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組分けと新しい友達

 しばらくして、落ち着いて京子は遠くで流れている景色に目をうばわれる。

 空の上に島が在る。

 船の中がざわめく。


「すごい……」

「空の上に島が在る……」


 子供たちの声があちこちから上がった。


 雲の合間に浮かぶ、佐渡島程の大きさの大地。

 その上に、木々や山々が広がっている。

 島から滝の様に落ちる水は、太陽の光を反射して輝いていた。


 ――きれい……


 京子はそう無意識につぶやく。

 心の不安も少し忘れていた。

 しかしふっと、樹と巽の事を思いだし船の中を見回す。


 ――樹君、巽君……


 だが、見当たらない。

 まだ二人は戻って来ていない。

 一度消えた不安が、また京子の心を支配した。

 けれど、今は前を見るしかない。

 その時、おばさんの様な声が響く。


「はい、新入生のみんな。高天原に着いたから、降りる準備してねぇ」


 声の主は八咫烏。

 片方のつばさをかかげている。

 京子は自分の荷物の場所に戻る事にした。

 しばらくすると、八咫烏たちがまた片方のつばさをかかげ説明を始める。


「学園に案内するから、迷子にならない様に付いて来てね」


 子供たちは、八咫烏たちの後ろに付いて行く事にした。

 子供たちが動き出すと、京子は樹や巽を探すのが難しい。

 仕方なく京子も流れにそって歩き出した。

 そして京子が天磐船を出てしばらく歩いた時の事……


「わっぁぁ!」


 少し前を歩いていた男の子が大声を上げた。

 京子は男の子が何かを見つけて驚いている事に気付き、男の子の視線の先に目を向けた。


 ――‼


 その先で京子が見たのは、ジャンボジェット機ぐらいの大きさの八咫烏。


「うわっ……」

「で、でか……」


 他の子供たちも気がついたのか移動の流れが止まり、どよめきが広がる。

 すると案内していた小さな八咫烏の一匹が、少し得意そうに言った。


「君たち運んでくれた、オレたちのママだよ」


 他の八咫烏も少し得意げ。

 しかしそんな自分の子供たちを見た八咫烏のママは、優しく注意をする。


「今は仕事中ですよ」


 すると『オレたちのママだよ』と言った八咫烏は驚く。


 ――そう……だった!


「みんな、止まらないで付いて来て」


 八咫烏たちはまた歩き出し、子供たちの移動がまた始まった。

 近くに和風の門が在る。


「はい、ここが学園の玄関です。これから学園長先生の待つグラウンドに向かいます、もし上級生に有ったらあいさつして下さい」


 八咫烏の説明を聞きながら京子は門を見て、自分の両親が子供のころからやっている、忍者アニメの学校の様だと思った。

 門を通り、建物には入らずに回り道をして学園の中心に向かうと、子供たちはグラウンドにとうちゃくする。


 都会の学校の三倍はあろう広さのグラウンド。

 その中央には緑の床の上に、 一本の大樹。

 その姿は空に届きそうなほど高く、幹は何人で囲んでも足りないほど太い。

 根は地面を大きく持ち上げ、周囲の空気が少しだけ違って感じられる。


 ――あれが、ムスヒノカミ……?


 京子は矢文に書いてあった説明を思い出す。


 ――確かあの木が、グループ分けしてくれるんだっけ?


 そんな事を考えながら、京子が八咫烏の案内で用意されていた縁台に座りしばらくすると……


 しらに金色の直衣姿の老人が一人、大樹の前に現れた。

 右手にさやに納まった宝剣を持って。

 その姿を見た子供たちは、不思議となぜか老人から目が離せない。

 子供たちが見ている中、老人はつぶやく。


おうらんまん。桜は花にあらわれる」


 すると――


 ひらり。


 空から桜の花びらが舞い落ち始めた。

 やわらかく、ゆっくりと落ちてくる花びら。

 風もないのに、優しく広がる。


 子供たちが見上げる。

 京子も、ただその光景を見ていた。


 ――きれい……。


 みんな、それ以上の言葉が出てこなかった。

 やがて桜が止む。

 そして老人が口を開いた。


「新入生のみな、私の入学祝いは喜んでくれただろうか。私の名前はこの学園の学園長、第十二代安徳天王。安徳学園長と呼んでくれ。ここは昔のすごい人、聖徳太子が君たちの様な力を持つ子供の為に造った学校だ。両親と離れて不安だろうが友達を作り、自らの力を力を操る方法を学んで欲しい」


