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帰還勇者ミナトのVRMMO戦記 ~剣も魔法も本物を知っているので、ゲームでも最強です~  作者: バモス
第一章 帰還勇者、VRMMOを始める

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第38話 ビッグスライムとの遭遇と、帰還勇者の剣技

南街道の草原に現れた巨大なスライムを前に、俺――《ミナト》は慎重に剣を構えた。


視界に表示された名前は《ビッグスライム Lv5》。これまで倒してきた通常のスライムより一回り以上大きく、半透明の身体の中心には濃い青色の核が浮かんでいた。


「ミナト、あれって普通のスライムより強いんだよね?」


ユウキが杖を握り直しながら尋ねてきた。


「ああ。俺たちはLv4だから、ステータスでは相手が上だ。まずは動きを確認しよう」


隣に立つシルフィーも、ビッグスライムを注意深く観察していた。


「隼人、あの核が気になります。通常のスライムより魔力の流れが強いように見えますね」


「俺もそう思う。ただ、弱点かどうかは試してみないと分からないな」


ビッグスライムは俺たちの存在に気づいたのか、身体を大きく膨らませた。


次の瞬間、その巨体が勢いよく跳ね上がる。


「二人とも、下がれ!」


俺の声に反応し、シルフィーとユウキが左右へ飛び退いた。


直後、ビッグスライムが地面へ落下する。


ドンッという鈍い音とともに土が跳ね上がり、周囲の草が押し潰された。


「うわっ! あんなに跳べるの!?」


ユウキが驚いた声を上げる。


「身体が大きい分、着地までに時間がある。動きを見れば避けられるはずだ」


俺はそう答えながら、相手との距離を測った。


異世界でも大型のスライムと戦った経験はある。しかし、このゲームの魔物が同じ性質を持っているとは限らない。


まずは一撃を加え、反応を確かめることにした。


「シルフィー、魔法で牽制してくれ。ユウキは回復を優先。無理に攻撃しなくていい」


「分かりました」


「うん、任せて!」


シルフィーが《魔晶石の杖》を構える。


「《ストーンバレット》!」


放たれた石弾がビッグスライムの側面へ命中した。


『HIT』


HPバーがわずかに減少する。


だが、スライムはすぐに身体を震わせ、シルフィーの方へ向きを変えた。


「こっちだ!」


俺は素早く間合いを詰め、《鋼鉄の片手剣》を振り下ろした。


刃が半透明の身体へ食い込み、確かな手応えが伝わる。


『HIT』


しかし、予想していたほどHPは減らなかった。


「物理攻撃には少し耐性があるのか……?」


俺が考えた瞬間、ビッグスライムの身体が横へ大きく広がった。


嫌な予感がして、すぐに後方へ跳ぶ。


直後、身体の一部が鞭のように伸び、先ほどまで俺が立っていた場所を薙ぎ払った。


「ミナト!」


「大丈夫だ!」


俺は着地と同時に体勢を整えた。


攻撃範囲は通常のスライムより広い。しかも、身体の形を変えられるため、見た目だけで間合いを判断するのは危険だった。


視界の端では、配信コメントが勢いよく流れていた。


『でかいスライムきた!』


『Lv5ってことは格上か』


『ミナト先生でもダメージ少ないな』


『あの触手みたいな攻撃、厄介そう』


俺はコメントを追う余裕を残しつつ、二人へ指示を出した。


「シルフィー、今度は火属性を試してくれ!」


「はい! 《ファイアボール》!」


杖の先端から火球が放たれ、ビッグスライムの身体へ直撃した。


『WEAK HIT』


先ほどよりも大きくHPが減少する。


「火属性が有効みたいです!」


「よし! なら、魔法を中心に攻めよう!」


俺は剣を構え直し、相手の注意を引きつける。


ビッグスライムが再び跳び上がったところで、着地点を予測して横へ移動した。


大きな身体が地面へ落ちた瞬間、俺は側面へ回り込む。


狙うのは中心部に浮かぶ青い核だ。


ただし、剣が届くかどうかは分からない。


俺は踏み込みと同時に突きを放った。


「はっ!」


鋼鉄の剣先がスライムの身体を貫き、核の手前まで到達する。


しかし、あとわずかというところで刃が押し戻された。


「……届かないか!」


ビッグスライムが身体を震わせ、反撃してくる。


俺は剣を引き抜き、後方へ退避した。


その時、ユウキが声を上げた。


「ミナト! 少しHPが減ってるよ!」


確認すると、先ほどの攻撃を避けた際に飛び散った液体で、わずかにダメージを受けていたらしい。


