第40話 帰還勇者、Lv5到達と新たな冒険への扉
東草原で発見された地下通路の調査が進んでいると聞いた翌日、俺――《ミナト》たちは、いつものように冒険者ギルドを訪れていた。
ギルドの掲示板には、地下通路に関する注意書きが新たに貼り出されている。入口周辺は調査隊によって管理されており、許可のない冒険者の立ち入りは禁止されていた。
「ねえ、ミナト。あの地下通路、本当にダンジョンなのかな?」
隣で掲示板を見上げていたユウキが、興味津々といった様子で尋ねてきた。
「可能性はあるけど、まだ分からないな。ジェイドさんも内部の調査はこれからだって言っていたし」
「もしダンジョンだったら、三人で攻略してみたいですね」
シルフィーが微笑む。
「ああ。そのためにも、まずはLv5だな」
俺たちは現在Lv4。昨日のスライム討伐で経験値は増えたものの、レベルアップにはあと少し足りなかった。
掲示板を確認していると、受付のリーナが声をかけてきた。
「ミナトさん、皆さん。今日は討伐依頼をお探しですか?」
「うん。Lv5を目指して、無理なく受けられる依頼があればと思って」
「それでしたら、こちらはいかがでしょう?」
リーナが差し出したのは、北西の草原で確認されたウルフの討伐依頼だった。
『《北西草原・ウルフ討伐》』
討伐対象は《ウルフ Lv4》五匹。推奨レベルはLv4以上で、報酬と経験値も現在の俺たちには十分な内容だった。
「北街道の警戒区域とは別の場所なんだな?」
俺が確認すると、リーナは頷いた。
「はい。今回の討伐地点は北西側の草原です。先日発見された大型の足跡がある区域からは離れています。ただし、魔物の移動が続いていますので、十分に注意してください」
「分かった。二人とも、これでいいか?」
「うん! 五匹なら頑張れそう!」
「私も賛成です」
こうして俺たちは依頼を受注し、北西の草原へ向かうことになった。
街を出る前に回復ポーションを補充し、装備の耐久値も確認する。《鋼鉄の片手剣》はまだ十分に使える状態で、シルフィーの《魔晶石の杖》とユウキの《祈りの杖》にも問題はなかった。
準備を終えたところで、俺はLIVE配信を開始した。
「こんばんは、ミナトです。今日は北西草原でウルフ五匹の討伐に挑戦します。三人ともLv5まであと少しなので、頑張っていきます」
すぐにコメントが流れ始める。
『ミナト先生きた!』
『今日はレベル上げか!』
『地下通路の続報も気になる』
『三人ともLv5になれるといいね!』
ユウキが笑顔で手を振り、シルフィーも丁寧に挨拶した。
北西の草原は、南街道とは少し雰囲気が違っていた。緩やかな丘が続き、ところどころに低い木々が生えている。視界を遮る場所もあるため、魔物の接近には注意が必要だった。
「まずは周囲を確認しながら進もう」
俺がそう告げると、二人は頷いた。
しばらく歩いたところで、丘の向こうから二匹のウルフが姿を現した。
『《ウルフ Lv4》』
「二匹だな。俺が一匹を引きつける。シルフィーはもう一匹を頼む。ユウキは後方から支援してくれ」
「はい、隼人」
「任せて!」
俺は剣を抜き、前へ出た。
ウルフは低く唸ると、勢いよく地面を蹴った。鋭い牙がこちらへ迫るが、俺は半身になって攻撃をかわす。
すれ違いざまに《鋼鉄の片手剣》を振り抜くと、ウルフのHPが大きく減少した。
しかし、一撃では倒れない。
相手が振り返る前に距離を取り、次の突進を待つ。再び飛びかかってきたところで横へ踏み込み、首元へ剣を走らせた。
『《ウルフ Lv4》を討伐しました』
一方、シルフィーは《ストーンバレット》でウルフの動きを鈍らせ、ユウキの《ホーリーライト》と連携して倒していた。
『討伐進捗:2/5』
「いい感じだね!」
ユウキが嬉しそうに笑う。
「ああ。ただ、まだ三匹いる。周囲の警戒を続けよう」
その後、俺たちは丘の斜面で一匹、低木の近くで二匹のウルフを発見した。
単独の個体は俺が引きつけ、二匹同時に現れた時はシルフィーの魔法で片方を牽制する。ユウキも回復と攻撃を使い分け、無理のない戦闘を続けた。
最後の一匹が光の粒子となって消えたところで、依頼達成の通知が表示された。
『討伐進捗:5/5』
『依頼達成条件を満たしました』
「やったー! これで五匹だね!」
「ああ。あとはギルドへ報告するだけだ」
