↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還勇者ミナトのVRMMO戦記 ~剣も魔法も本物を知っているので、ゲームでも最強です~  作者: バモス
第一章 帰還勇者、VRMMOを始める

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/36

第35話 冒険者ギルドからの特別依頼

翌日の放課後、俺――皆川隼人は、幼馴染の敷谷優花と一緒に帰宅していた。


昨日、ゲーム内で冒険者ギルドのギルドマスター、ジェイドから街道周辺の安全確認を頼まれた。今日はその詳しい説明を受ける予定になっている。


「ねえ、隼人。昨日の依頼って、普通の討伐依頼とは違うんだよね?」


隣を歩いていた優花が尋ねてきた。


「ああ。魔物を倒すことより、街道の安全を確認するのが目的らしい。危険な場所には踏み込まないようにって話だったな」


「そっか。じゃあ、私たちでも役に立てそうだね!」


「そうだな。ただ、何かあったらすぐに引き返すぞ」


俺がそう答えると、優花は元気よく頷いた。


自宅へ戻ると、玄関ではシルフィアが出迎えてくれた。


「お帰りなさい、隼人。優花さんもいらっしゃいませ」


「ただいま、シルフィア」


「お邪魔しまーす!」


シルフィアは今日も母さんから家事を教わっていたらしい。日本の生活にも少しずつ慣れてきたようで、最近では洗濯機や電子レンジも使えるようになっている。


俺たちは学校の宿題を済ませ、夕食後にログインする約束をした。


その夜、VRMMOへログインすると、俺は宿屋の一室で目を覚ました。


装備画面を開き、昨日購入した《鋼鉄の片手剣》を確認する。訓練場で十分に感触を確かめたので、実戦でも問題なく扱えるはずだ。


一階へ降りると、シルフィーとユウキが待っていた。


「隼人、お待ちしておりました」


「ミナト、こんばんは! 今日は特別依頼だね!」


「ああ。まずはギルドへ行こう」


三人で宿屋を出て冒険者ギルドへ向かうと、受付のリーナが俺たちに気づいて声をかけてきた。


「ミナトさん、皆さん。ギルドマスターがお待ちです。奥の部屋へご案内しますね」


リーナに案内されて執務室へ入ると、ジェイドが大きな地図を広げていた。


「おう、来たか。待っていたぞ」


ジェイドは俺たちを椅子へ座らせると、地図の北側を指さした。


「今回頼みたいのは、北街道沿いの巡回調査だ。最近、ウルフの群れが通常の生息域から離れて移動している。お前たちが見つけた群れも、その一つだろう」


地図には北門から伸びる街道と、その周囲に広がる草原や小さな林が描かれていた。


「調査範囲はここからここまでだ」


ジェイドが示したのは、北門から比較的近い街道沿いの区域だった。


「街道の先にある北東の森林深部には近づくな。あそこはまだ十分に調査できていない」


「分かった。具体的には何を確認すればいい?」


俺が尋ねると、ジェイドは地図の上に三つの印を置いた。


「この三か所に巡回用の標識がある。標識の状態と周囲の魔物の痕跡を確認してほしい。異常があれば記録して報告するだけでいい。魔物を見つけても、無理に戦う必要はない」


ユウキが興味深そうに地図を覗き込む。


「それなら、私たちでもできそうですね!」


「ああ。ただし、油断はするなよ。特に最近は魔物の行動が読みにくい」


ジェイドは真剣な表情で念を押した。


俺は地図を確認し、調査範囲を頭に入れる。


「了解した。三か所を確認して戻ればいいんだな」


「そういうことだ。報酬は調査完了後に支払う。もし危険な兆候を発見した場合は、そこで調査を中止して構わない」


依頼内容を確認した俺たちは、ジェイドから調査用の記録水晶を受け取った。


この水晶は周囲の様子を簡単に記録できる道具で、調査報告の証拠として使われるらしい。


ギルドを出た俺たちは、そのまま北門へ向かった。


「今日は配信する?」


ユウキに尋ねられ、俺は少し考えた。


「そうだな。危険な場所へ行くわけじゃないし、通常の巡回依頼なら問題ないだろう。ただし、ギルドから非公開の情報を預かったら、その部分は配信しないようにしよう」


二人も頷いたので、俺はLIVE配信を開始した。


『LIVE配信を開始しました』


しばらくすると、いつものようにコメントが流れ始める。


『ミナト先生きた!』


『今日は何するんだ?』


『三人ともLv4おめでとう!』


『新しい剣を使うところ見たい!』


