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61.地の底へ


おれは受付嬢から失踪した冒険者たちのこと、迷宮についてあらゆる情報を聞き出した。


早く救出に向かって欲しい様子だったが丸一日は情報収集に徹した。

王都からその迷宮までは半日かかる。

急いでも着くのは明け方だ。

それでは二回目に生かす情報は何も得られない。


二回目、おれたちはパーティ申請と同時に失踪した冒険者の救出を申し出た。

迷宮に到着した時には夜だったが迷宮に昼も夜も関係ない。


「行くぞ」

「待て」

「明かりを」

「やめろ、モンスターが寄ってくる」


いきなり想定外。


シンシアとリナトリアが真っ暗闇では何も見えないと言い出した。


「普通そうだろ」

「はい」


仕方ないので明かりをつけ、モンスターに遭遇したら即処理することにした。

できるだけ時間はかけたくなかったが今慣れろと言っても無理だと判断した。


「ツユキ、おれがタイミングを教えるから静かにやってくれ」

「心得た」


『デジャブ』で遭遇するタイミングを確認。

モンスターが現れたと同時に全て一撃で倒していく。


「さすがでございますゥ」

「おお、やはりシマの技は素晴らしい!」

「声を落とせ。あともっと静かに進め」


移動時に迷宮内での基本的な動きについては説明した。だが実際やるのは大違いだ。

シンシアは甲冑に大楯と剣だ。ガチャガチャとうるさい。リナトリアはキョロキョロと落ち着きがない。


最初はこんなものかと思いつつ、二階層にある新階層への入り口に到着した。


「入り口というか、無理やりぶち抜いたって感じだな」


通路の壁に唐突に大きな丸い穴が開いていた。

これは隠し通路って感じじゃない。

それに中をのぞくと下に向かって竪穴が続いていた。


明らかに迷宮の作りとは違う。


「やばいな」

「うむ」

「どうした?」

「失踪の原因。一番厄介な理由かもしれない」


中級迷宮の中に異質な全く別の迷宮が存在している可能性。

それが濃厚になってきた。


「それよりもどう降りるのでしょう?」



竪穴は直径5メートルはある。

調査団の3パーティもここを通った。


「足場があるだろ。行こう」

「えぇ……」


ロープを伝って壁に足を掛けながら降りたようだ。

かなり奥まで続いている。


「これはかなりきついね。この地形じゃまともに戦えないし、襲われたら逃げられない」

「なら先に様子を見てみるか」


『デジャブ』で下に飛び降りてみた。


>落下し続けてる間にいくつか横穴を発見。

>地面が見えるより先に。


「――食われた?」

「え?」

「何かあったか?」

「横穴がいくつか。それと、『デジャブ』中に死んだようだ。何かに飲み込まれたような」

「どうする?」

「もし先に進むとしたら途中横穴に入るだろう。最初の横穴から探る。真下にいる何かとは極力遭遇を避けよう」

「皆さま、お待ちくださいませ」


リナトリアが何やらおれたちに魔法を掛けた。


「風の精霊による飛行魔法、付与術による『軽快』、『反射』を施したのですぅ」

「おおぉ、飛べる」


浮いているに近いが、壁を歩いて降りられるようになった。


「おもしろいな」

「これなら襲われても戦闘が可能だ」

「さすが賢者だね」

「魔力は平気か?」

「七日七晩でも維持できるのですぅ」


それだけ魔力があれば調査団を救出する時にも役に立つな。


おれたちは暗い洞穴を下った。


横穴の一つに痕跡を見つけた。

ロープは引きちぎれていたが固定する金具が食い込んでいた。

ここまでは来たな。

横穴も幅が五メートルはある。どうやらかなり複雑になっているようだ。

分岐点が多い。


「これでは調査団を探す前に我々が遭難するぞ」

「いや、大丈夫だ。通路が変わったり、道が塞がったりはしていない。道を記憶していれば問題ない」

「私は無理だ。どっちが前か後ろかも怪しい……」

「ヴィンセント殿が死んだら遭難か」

「クレア様が匂いで引き返せるのでは?」

「……そうだけど、ヴィンは死なないから」


そんなこんなしているうちに、明かりが見えた。


間違いない。『韋駄天』『赤い盾』『ロードメシア』だ。

かなり憔悴している。


「ギルドから救助要請を受けて来た。全員無事か?」


警戒と安堵。おれたちが食料と水を差し出すと信用した。


一心不乱に黙々と食べ続ける10人。


3人いない。


「なぁ、お前たち道は分かるか? おれたちは出口にたどり着けなくなっちまって」

「わかるぞ。動けるようになったら入って来たところから出る」



「待ってくれ!3人は見殺しか?」

「蒸し返さないでよ。きっともう死んでるわ。あきらめなさいよ」

「このまま引き返せば3人も浮かばれない」


口々に代わる代わる捲し立てる。


「やめろ。この洞穴には巨大な何かがいる。位置を気取られたくない。声を落とせ」

「わ、わかっている。そいつにおれたちのリーダーが食われたんだ」


そうか、足りない3人は各パーティのリーダー。


「各パーティのリーダー代理に一人ずつ聞きたい」

「生死は不明だ。まだ生きている可能性はある。うちのリーダーはスキルで物理攻撃に対してほぼ無敵なんだ。あのまま食われたとは思えない。だから捜索して欲しい」


『韋駄天』のリーダーは暗殺者で『すり抜け』という珍しいスキルを使える。物体を通り抜けられる能力があれば確かに食われるとは思えない。


「スキルを発動する間も無かったと思います。おれらのリーダーは【耐 久】と【体 力】が高い前衛の盾職でしたが、食われたらもう助かりっこない。きっと即撤退を望んでいると思います」