 その声は、とても優しい。


 「それでは手紙に書いた様に、クラス分けを始める。名前を呼ばれた者は大樹ムスヒノカミ様の前へ行き、神社のお参りをしなさい。そうすれば、君たちの力に応じた形代が現れる」


 その言葉に、子供たちに緊張が走る。

 矢文に書かれていたクラスは四つ。


 真面目な子が選ばれる『鏡』。

 形代は鏡。

 アイドル・リーダー気質な子が選ばれる『剣』。

 形代はさや付きの宝剣。

 体育会系・直感型な子が選ばれる『玉』。

 形代はぎょく(宝石)。

 中華・韓国ルーツな子が選ばれる『星』。

 形代はさや付きの七星剣。


 星以外は、自分がどの様な人間なのか分かるからだ。


「形代は大事な物だ、なるべく身に付けている様に。もし無くすと、見つかるまで商店街で買い物が出来なくなる」


 安徳学園長が真面目な声でそう説明した次のしゅん間――

 モモのにおいと共に、せん人にしか見えない老人が安徳学園長の横に姿を現した。


「新入生の子供たち、私は星(クラス)の先生で、名をじょふくと言う」


 そう言った声は優しい。


「君たちには宝剣と七星剣の違いは分からんだろうから、見本を持って来た。学園長、貴方の形代、少し貸し頂けれますか」

「あまり派手にせんで下さいよ」


 笑顔で安徳学園長がそう返事をすると、安徳学園長の持っていた剣が独りでにさやから飛び出て、宙をまう。

 そして地面にささったが、ささった剣は二本に成っていた。

 一本は安徳学園長の形代、もう一つはじょふくの形代である七星剣。

 じょふくは真面目なかおう。


「赤いヒモの付いた方の剣を七星剣と言う。これが現れた者は私と同じ中華、もしくは韓国のルーツを持つ。大体の場合は親や祖父母が中華系や韓国人なのだが、日本人の中に稀に星組に入る者がいる。しかし不安にならないで欲しい、それは過去日本人になった中華、韓国の王侯貴族の血筋。仕事の内容が地名に成り、この学園の創設者聖徳太子の側近だった者の血筋の証だ。純粋な日本人だからと言って立派な事をした訳ではない、先祖の過去の仕事を誇りに前向きに生きて欲しい』


 そして、


「他の者は友達としゃべっていて構わない。文に書いた方法を忘れた者は確認。それでは名前を呼ぶぞ、青木……――」

 

 安徳学園長が名前を呼び始め、クラス分けが始まった。


 十何人か名前が呼ばれて……


「雲立 樹」


 樹の名前が呼ばれたので、京子は樹の行動を目でおった。

 もしかして、樹と巽が一(しょ)に行動しているかもしれないと思ったからだ。

 そして案の定。

 樹はクラス分けが終わると、巽の所へ向かっていった。


 ――見つけた、巽君。


 二人との距離は結構遠い。


 ――今行くと、名前呼ばれた時に逃げられるかもしれないし……

 ――呼ばれてるの男の子が先みたいだし、私が呼ばれた後についでに話しかけよう。


 京子はそう覚悟を決め、自分が呼ばれるのを待った。

 そして……


 「日向京子」


 名前が呼ばれる。


 「はい」


 立ち上がり、京子はムスヒノカミの前へ進む。

 

 ――確か二回おじぎをして、次に二回手を叩く

 ――最後におじぎをして終わり

 

 その行動が終わった瞬間――


 青銅で出来た、五円玉と同じ色の手鏡が目の前に現れる。


 ――やっぱり。


 京子はそれを手に取ると、クラスについてはどこか納得していた。

 そしてそのまま、樹と巽の元へ向かう。


 ――謝らないと……


 と、心の中でくり返しながら。

 一方それに気がついた巽は逃げようとしたが、先に京子に気づいていた樹が、右(うで)にだき付いていて動けない。


「……さっきは」


 京子がそう言って、二人の前で立ち止まる。


「助けてくれたのに、ごめんなさい」


 そして頭を下げる。

 しかし巽からの返事は無い。

 樹は巽から離れると、少し怒った口調でいう。


「巽君」


 巽は二人から視線をそらすが……


 ――いや、これは男らしくない


 「……オレも」


 ガンバって声を出し、


 「逃げて悪かった。 たたいた事は気にしてない」


 自分も謝った。

 顔が少し赤い。


「それじゃぁ改めて、助けてくれてありがとう」


 笑顔でそう言った京子に、巽はぶっきらぼうに返事を返す

 

「おう」


 少しだけ、二人の間の空気がゆるむ。


「そう言えばクラス分け見てたけど。巽君が剣なのはそんな気したけど、樹君が玉なのは驚き。樹君て運動出来るの?」


 京子は二人のクラス分けの様子を見て、今そんな疑問が急に浮かんで来た。

 だからその疑問を樹にたずねるが……

 次の瞬間、二人は同時に視線をそらした。


 ――?