俺たちはドロップアイテムを回収し、始まりの街へ戻った。
冒険者ギルドに到着すると、リーナが笑顔で迎えてくれた。
「お帰りなさい、皆さん。依頼は無事に終わりましたか?」
「うん。ウルフ五匹、討伐完了だよ」
俺が討伐記録を提示すると、リーナは内容を確認し、報酬の受け取り手続きを進めた。
「はい、確かに確認できました。依頼達成です!」
その瞬間、俺の視界に新しい通知が表示された。
『経験値を獲得しました』
『レベルアップ!』
『ミナト Lv4 → Lv5』
「おっ!」
思わず声が出た。
ステータス画面を開くと、確かにレベルが一つ上がっている。
「二人とも、俺はLv5になったぞ!」
「本当ですか?」
シルフィーが自分のステータスを確認する。
すると、彼女の表情も明るくなった。
「私もです! Lv5になりました!」
「えっ、じゃあ私も……!」
ユウキが慌てて画面を開く。
次の瞬間、嬉しそうな声がギルド内に響いた。
「やったー! 私もLv5だよ!」
どうやら三人とも、今回の依頼達成によってLv5へ到達したらしい。
俺たちは顔を見合わせ、思わず笑い合った。
「これで全員Lv5だな」
「うん! ようやくここまで来たね!」
「これから受けられる依頼も増えそうですね」
シルフィーの言葉に、俺は頷いた。
異世界で魔王を倒した時の俺たちと比べれば、今の能力はまだまだ低い。それでも、三人で少しずつ成長していくのは楽しかった。
配信コメントも祝福の言葉で埋まっている。
『三人同時Lv5おめでとう!』
『ミナト先生、順調だな!』
『シルフィーさんもユウキちゃんもおめ!』
『これで地下通路の調査に参加できる?』
そのコメントを見たところで、俺はリーナへ尋ねた。
「そういえば、東草原の地下通路はどうなったんだ?」
「ちょうど先ほど、調査隊から新しい報告が届いたところです」
リーナはそう言うと、受付の奥へ視線を向けた。
そこから現れたのは、ギルドマスターのジェイドだった。
「おう、ミナト。三人ともLv5になったそうだな」
「ああ。たった今な」
「それはいい知らせだ。実は、こちらからも話がある」
ジェイドは一枚の書類を取り出した。
「東草原の地下通路について、入口から一定の範囲まで調査が進んだ。内部には古い石造りの通路と、魔物の反応が確認されている」
「やっぱり、何かがあるんだな」
「ああ。そして、調査員の報告から、あの場所はダンジョンである可能性が高いと判断された」
ユウキが目を輝かせた。
「ダンジョン! 本当にあるんだ!」
ジェイドは頷いた。
「ただし、内部の構造や魔物の配置はまだ不明だ。安全が確認されたわけではない。そこでギルドでは、Lv5以上の冒険者を対象に、入口付近からの探索依頼を募集することにした」
俺は思わず書類へ目を向けた。
そこには、新しい依頼の概要が記されていた。
『《東草原・未確認地下遺構の探索》』
『参加条件:Lv5以上』
『目的:地下遺構内部の地形確認および魔物の情報収集』
『注意:未調査区域への無理な進入は禁止』
「どうだ、ミナト。お前たちも興味があるんじゃないか?」
ジェイドが笑みを浮かべる。
俺はシルフィーとユウキを見た。
シルフィーは穏やかに頷き、ユウキは期待に満ちた表情でこちらを見つめている。
「もちろん興味はあるよ。ただ、初めての場所だからな。準備を整えてから挑戦したい」
「それでいい。焦る必要はない。受付で詳しい説明を受けて、必要な装備を揃えておけ」
俺は頷き、書類を受け取った。
東草原で発見された謎の地下通路。
その奥には、いったい何が待っているのだろうか。
異世界では数え切れないほどの迷宮を攻略してきたが、このゲームでのダンジョン探索は初めてだ。
だからこそ、少し楽しみでもあった。
「よし、二人とも。明日は探索の準備をしよう」
「うん! 楽しみだね!」
「はい、隼人。三人で力を合わせましょう」
こうして俺たちは、始まりの街での冒険を通じてLv5へ到達し、新たな挑戦への資格を手に入れた。
剣も魔法も本物を知っている帰還勇者として、俺はこれからも仲間と一緒に、この世界を冒険していく。
そして次に待っているのは、初めてのダンジョン攻略だ。
俺たちの本当の冒険は、まだ始まったばかりなのだから。
第一章〈帰還勇者、VRMMOを始める〉完
次章:第二章〈帰還勇者、初めてのダンジョン攻略〉第1話へ続く。




