僕は夢を見た(28) 街に皇女がやって来た
いつもの城門の前に立っている僕。
いつものように騎士宿舎へと向かう。
途中、八百屋でリズの親父さんに挨拶する。
いつもの事だ。
中央広場の求人板に目を通す。
不穏な事件や依頼は無いようだ。
向かいのエリザベート様の泊まっている宿屋を見る。
騎士達が四隅に各2名づつ警護に当たっていた。
昨日の襲撃の噂の影響がまだ残っているようだった。
広場を後にし、騎士宿舎へと入る僕。
よしひろう:「ちわーっす。」
守衛:「こんにちは。」
よしひろう:「守衛さんも大変ですね。」
と言いながら入室簿に記名をする。
アスター隊長の居る部隊長室へと行く。
ノックする僕。
アスター隊長:「誰か?」
よしひろう:「よしひろうです。」
アスター隊長:「入れ。」
入室する。
アスター隊長が笑顔で迎えてくれた。
アスター隊長:「昨日は姫様とお会いしたのだろ?」
アスター隊長:「どうだった?」
よしひろう:「質問攻めにあいました(苦笑)」
よしひろう:「あの姫様、見かけによらず、お転婆娘さんだと思います。」
アスター隊長:「そうなのか?(笑)」
アスター隊長:「しかし、姫様に満足していただけたのなら何よりだな。」
と僕の肩に手を置くアスター隊長。
どうやらアスター隊長には僕のことが好印象だったと報告されているようだった。
よしひろう:「今日も呼ばれていますので、連絡があれば姫様に会いに行くうもりです。」
うむと頷くアスター隊長。
よしひろう:「でも、昨日呼ばれたのは夕刻になってからでしたよね?」
よしひろう:「昼間は何をされてたのでしょうか?」
うーんと首を傾げるアスター隊長。
アスター隊長:「姫様に直接聞いてみてはどうか?」
よしひろう:「ですよねー(苦笑)」
よしひろう:「では、お呼びがかかるまで武道場に居ます。」
よしひろう:「失礼します。」
と部隊長室を後にし、武道場へと行く。
姫様の警護に出ているのか、誰もいなかった。
独りクナイ投げの練習をする僕。
リールの扱いにも大分慣れてきた。
手元でグルグルとクナイを回しながら投げたり、大きく弧を描くように振り回したり。
色々と使い道はあるようだ。
すると突然後ろから声をかけられた。
レンジャー:「よしひろう殿」
ビクッとする僕。
いつもながら心臓に悪い。
レンジャー:「見事な武器ですな。」
レンジャー:「私にも使わせてもらえぬか?」
快く承諾する僕。
レンジャーにベルトごとクナイリールを渡す。
それを装着し身構えるレンジャー。
レンジャー:「危ないので離れておいてくだされ。」
クナイリールをブンブン振り回しながら的を射抜いていくレンジャー。射抜くやいなやワイヤーを引きクナイを的から抜く。
動きを見ていたが、僕とは比較になら無いほど凄かった。
一通り試して満足したのかベルトを返してくるレンジャー。
レンジャー:「なかなかに見事な仕組みですな。」
レンジャー:「我々の装備の参考にさせていただく。」
と笑みを浮かべるレンジャー。
レンジャーに誉められ有頂天になる僕。
よしひろう:「でしょ!売れたら著作権料貰えますか?」
レンジャー:「ちょさくけん?」
どやらこの世界には著作権は無いらしい。
がっかりする僕。
そうこうしているうちに夕刻が近づいて来た。
太陽が城壁に隠れ、街が薄暗くなっていく。
武道場に守衛がやって来た。
守衛:「よしひろうさん、姫様のメイドがよしひろうさんを呼びに来ていますよ。」
姫付きのメイドが僕を迎えに来たことを告げに来てくれたのだ。
よしひろう:「それじゃ、レンジャーさん、行ってきますね。」
と言って横を見ると、そこに居たハズのレンジャーの姿は既に無かった。
守衛:「誰と話しているんです?」
と怪訝な顔をする守衛さん。
よしひろう:「いや…あはは」
笑って誤魔化す。
よしひろう:「そんな事よりメイドさんだよ!」
と慌てて騎士宿舎の入り口に向かう。
着くとメイドが一人、門の所で待っていた。
僕に気がつくと一礼するメイド。
よしひろう:「お待たせしました。」
メイド:「姫様の我儘につきあって頂き、ありがとうございます。」
メイド:「私供も心より感謝しております。」