「どうかした、二人とも?」


 樹はともかく、巽の反応はおかしいと感じた京子がさらにたずねると……


「ボクの場合は完全に謎。ボクどちらかと言うと運動苦手だし、ゲームとか本読んでる方が好きなんだけど。そうだ京子ちゃんはゲーム好き?」


 樹が話題を変えて来たので、京子はその話に乗る事にする。

 すると巽もその話に乗って来て、三人はその話題でしばらく話す事になる。

 しばらくして安徳学園長が手を叩き、子供たちの注目を集めてから言う。


「これでクラス分けは終わりです。これからりょうへ向かうので、同室の友達を決めて下さい。部屋は2人から3人で1組。男女は別。組は別でも構わない」


 それを聞いて、京子は樹と巽に尋ねる。


「二人はどうするの?」


 すると巽が樹にお願いのポーズをしながら言う。


「悪い樹、オレと一緒の部屋にしてくんない。他の奴にどう思われてるかわかんないし」

「いいよ」


 樹がOKを出し、それを見て京子が『私はどうしよう』と言いながら悩んでいると……


「それじゃ、私と一緒にならない」


 後ろから話しかけられた。

 京子は振り返る。

 そこにいたのは、長い黒(かみ)に、黒いひとみが印象的な女の子。


 「京子ちゃんでいいのよね」


 その女の子はにこりと笑う。


「船の中で話しかけようと思ってたんだけど……ちょっと無理だったし」


 ――いじわる。

 京子はそう思いながら、このタイプの女の子の事を理解している自信があった。

 そして、笑顔で言い返す。


「あなたみたいなカワイイ子なら、歓迎するわ」


 少女はその反応にくすりと笑う。

 そしてちらりと巽を見て言う。


「そんなこと言うと、また巽君に怒られるわよ?」

「……あれは」


 巽は少し怒って女の子に何か言いかけるが、やめる。

 そんなやり取りを見ながら、樹はこの女の子に少し和感を感じた。


「あなた、形代は? それと名前」


 京子は、女の子が自分の名前を名乗っておらず、鏡も玉も持っていなさそうなのでそうたずねると、


「私はかさ 羽華はなよ、七星剣はイスに置いてきたの。女の子の友達作るのに、武器持って行くのはかわいくないでしょ」


 羽華はあきれた顔でそう説明した。


「それじゃさっき徐福先生が言ってた、たまに日本にいる星組の人?」


 少し驚いて京子がそう返すと、羽華は今度は少し考えている様な顔を作り言う。


「まぁ私の家。ご先祖様が日本に来て、おキツネ様を広めたって言ってたから。知ってはいたんだけど……」


 そこまで言うと、羽華は笑顔で京子の右(うで)にだき付く。

 そして三人に向かって提案をする。


「そんな事より。この後、りょうに行って荷物置いたら買い物でしょう。みんなで一(しょ)に回らない」


 自由な羽華にあきれつつ。

 親友の事を思い出しながら、京子は羽華の提案を受ける事にした。


「私はOK」

 

 そして樹と巽に視線を向けて聞く。


「二人はどうする?」

「オレは行かない」


 巽はそく答した。


「何で女子と一(しょ)に、買い物なんてしなきゃいけないんだよ」


 その口調は、はずかしさを隠すためか少しあらい。

 だが……


「えぇぇぇぇ! 巽君、いざという時に守ってくれそうだと思ったのに」


 羽華その一言で少し考えた巽は、


「……分かった」


 あっさり意見を変えた。

 樹の方は迷っている。

 女の子との買い物は別に構わないが、羽華から感じる和感が樹を悩ませている。


 そんな樹は羽華と目が合う。

 そしてほほ笑みかけられた。

 するとなぜか、樹の羽華への和感が消えていた。


 ――あれ?

 ――ボク、何をなやんでたんだっけ?

 ――それより、京子ちゃんたちに早く返事しないと。


「ボクも一(しょ)に行くよ」


 樹の言葉で四人で買い物に行く事が決まる。

 京子は、友達作りが上手く行っているのでほほ笑んでいた。


 グラウンドでは、まだ部屋を決められていない子供たちの間を、小さな八咫烏たちが走り回っている。

 困っている子に声をかけ、どうにか寮の同室を決めようと悪戦苦(とう)中。




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