↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還勇者ミナトのVRMMO戦記 ~剣も魔法も本物を知っているので、ゲームでも最強です~  作者: バモス
第一章 帰還勇者、VRMMOを始める

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/37

第29話 東草原の激戦と、帰還勇者が見抜いた違和感

冒険者ギルドの掲示板に《緊急討伐:東草原ゴブリン拠点》の戦闘開始が告知されると、周囲にいたプレイヤーたちが一斉に集まってきた。


俺――《ミナト》も、シルフィーとユウキの二人と一緒に掲示板を見上げていた。


討伐隊にはLv5以上の冒険者が参加している。ゴブリンの数は三十体以上で、複数の《ゴブリンソルジャー》と《ホブゴブリン Lv7》まで確認されていた。


俺たち三人はLv3なので参加できないが、戦いの結果は気になる。


「ミナト、討伐隊の様子って見られないのかな?」


ユウキが尋ねてきた。


「どうだろう。参加者が配信していれば見られるかもしれないな」


そう答えると、ユウキはすぐに配信一覧を開いた。


「あっ、あった! 討伐隊に参加している人が配信してる!」


画面には《東草原ゴブリン討伐LIVE》というタイトルが表示されていた。ユウキが共有設定を操作すると、俺たちの前にも小さな映像画面が現れる。


そこには、木製の柵に囲まれたゴブリンの拠点が映っていた。


前衛の戦士たちが盾を構え、その後方には剣士と魔法使いが並んでいる。さらに離れた場所では僧侶たちが回復の準備をしていた。


「おお、すごいね……」


ユウキが感心したように呟く。


映像の中では、討伐隊の指揮役らしい男性が大きな声で指示を出していた。


「前衛は盾を維持! 魔法使いは合図まで待機! ゴブリンが柵から出てきたら迎撃するぞ!」


直後、拠点の入口から十匹ほどのゴブリンが飛び出してきた。


盾を持った戦士たちが前へ出ると、ゴブリンの攻撃を受け止める。その隙に後衛から《ファイアボール》や《ウィンドカッター》が放たれ、次々と敵へ命中した。


最初の衝突は討伐隊が優勢だった。


「すごい! ちゃんと役割分担してる!」


ユウキが嬉しそうに声を上げる。


「ああ。前衛が敵を止めて、後衛が安全な位置から攻撃している。基本だけど大事なことだな」


シルフィーも画面を見つめながら頷いた。


「回復役の方々も、前衛の状態をよく確認されていますね」


しかし、戦闘が進むにつれて状況が変わり始めた。


拠点の奥から《ゴブリンソルジャー》が現れたのだ。


通常のゴブリンより身体が大きく、粗末ながら金属製の武器を持っている。さらに、その後ろから別のゴブリンたちが回り込もうとしていた。


「右側から来るぞ! 予備部隊、迎撃!」


指揮役の声が響く。


討伐隊はすぐに対応したが、ゴブリンソルジャーの攻撃を受けた戦士が一人、後方へ押し込まれた。


僧侶が回復魔法を使い、別の戦士が盾を構えて前へ出る。


俺はその様子を見ながら、少し気になることに気づいた。


「……妙だな」


隣のユウキが振り向く。


「どうしたの?」


「ゴブリンの動きが揃いすぎている」


俺がそう答えると、シルフィーも画面へ視線を戻した。


「確かに、通常の魔物にしては連携が取れていますね」


ゴブリンは群れで行動する魔物だ。だが、今映っている個体たちは、ただ目の前の敵へ襲いかかっているわけではなかった。


前衛を正面から引きつけ、その間に別の集団が側面へ回り込む。しかも、無理に突出する個体が少ない。


向こうの世界で見た、指揮官のいる魔物の部隊に似ていた。


「ホブゴブリンが指示しているのかな?」


ユウキの質問に、俺は頷いた。


「その可能性が高いな。ただ、姿が見えない」


討伐隊が戦っているのは拠点の入口付近だ。柵の向こう側にはまだ確認できない場所が多く、ホブゴブリンがどこにいるのか分からない。


やがて、配信映像の奥から大きな影が現れた。


『《ホブゴブリン Lv7》』


通常のゴブリンより一回り以上大きな身体。手には幅広の剣を持ち、周囲には二匹のゴブリンソルジャーが付き従っている。


「出た!」


ユウキが思わず声を上げた。


ホブゴブリンは討伐隊を見渡すと、低い唸り声を上げた。


その直後、周囲のゴブリンたちが一斉に動きを変えた。


前へ出ていた個体が後退し、代わりに別の集団が側面へ移動する。


「……やっぱり指揮しているな」


俺が呟くと、シルフィーも真剣な表情になった。


「それだけではありません。あのホブゴブリン、戦況を見ています」


確かにそうだった。


ホブゴブリン自身はすぐに突撃せず、討伐隊の動きを観察している。前衛の配置や魔法の発動間隔を確認しているようにも見えた。


そして、討伐隊の魔法使いたちが一斉に攻撃した直後、ホブゴブリンが大きく吠えた。


ゴブリンソルジャーが前へ出る。


魔法を放ったばかりの後衛へ向かって、数匹のゴブリンが走り出した。


「まずい!」


ユウキが声を上げる。


