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【書籍2巻発売中!】 異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~  作者: 鬼怒藍落
第五幕:神去召獣譚

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第168話:神便鬼毒酒

 終末海域オケアノスを攻略して早数日。

 夏休みも中盤に差し掛かり、珍しく平和な日が続いている。

 特にこれと言ったイベントはなく、流石に疲れているからダンジョン攻略に行く気も起きないから。


「……というかまだ一ヶ月か」


 思い出しながらもそう呟いて、俺はこの濃かった夏休みを思い出す。

 まだまだ全然続く休みだが、その半分があまりに濃くて……というか終末獣と称されるリヴァイアサンと戦うなんて思ってなかったしで流石に疲れたなと。


「様子見てないけど馴染めてるのかなぁ……」


 自分の部屋で一人、ベッドに横になりながらも心配するのはレヴィさんのこと。

 俺の事を想ってくれて今回の事件を起こしたのはいいが、その過程に不満を持っている召喚獣もいるし、喧嘩になってないかが少し不安。


「思い立ったら即実行、ちょっと見に行くかぁ」


 不安がって何もしないより、自分の目で確認した方がいいだろう。

 だから俺は、すぐに魂の世界に戻ることに決めてゆっくりと自分の中に沈み込む。

 もう慣れたその感覚、水の中に落ちていくようなそれを一瞬だけ感じ……意識が戻った瞬間に見たものが。


「…………いますぐ帰ろっかな?」


 空を見上げればウロボロスが飛び回り、遠くを見れば顔を真っ赤にしたヨルムンガンドが倒れ、それを見ているアポピスとアジ・ダハーカがゲラゲラ笑い、良心である八岐大蛇が右往左往している光景――だった。


 他の場所に目を向ければアルゴルまでも倒れていて、眼鏡が外れているせいか一部が石化。それに加えて狐のぬいぐるみを持ったリコリスがすーすーと寝息を立てながらも毒を漏らし、溢れないようにサリエルとケツァルコアトルが浄化している。

 

「…………今すぐ帰ろう」


 どういう状況なのかは一切分からないが、ろくでもないことが起こってるのは確かであり、何より関わっちゃ不味いことも確実。

 目覚めた場所的にここは日本神話勢の住処、ただでさえはっちゃけ癖持ちが多くて楽しければいっかー勢が沢山のこの場所に普段は自分の居場所から離れない、蛇勢が集まってるってことでイヤな予感が凄い。


「あ~霊真さんが、二人~――お得だから貰っちゃいますよ~」


 そして誰にもバレないうちにこの場から離れて、現実に戻ろうとした時だった。

 俺は誰かに抱きつかれて、そのまま地面に組み伏せられる。誰だと思って見上げれば、目が合うのはシアンの瞳と真っ赤な顔。


「レヴィ……さん?」

「はい、貴方のレヴィ・リヴァイアサンですよ~」


 普段より語尾が伸びている彼女。

 ワンピース姿のこのヒトに抱きつかれてやばいと思ったが、それを気には出来ないレベルの酒の臭いを感じて――この惨状の理由を知った。


「なぁ、皆で酒飲んだ?」

「えぇ~そんなわけないですよ~? だって私は最強で酔いませんし」

「どう考えてもそれ無理あるけどさ、何があったかせめて教えてくれ」


 脱出すれば感じるのは、嗅ぎ慣れてないぐらいのアルコール臭。

 全体的に火照った彼女はぽわぽわしながらも、なんとか思い出してくれてるのか考えるような仕草をしてくれる。


「えっと、ですね? 蛇の方々に歓迎会を開いて貰うことになったんですが、持ってこれる者がなくて? 優しい鬼の娘にジュースを貰ったので皆で飲みました」

「多分それ絶対酒だけど……その鬼って誰だ?」


 契約している鬼の召喚獣は少ないし、両手あれば数えられるくらいだ。

 神話的にも数があまり多くないという事と、出会った場所がほぼ和国ということもあって絞れるが……あいつらが素直に酒を他人に渡してる姿が一切想像出来ない。


「誰でしたっけぇ~? あーそうです、桃髪をした――確か、死天さんとかいう?」

「――――」


 その瞬間に心の底から絶句した。

 それこそ本当に、八月入って最初の驚きのせいで。

 

「――え? 本当に、死天が?」

「そや、うち渡したけどなんかあるんかいな?」


 ぬるりと……あまりに歪な、それこそ寒気を覚えるくらいの死の気配が集まって、一人の少女を形作る。桃髪に露出の激しいはだけた着物、体に紅い紋様が刻まれているその鬼は、とても愉快そうに嗤い俺の前に現れた。


「あの酒浸りのお前が……渡す?」

「そらそうやん? せっかくの新しい仲間の歓迎会なんやさかい、なんか渡さへん訳にはいかへんどっしゃろ?」

「――待てよ死天、お前が持ってる酒って」

神便鬼毒酒(しんぺんきどくしゅ)以外にあるわけあらへんやん。もしかしてうちのこと忘れてもうた?」


 死天朱璃……一応酒呑童子という鬼の原典を持っていて、記された死因である酒を造ることができる彼女。その酒は、人間が飲めば飲めば力が湧く薬となるが……怪物というかミソロジアの者達が少しでも飲めば、どんな耐性でも貫通して酔わせる酒。


「あれを、皆に?」

「せっかくの歓迎会やし、酔うて嗤った方がよろし。それに見てみ、ほら、皆仲良う笑うてる」


 これら惨状を引き起こした元凶は、この地獄を前にしてどこまでもケラケラ嗤う。 

 自分がつくった混沌に酔いしれてるのかとっても楽しそうで、何より自分は自分で神便鬼毒酒を飲んでいるし……収拾なんかつきそうになかった。


「あ、みんなーここに霊真がいんでー」

「ちょ、まず!? おまっ死天!?」

「捕まえられたら、一日独り占め――しかもお願いを聞くなんてえらい優しいやん」


 それが誰かの耳に入ったのだろう。

 そこら中からこの場所を見て傍観していただろう日本勢達の瞳が俺に集まっているのを感じる。しかもそれだけじゃない、なんか気付けば術をかけられていて、俺の体が縮んでいたのだ……犯行的にこういう事が出来るのは、一人しかいないだろう。

 あぁ、終わった――恨むぞ、玉藻。

 

「さぁさぁ……鬼ごっこを楽しもか、すたぁと」


 妙に甘ったるい口調で、それが言い放たれ……そうして、地獄が始まった。

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