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私達!オカルトギフターズ〜オカルトが存在しない異世界に怪異を与える〜  作者: qp46


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メリーさん、爆誕

 夜だった。


 村の広場に、五人が集まっていた。


 田中が電話機を抱えていた。清子が受話器を持っていた。吉田が目を閉じて集中していた。新田が周囲を静かに見回していた。


 聡は空を見上げた。


 星が多かった。元の世界では見えなかった数の星が、頭上に広がっていた。綺麗だと思う余裕が、今の聡にはなかった。


「村人は?」


「十八人、周辺で様子を見ています」新田が答えた。「噂を聞いて来た人間と、村長から話を聞いた人間です」


「村長また来てるのか」


「最前列です」


 聡が見ると、暗闇の中に村長の顔があった。怖そうにしているのに、目が輝いていた。


「村長、完全にオカルトにハマってるじゃないか」


「いい村民です」清子が笑った。


「被害者だろ」


「準備はいい?」


 聡は深呼吸をした。


 口裂け女。貞子。そして今夜、メリーさん。


 三度目だ。慣れるかと思っていたが、慣れなかった。むしろ回を重ねるごとに、何かが積み重なっていく感じがした。この世界に、自分たちが作ったものが増えていく感じ。


「やる」


「空想の固定化、お願いね」


 聡は目を閉じた。


 メリーさん。電話をかけてくる人形。今どこにいるか教えながら近づいてくる。最終的に目の前に現れる。


 村人たちがそれを信じている。夜中の怪電話を、少しずつ近づいてくる声を、信じている。


「空想の固定化」


 電話のベルが、鳴った。


 田中が持っている電話機のベルが、誰も触れていないのに鳴った。


 全員が固まった。


 田中が震える手で受話器を取った。


 音が聞こえた。


 受話器から漏れる音が、聡のいる場所まで届いた。


 声だった。


 低くて、静かで、遠くから聞こえるような声だった。清子の声ではなかった。清子は聡の隣に立っていた。


「今、村の外にいます」


 誰も動けなかった。


 吉田が小声で言った。


「俺、何もしてないです」


 足音が聞こえた。


 吉田の幻影ではなかった。地面を踏む、本物の重さを持った足音だった。遠くから、少しずつ、近づいてくる。


 電話のベルが、また鳴った。


 田中が受話器を取った。手が震えていた。


「今、村の中にいます」


 村人たちの間から、小さな悲鳴が上がった。


 足音が近づいてきた。


 広場の入口で、何かが止まった。


 暗闇の中に、それはいた。


 人形だった。


 しかし人形の大きさではなかった。人と同じ大きさの、人形だった。陶器のような白い肌。ガラスの目。金色の巻き毛。白いドレス。


 ガラスの目が、こちらを見ていた。


 瞬きをしていなかった。


 笑っていた。口の端だけが、上がっていた。


 電話のベルが、三度目に鳴った。


 誰も取らなかった。


 ベルが止まった。


 静寂だった。


 メリーさんが、一歩踏み出した。


 清子が叫んだ。


「でたーーー!!!」


 田中が叫んだ。


「本物だああああ!!!」


 吉田が叫んだ。


「怖いいいいい!!!」


 村人たちの悲鳴が夜の村を揺らした。


 村長が一番大きな声で叫んでいた。


 聡は叫んだ。


「お前らが作ったんだろ!!!」


 全力で逃げた。


 今回は村人も一緒に逃げた。村長が先頭だった。


 オカルトギフターズの家に飛び込み、扉を閉めた。


 全員が息を切らしていた。


「……今回、村人も逃げてたな」


 聡が言った。


「村長、速かったです」吉田が言った。「俺より速かった」


「鍛えてるんでしょ」清子が言った。


「そういう話か」


 田中が電話機を見た。


「電話、持ってきちゃいました」


「捨ててこい」


「でもまた鳴ったら」


 全員が電話機を見た。


 誰も何も言わなかった。


「……部屋の隅に置いとけ」


「置いときます」


 田中が電話機を部屋の隅に置いた。全員がそこから少し離れた場所に座った。


 しばらくして、清子が口を開いた。


「メリーさんって、電話持ってるのかしら」


 沈黙だった。


「持ってたらどうする」


 聡が聞くと、清子は少し考えた。


「かけてくるんじゃない?」


「誰に」


「私達に」


 全員が電話機を見た。


 電話機は静かだった。


 静かなままだった。


「……今夜は鳴らなそうだな」


 聡が言った瞬間。


 ベルが鳴った。


 一度だけ。


 全員が飛び上がった。


 それきり、鳴らなかった。


 誰も電話機の近くで寝なかった。


 翌朝、清子が言った。


「次は八尺様ね」


 聡は電話機を見た。


 昨夜の一度だけのベル。あれが何だったのか、誰も確かめなかった。


 確かめなくていいと思った。

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