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帰還勇者ミナトのVRMMO戦記 ~剣も魔法も本物を知っているので、ゲームでも最強です~  作者: バモス
第一章 帰還勇者、VRMMOを始める

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第32話 新たな依頼と、Lv4への挑戦

夕食を終えた俺――皆川隼人は、自室でVR機器の準備を進めていた。


今夜の夕食は、妻のシルフィアが母さんに教わりながら作ったカレーライスだった。家族にも好評で、特に妹の祥子はおかわりまでしていた。シルフィアも嬉しそうだったし、俺としても妻の新しい一面を見ることができて満足している。


もっとも、夕食後には母さんから「宿題は終わっているの?」と確認された。異世界で魔王を倒した勇者であっても、日本の高校生としての義務からは逃れられないらしい。


宿題を終えてからVR機器を装着すると、俺はゲームへログインした。


視界が切り替わり、宿屋の一室が現れる。ゲーム内の俺は剣士《ミナト》、現在のレベルは3だ。


装備を確認してから一階へ降りると、すでにシルフィーとユウキが待っていた。


「隼人、お待ちしておりました」


シルフィーは俺を見つけると、嬉しそうに微笑んだ。隣ではユウキが杖を抱えながら手を振っている。


「ミナト、お疲れ! 今日こそLv4を目指そうね!」


「ああ。そのつもりだ。まずはギルドで依頼を確認しよう」


三人で宿屋を出ると、始まりの街には多くのプレイヤーが行き交っていた。東草原のゴブリン討伐が話題になっているらしく、道行く冒険者たちの会話にも地下通路という言葉が頻繁に出てくる。


冒険者ギルドへ到着すると、掲示板の前にはいつも以上の人だかりができていた。


俺たちは空いている場所から依頼一覧を確認する。


「Lv3推奨の依頼は……北街道のウルフ討伐か」


依頼内容は、北街道周辺に出没する《ウルフ Lv3》を六匹討伐するというものだった。最近は群れの移動が増えており、街道を利用する商人や旅人が危険にさらされているらしい。


