僕。
よしひろう:「ふんわりと雲になったような感じでしょうか。」
よしひろう:「身体中で風を感じられて心地良いですよ。」
エリザベート:「どこまで高くとべる?」
空を飛ぶ事に関心があるようで質問攻めに遇う。
二時間ほど話をしたところでノックがした。
メイド:「そろそろ就寝のお時間でございます。」
エリザベート:「もうそんな時間か…」
と寂しそうな顔をする。
エリザベート:「明日も来てちょうだい!」
エリザベート:「次はよしひろうの冒険の話を聞きたいわ。」
そう言いつつ僕の手を握るエリザベート。
よしひろう:「はい。姫様。」
よしひろう:「それではまた明日です。」
よしひろう:「おやすみなさい。」
エリザベート:「おやすみなさい。」
僕はエリザベートの部屋を出て城門前まで歩いた。
城門前の石に座ってエリザベートの事を考える。
明日はどんな話をしようか…
逆に彼女の話を聞きたいな…
空を見上げると星が瞬いていた。
意識が薄れていく。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。