「大したことはないけど、頼む!」


「うん! 《ヒール》!」


温かな光が俺の身体を包み、HPが回復する。


新しく購入した《祈りの杖》のおかげか、回復量にも余裕があった。


「ありがとう、ユウキ!」


「どういたしまして!」


俺たちは再びビッグスライムへ向き直った。


敵のHPはすでに半分近くまで減っている。


だが、こちらのMPにも限りがある。長期戦になれば不利になる可能性もあった。


「シルフィー、あと何発くらい撃てる?」


「《ファイアボール》なら、まだ数回は使えます」


「分かった。次の攻撃に合わせて一気に削ろう」


俺はビッグスライムの正面へ立ち、剣を構えた。


相手は身体を大きく縮め、再び跳躍の準備を始める。


俺はその動きを見逃さなかった。


「今だ、シルフィー!」


「《ファイアボール》!」


ビッグスライムが跳び上がった瞬間、火球がその身体へ命中した。


『WEAK HIT』


空中で体勢を崩したスライムは、予定していた位置より手前へ落下する。


俺は落下地点を避けながら、素早く側面へ回り込んだ。


身体が大きく揺れ、内部の核が一瞬だけ表面近くへ移動する。


その隙を逃すつもりはなかった。


俺は余分な力を抜き、踏み込みと同時に鋭い突きを放つ。


「そこだ!」


剣先が半透明の身体を貫き、青い核へ命中した。


『CRITICAL HIT!』


大きなダメージ表示が現れ、ビッグスライムのHPが一気に減少する。


しかし、まだ倒れない。


残りHPはわずかだった。


「ユウキ、いけるか!」


「うん! 《ホーリーライト》!」


ユウキが放った光の弾が、核の近くへ直撃する。


ビッグスライムの身体が大きく震え、次の瞬間、光の粒子となって消えていった。


『《ビッグスライム Lv5》を討伐しました』


『経験値を獲得しました』


『アイテム《大型スライムの核》を入手しました』


「やったー!」


ユウキが嬉しそうに声を上げた。


シルフィーも杖を下ろし、安堵したように微笑む。


「無事に倒せましたね、隼人」


「ああ。二人のおかげだよ」


俺は剣を鞘へ戻し、周囲の安全を確認した。


ビッグスライムは確かに強かったが、三人で役割を分担したことで、無理なく戦うことができた。


配信コメントも盛り上がっている。


『ビッグスライム討伐おめ!』


『最後の突きすごかった!』


『ユウキちゃんのとどめもナイス!』


『三人の連携、どんどん良くなってるな』


俺はコメントへ礼を告げながら、ドロップした《大型スライムの核》を確認した。


通常のスライムから手に入る素材とは違い、青みがかった大きな結晶だった。


「これ、ギルドで調べてもらった方がいいかもしれないな」


俺がそう言うと、シルフィーも頷いた。


「はい。先ほど見つけた移動の痕跡についても報告した方がよさそうです」


ユウキは依頼の進捗画面を確認していた。


「ねえ、ミナト。ビッグスライムは倒したけど、依頼の討伐数はまだ五匹のままだよ」


「本当だな。どうやら通常のスライムとは別扱いらしい」


今回の依頼は《スライム Lv3》を八匹討伐するものだ。


ビッグスライムを倒したからといって、依頼が達成されるわけではなかった。


「残り三匹か。MPも減っているし、少し休憩してから続けよう」


「賛成!」


ユウキが元気よく頷いた。


俺たちは街道沿いの安全な場所へ移動し、周囲を警戒しながら休憩を取ることにした。


その間、俺は先ほどの戦闘を振り返っていた。


Lv5のビッグスライムは、普通のスライムとは明らかに違う動きをしていた。


ただ大きいだけではなく、攻撃方法も多彩だった。


そして、南東から西へ続いていた不自然な移動の痕跡。


あのビッグスライムが残したものなのか、それとも別の魔物が通った跡なのかは分からない。


俺は草原の向こうを見つめながら、静かに息を吐いた。


東草原の地下通路、北街道の大型ウルフ、そして南街道のビッグスライム。


異変は確実に広がっているように見える。


だが、今は目の前の依頼を終わらせることが先決だ。


「よし、二人とも。休憩が終わったら残り三匹を探そう」


「はい、隼人」


「うん! あと少しだね!」


俺たちは再び装備を整え、南街道の草原へ向かって歩き始めた。


こうして、Lv4となった俺たちの新たな冒険は、まだ続いていくのだった。


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