ユウキが依頼書を覗き込んだ。


「ウルフかあ。前にも戦ったけど、動きが速いんだよね」


「そうだな。ただ、以前より俺たちも成長している。油断しなければ十分に戦える相手だ」


シルフィーも依頼内容を確認し、静かに頷いた。


「私も問題ありません。ただし、群れの規模には注意が必要ですね」


「ああ。六匹を一度に相手にする必要はない。少数ずつ倒していこう」


依頼書を持って受付へ向かうと、エルフの受付嬢リーナが笑顔で迎えてくれた。


「ミナトさん、シルフィーさん、ユウキさん。こんばんは」


「こんばんは。今日は北街道のウルフ討伐を受けたいんだけど」


俺が依頼書を差し出すと、リーナは内容を確認した。


「《北街道のウルフ討伐》ですね。受注可能です。ただし、最近は通常の生息域から離れた場所でもウルフが確認されていますので、ご注意ください」


「やっぱり移動が続いているんだな」


「はい。原因については現在も調査中です」


リーナは少し表情を曇らせたが、すぐにいつもの笑顔へ戻った。


「皆さんの実力は存じていますが、危険を感じたら無理をせず撤退してくださいね」


「もちろん。そのつもりだよ」


依頼を受注した俺たちは、北門へ向かった。


街道を歩きながら、ユウキが俺へ話しかけてくる。


「ねえ、ミナト。今日は配信しないの?」


「そうだな。せっかくだし、久しぶりにやってみるか」


俺はメニューを開き、LIVE配信機能を起動した。


『LIVE配信を開始しますか?』


確認画面で《YES》を選択すると、配信タイトルの入力画面が現れた。


今回は《Lv3三人組、北街道のウルフ討伐へ!》にしておく。


『LIVE配信を開始しました』


しばらくすると、視界の端にコメントが流れ始めた。


『ミナト先生きた!』


『シルフィーさんとユウキちゃんもいる!』


『今日はウルフ討伐か』


『東草原の地下通路について何か分かった?』


俺は歩きながらコメントを確認した。


「こんばんは、ミナトです。今日は北街道でウルフ討伐をする予定です。地下通路については、俺たちもまだ詳しいことは分かっていません」


すると、すぐに新しいコメントが流れた。


『相変わらず落ち着いてるなあ』


『今日はミナト先生の剣術が見られるぞ!』


『ユウキちゃんの成長にも期待』


ユウキはコメントを見て嬉しそうに笑った。


「みんな、こんばんは! 今日も頑張るね!」


シルフィーも軽く会釈する。


「こんばんは。どうぞよろしくお願いいたします」


そんなやり取りをしながら北街道を進んでいると、前方の草原に灰色の影が見えた。


俺は足を止め、二人へ合図を送る。


「いたぞ。ウルフが二匹だ」


草むらの向こうには《ウルフ Lv3》が二匹いた。こちらにはまだ気づいていないようで、地面の匂いを嗅ぎながら歩いている。


「どうするの?」


ユウキが小声で尋ねてきた。


「まずは周囲を確認する。ウルフは群れで動くことが多いからな」


俺は少し離れた場所まで視線を巡らせた。


幸い、近くに別の個体はいないようだった。


「よし。シルフィーは一匹の足を止めてくれ。ユウキはもう一匹がこちらへ来たら《ホーリーライト》で牽制。俺が前に出る」


二人が頷いたのを確認し、俺は剣を抜いた。


ゆっくりと間合いを詰めると、一匹のウルフがこちらに気づいて唸り声を上げた。


次の瞬間、二匹が同時に駆け出してきた。


「《ストーンバレット》!」


シルフィーの魔法が放たれ、左側のウルフの前脚付近に命中する。体勢を崩した個体が地面へ転がる一方、もう一匹はそのまま俺へ飛びかかってきた。


俺は身体を半歩ずらして牙をかわし、すれ違いざまに剣を振るった。


『HIT』


ウルフのHPが大きく減少する。


着地したウルフはすぐに振り向こうとしたが、その動きを予測していた俺は一歩踏み込み、追撃を加えた。


『《ウルフ Lv3》を討伐しました』


残る一匹は体勢を立て直し、シルフィーへ向かおうとしていた。


「ユウキ!」


「うん! 《ホーリーライト》!」


ユウキの放った光の弾がウルフへ命中する。動きが止まったところへ、シルフィーの《ウィンドカッター》が直撃した。


『《ウルフ Lv3》を討伐しました』


『討伐進捗:2/6』


戦闘が終わると、ユウキは嬉しそうに杖を握りしめた。


「やった! 今の連携、うまくいったよね!」


「ああ。二人ともいい判断だった」


俺がそう答えると、シルフィーも満足そうに微笑んだ。


配信コメントも盛り上がっていた。


『連携が綺麗すぎる』


『ユウキちゃん、魔法のタイミング上手くなったな』


『ミナト先生、相変わらず無駄な動きがない』


俺たちはドロップアイテムを回収し、周囲を確認してから再び歩き始めた。


ところが、しばらく進んだところで、遠くの草原から複数の遠吠えが聞こえてきた。


「……今の、ウルフだよね?」


ユウキが少し緊張した声で尋ねる。


「ああ。それも一匹じゃないな」


俺は足を止め、音のした方向へ視線を向けた。


草原の向こうから、灰色の影が次々と現れる。


三匹、四匹、五匹。


さらに、その後ろにも動く影が見えた。


少なくとも八匹以上はいる。


「隼人、あの群れ……」


シルフィーが小さく声をかけてきた。


「ああ。少し様子がおかしい」


ウルフたちはこちらへ向かっているわけではなかった。


何かから逃げるように、北東の森林方面から西へ向かって走っている。


俺は剣を握り直しながら、二人へ静かに告げた。


「追いかける必要はない。街道から少し離れて、やり過ごそう」


ユウキとシルフィーは頷き、俺たちは安全な位置へ移動した。


その間にも、ウルフの群れは俺たちの前を横切り、草原の向こうへ走り去っていく。


配信コメントにも驚きの声が流れていた。


『なんだあの数!?』


『ウルフの大移動?』


『最近どこのフィールドでも変なこと起きてない?』


俺は走り去る群れを見つめながら、考え込んだ。


東のゴブリン、西のホーンラット、南のスライム。そして、北のウルフ。


やはり何かが起きている。


だが、その原因はまだ分からない。


「……帰ったら、ギルドへ報告しよう」


俺がそう呟くと、シルフィーは静かに頷いた。


そして俺たちは、遠ざかっていくウルフの群れを見送りながら、北街道の異変を改めて実感していた。


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