俺は歩きながら視聴者へ挨拶した。


「こんばんは、ミナトです。今日は冒険者ギルドから受けた北街道の巡回依頼を進めます。魔物の討伐が目的ではないので、戦闘は少なめになると思います」


すると、ユウキが横から笑顔で手を振った。


「みんな、こんばんは! 今日もよろしくね!」


シルフィーも穏やかに微笑む。


「こんばんは。安全第一で頑張りますね」


北門を出て街道を進むと、しばらくして最初の巡回標識が見えてきた。


木製の柱に小さな金属板が取り付けられており、周囲には低い柵が設置されている。


「これが一つ目か」


俺は記録水晶を取り出し、標識へ向けた。


淡い光が広がり、標識の状態が記録される。


『巡回地点① 確認完了』


ユウキが嬉しそうに声を上げた。


「おお、簡単だね!」


「標識自体に異常はなさそうだな」


シルフィーは周囲の草むらを確認していた。


「隼人、こちらに足跡があります」


俺が近づくと、柔らかい地面に複数の足跡が残っていた。


大きさや形からして、ウルフのものだろう。


「少なくとも三匹以上だな。街道を横切って西へ向かっている」


「昨日の群れと同じ方向ですね」


「ああ。ただ、同じ群れかどうかは分からない」


俺は足跡も記録水晶へ収めた。


その後、俺たちは二つ目の巡回地点へ向かった。


途中で《ウルフ Lv3》を一匹見かけたが、こちらへ近づいてくる様子はなかったため、そのままやり過ごした。


二つ目の標識も問題なく確認できた。


『巡回地点② 確認完了』


「あと一つだね!」


ユウキが元気よく言う。


「ああ。ここまでは順調だな」


しかし、三つ目の巡回地点へ近づいたところで、俺は足を止めた。


街道脇の草が、不自然な方向へ倒れていたのだ。


「……待ってくれ」


俺が小声で告げると、二人もすぐに立ち止まった。


「どうしました、隼人?」


「何かがここを通ったみたいだ」


俺はしゃがみ込み、地面を調べた。


そこには、これまで見てきたウルフの足跡とは少し違う、大きな爪痕が残っていた。


しかも一つではない。


複数の足跡が、北東の森林方面から街道へ向かって続いている。


「これ……ウルフなの?」


ユウキが不安そうに尋ねてきた。


「形は似ている。でも、普通のウルフより一回り大きいな」


俺は慎重に周囲を見渡した。


今のところ、魔物の姿は見えない。


だが、近くの木には鋭い爪で引っかいたような傷が残っていた。


シルフィーもそれに気づいたらしい。


「隼人、あの傷をご覧ください。かなり高い位置についています」


「ああ。普通のウルフがつけたにしては高すぎる」


俺は記録水晶を取り出し、足跡と木の傷を記録した。


『周辺異常を記録しました』


その時、北東の林の奥から低い唸り声が聞こえてきた。


「……っ!」


ユウキが杖を握り直す。


俺は剣の柄に手を添えながら、二人を背後へ下がらせた。


草むらの向こうで、何か大きな影が動いた。


しかし、その姿をはっきり確認する前に、影は林の奥へ消えてしまった。


「追いかけますか?」


シルフィーが静かに尋ねてきた。


「いや、追わない。今回は調査依頼だ。それに、相手の正体も分からない」


俺は記録水晶を確認し、二人へ告げた。


「三つ目の標識はまだ確認できていないけど、ここから先は危険かもしれない。ジェイドさんの指示通り、調査を中止して戻ろう」


ユウキもシルフィーも異論はなかった。


俺たちは警戒しながら来た道を引き返した。


視界の端には、配信コメントが次々と流れている。


『今の何!?』


『普通のウルフじゃなさそう』


『ミナト先生が撤退するってことは危険なんだな』


俺は林の方を一度だけ振り返った。


北東の森林深部。


そこから移動してくる魔物たち。


そして、東草原で発見された謎の地下通路。


まだ、それぞれの異変がつながっている証拠はない。


だが、少なくとも北街道の周辺には、これまで確認されていなかった何かが現れ始めている。


「……ギルドへ戻ったら、すぐに報告しよう」


俺の言葉に二人が頷く。


こうして俺たちは、三つ目の巡回地点を目前にしながらも、安全を優先して街へ戻ることにした。


冒険者にとって大切なのは、目の前の敵を倒すことだけではない。


仲間を無事に連れて帰ることもまた、立派な仕事なのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。