だが、討伐隊の指揮役もすぐに反応した。


「予備部隊、後衛を守れ! 盾役は位置を維持!」


予備の戦士たちが前へ出て、後衛へ向かうゴブリンを食い止める。


俺はその判断に感心した。


「いい指揮だ。予備戦力を残しておいたのが効いたな」


もし全員を最初から前線へ投入していたら、後衛を守る余裕がなくなっていただろう。


戦闘は激しさを増していたが、討伐隊の連携は崩れていなかった。


やがてホブゴブリン自身が前へ出る。


大剣を振り下ろすと、盾を構えていた戦士が大きく後退した。


続けて横薙ぎの一撃。


別の戦士が盾で受け止めるものの、HPが大きく減少する。


「強い……!」


ユウキが息を呑んだ。


「ああ。Lv7だけあって攻撃力が高いな」


俺は画面を見つめながら考える。


今の俺なら、剣筋を読むこと自体は難しくないかもしれない。


だが、Lv3のステータスであの攻撃を受け止められるとは限らない。以前、Lv4のゴブリンソルジャーを相手にした時も、受け流しに成功しながら身体へ負担がかかった。


だからこそ、今回参加しなかった判断は間違っていない。


討伐隊はホブゴブリンを複数の盾役で引きつけ、その間に魔法使いたちが攻撃を重ねていた。


しかし、俺は別のことが気になっていた。


「シルフィー、あのホブゴブリンの後ろを見てくれ」


「……柵の奥ですか?」


「ああ」


拠点の奥。


そこには、まだ戦闘へ参加していないゴブリンが数匹残っていた。


しかも、逃げようとしているわけではない。


何かを守るように、一定の場所から離れずにいる。


「何かあるのかな?」


ユウキが尋ねる。


「分からない。でも、あの位置を守っているように見える」


俺は画面の端に映る地面へ目を向けた。


柵の奥には、土が盛り上がった場所がある。その周囲には木箱や粗末な道具が置かれていた。


食料の保管場所かもしれない。


あるいは、別の理由があるのかもしれない。


ただ、ゴブリンたちがそこを気にしているのは確かだった。


その時、討伐隊の指揮役が大きく声を上げた。


「ホブゴブリンのHPが半分を切った! 前衛は押し込め!」


映像の中で、剣士たちが一斉に攻撃を仕掛ける。


ホブゴブリンは大剣を振り回して抵抗したが、複数方向からの攻撃を防ぎきれず、徐々に後退していった。


そして、最後の一撃が命中する。


『《ホブゴブリン Lv7》を討伐しました』


討伐隊から歓声が上がった。


「やった!」


ユウキも嬉しそうに声を上げる。


シルフィーは安心したように微笑んだ。


「これで指揮官を倒せましたね」


「ああ。ただ、まだ終わりじゃない」


俺がそう答えた直後、映像の中で残ったゴブリンたちが動き始めた。


指揮官を失ったことで統率が崩れたのか、逃げ出す個体もいれば、無謀に突撃する個体もいる。


討伐隊は無理に追いかけず、隊列を維持しながら一匹ずつ倒していった。


しばらくして、拠点周辺の戦闘が収まる。


指揮役が周囲を確認し、拠点内部の調査を命じた。


俺たちはその様子を配信で見守っていた。


そして、調査隊が柵の奥へ進んだ時だった。


「……おい、これを見てくれ!」


配信者の声が響く。


画面には、地面に掘られた大きな穴が映っていた。


自然にできた穴ではない。


周囲には木材で補強された跡があり、奥へ続く通路のようなものが見える。


さらに、その入口付近には、黒ずんだ石がいくつも置かれていた。


「何だろう、あれ?」


ユウキが首を傾げる。


俺は画面を見つめた。


黒い石。


周囲の地面。


そして、穴の奥から漂う薄い紫色の光。


異世界で何度か見た、魔力の濃い場所に似た雰囲気があった。


「……魔力に関係するものかもしれないな」


シルフィーも真剣な表情で頷く。


「はい。ただの石ではなさそうです」


討伐隊の指揮役は、すぐに内部へ踏み込もうとはしなかった。


「全員、その場で待機! 未知の場所へ勝手に入るな。ギルドへ報告する!」


俺はその判断に安心した。


敵の拠点を制圧した直後ほど、油断しやすい。未知の穴へ不用意に入るのは危険だ。


やがて、冒険者ギルドの掲示板が更新された。


『《緊急討伐:東草原ゴブリン拠点》』


『主要討伐対象の撃破を確認』


『拠点内部に未確認の地下通路を発見』


『安全確認のため調査を一時中断』


ユウキが俺を見る。


「ミナト、これって……」


「ああ。まだ何かありそうだな」


俺は画面に映る地下通路の入口を見つめた。


東のゴブリン、西のホーンラット、南のスライム、北のウルフ。


それぞれの異変が偶然なのか、それとも何かにつながっているのかは分からない。


だが、少なくとも東草原のゴブリンたちは、ただ群れを作っていただけではなかったらしい。


俺たちが見守る中、討伐隊は地下通路の入口を封鎖し、冒険者ギルドへ帰還する準備を始めていた。


そして俺は、二十年間の冒険で培った勘が、久しぶりに小さな警鐘を鳴らしているのを感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。