『赤い盾』のリーダーはガーディアンだったか。

襲われたのはもう何日も前らしい。モンスターの腹の中で耐えられるとは思えない。


「我々は調査という仕事で来たのだ。リーダーを失ったのは痛手だがまだ10人もいて撤退だなんて、いい笑いものだ。あのバケモノの正体を見極めるまでは帰らん」


『ロードメシア』は神殿出身者で固めたパーティか。頭まで固そうだな。だがこれも冒険者としてはある意味で正しい判断ではある。冒険者は冒険してなんぼって考えだ。


「食料を分けてくれ、我々は探索に行く」

「待てよ。三人を探すんだ」

「何言ってるんですか? 引き返しましょう」


これは迷宮の問題だけじゃないな。

リーダーを失い統制が取れなくなったパーティ。

それが失踪の一番の理由か。


「どうする?」

「無理やり引きずっていくか?」

「残りたい者は残れば良い」

「ここはリーダーがキチンと説得するのでございますよ」

「うーん。ん? リーダーって誰だ?」


四人がおれの方をじっと見る。


こんな面倒な時だけリーダー扱いかよ。

まぁいい。元々やる気だったし。

こういう意見の分裂が元で遭難というのはよくある。


「おれたちは『神鉄の結束』。S級冒険者パーティだ」


S級という言葉に全員が反応した。

仲間たちも反応した。「お前は違うだろ」とでも言いたげだ。

だが無視。おれがS級とは言っていないし。


「おれはリーダーのヴィンセント。おそらくお前たちよりも迷宮には詳しいし、救出は何度もしてきた。その経験から言わせてもらうがそもそもお前たちは冒険者として失格だ」


「「「……なぁ!」」」


「いや、迷宮調査に不向きと言える。迷宮内はモンスターにとって常に地の利がある。それに罠もある。迷いやすくできている」

「そんなことはわかっている」

「ならなぜお前たちは迷っている? なぜ襲われた? どうしてまだここにいるんだ?」


全員がおれを睨むが答えを一つに絞れないようだ。


「わからないなら教えてやる。お前たちに計画性がないからだ」

「なんだと? バカにしているのか?」

「いやお前たちはバカだ。まず3人のリーダーは暗殺者、ガーディアン、ヒーラーだろ。なんで並んで歩いてるんだよ」

「そ、それは……」


そもそも、『韋駄天』は斥候に長けたパーティ。『赤い盾』は盾主体のパーティ。『ロードメシア』は回復、遠距離攻撃特化のパーティ。


それをフォーメーションを組むわけでもなく各パーティで固まっていては意味が無い。

この迷宮は複雑だ。大人数が固まっていては調査なんて進むわけがない。何年掛ける気だったんだ?


「残った10名で何をしていた? どうして迷った? リーダーを失ってまず誰が統率をするか決めなかったのか?」

「ぐっ……意見が分かれて……」

「あのな。お前たちはすでに調査に失敗しているんだ。その自覚があるか? お前たちに選択肢なんて無いんだ。お前たちが次にするべきことはルートと脅威の情報を持ちかえり、3人が失踪したことを伝え助けを乞うことだったんだ。3人を探すことでも、自分たちだけ助かることでも、調査を続けることでもない。今のお前たちはただの遭難者だ。おれたち冒険者に黙って助けられてろ。意見を聞いてくれなんて厚かましいぞ」


「お、おれたちは自由な冒険者のはずだ。あんたらに指図られる謂れはない」


「迷惑だ。お前たちの失踪が長引けば、ギルドはまた救出を要請する。それで二次被害が拡大したらどうなる? お前たちは責任ある冒険者だったはずだが?」


各パーティはようやく大人しく救出される気になり、出口まで連れて行くことができた。


10名は地上に出ると疲れ切って動けなくなった。緊張の糸が切れたらしい。


「ありがとう。さっき言ったことは正しくその通りだった。自分たちが如何に無謀だったか実感した」

「せめて報告はキチンとするよ。少しでも情報が次につながるように」

「あのまま進んでいれば死んでいたか。今一度自分を見つめ直すところからやり直しか」


各々は礼と反省を述べても依りの神殿に搬送されていった。



「それで?」

「ああ、そろそろ夜が明ける。悪いがもう少しリーダーに付き合ってもらうぞ」



おれたちの仕事はまだ終わっていない。

生死不明となれば、3名もまだ救出対象だ。


「あの広い範囲を探すのは無謀ではないか?」

「ああ。だから計画的に行く」


夜が明ければ、また『トゥワイス』が使える。


一回目で無理でも、二回目なら可能性はある。



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