よしひろう:「いえ、僕も姫様とお話できて光栄です。」
などと話しているうちに宿屋に着いた。
三階へと上がり一番奥の部屋へと向かう。
ノックをするメイド。
メイドA:「どなた?」
メイドB:「よしひろう様をお連れいたしました。」
メイドA:「お入りください。」
中に入ると姫様は既に髪を解かし終わりベッドにチョコンと座っていた。
エリザベート:「お前達はお下がり。」
とメイド達に命じる。
一礼して退室するメイド達。
二人っきりになった。
ここに座れとばかりにベッド横の椅子を叩くエリザベート。
促されるままそこに座る僕。
見ると、ベッドの上に一匹の猫がいた。
真っ白で青い瞳の可愛い猫だった。
よしひろう:「姫様は猫を飼ってるんですね。」
エリザベート:「可愛いでしょ?」
エリザベート:「名前はエクスカリバー。」
よしひろう:「エクスカリバー!」
なんとも仰々しい名前だなと思いつつ話を続ける。
よしひろう:「姫様は昼間は何をしてらっしゃるんですか?」
エリザベート:「勉強よ。勉強ばっかり。」
エリザベート:「せっかく外遊に出たのに外にも出られないなんて!」
とかなりご不満の様子。
エリザベート:「よしひろうの話を聞けるのだけが唯一の楽しみだわ。」
よしひろう:「そう言って戴けるだけで光栄です。」
エリザベート:「今日はどんな話をしてくれるのじゃ?」
よしひろう:「大ムカデを退治した話をいたしましょう。」
エリザベート:「おぉ!」
目を輝かせるエリザベート。
よしひろう:「この街の八百屋にリズという姫様と同じ年頃の娘がいまして、その娘から…」
と事の始めから話聞かせていた頃、階下ではとんでもない事件が起きていた。
山賊の残党がエリザベートを狙って攻めて来たのだ。
4人ずつの8人で入り口を警護していた騎士の相手をし、残りの全員が宿屋の入り口目掛けて押し寄せてきた。
入り口にスゥーっと音もなく現れるレンジャー。瞬く間に6人を切り伏せる。
残りの山賊と切り結んでいる隙を突かれ、十数人の山賊が宿屋の中へと雪崩れ込んで来る。
セナ:「ここから先には行かせん!」
とセナが宿屋中央の階段前に立ちはだかる。
そのセナの前に一人の姫様付きのメイドが歩みを進めた。
メイドに襲いかかる山賊達。
セナ:「危ない!退いてください!」
と言った瞬間、メイドの振り下ろした手から得物が飛び出した。
賊の剣をトンファーで受けつつそれを叩き込むメイド。
あっという間に5人をなぎ倒した。
セナ:「嘘…でしょ…!?」
その鮮やかな動きに驚愕の眼差しを向けるセナ。
メイド:「姫様のいらっしゃるこの館内での流血は許しません。」
圧倒的な強さに呆然となるセナと山賊達。
慌てて逃げ出す山賊達。
宿屋を出ると、そこには入り口付近の山賊を全て葬り去ったレンジャーが立っていた。
その場にヘタリ込む山賊達。
降伏した山賊は13人。
総勢では29人。
生きている者は捕らえられ何処かに運ばれていった。
エリザベートを殺すつもりだったのか、それとも人質にして恩赦を得るつもりだったのかは今となっては誰にも分からない。
連行された山賊達のその後の姿を見た者は誰もいないのだから…
部屋の外からノックとともにメイドの声が聞こえてきた。
メイド:「姫様、そろそろ就寝の時間でございます。」
エリザベート:「え~、もうそんな時間か?」
と不満げな姫様。
エリザベート:「明日も来てくれ!」
と立ち上がり僕の手を握る姫様。
顔が近い。というか、前屈みになっているせいで、胸元がはだけて谷間が見えている。
目のやり場に困る僕。
よしひろう:「仰せのままに。」
よしひろう:「では、また明日。」
と笑顔で答え、退室する。
階段を降りると宿屋の入り口にセナとメイドが立っていた。
よしひろう:「どうしたの?」
セナ:「何でもない!何でもない!」
と慌てたように取り繕うセナ。
よしひろう:「?」
宿屋を出て城門前へと向かう。
途中、特に変わった所は無かった。
城門前の石に座り、満天の星空を眺めながら明日はどんなですけど話をしようかと考える。
意識が薄れてきた。
目が覚めた。
横ではスマートフォンのアラームが鳴っている。
慌ててアラーム止める。
今日も仕事だ。




