62.巣穴
一回目の捜索で分かったことが三つあった。
・1、モンスターは複数体いるが種類は一つ
・2、新階層と思われた竪穴は迷宮じゃない
・3、モンスターが迷宮の周りを囲むように穴を掘っている
隠し通路とされた二階層の大穴はモンスターがたまたま開けただけだった。
捕食が目的ではないのなら一体何をしているのか。
謎は多いがおれたちは三人を発見するだけだ。
それには闇雲に探してもらちが明かない。
「モンスターを全て倒して腹の中を確かめるわけにもいかない。だから奴らの巣を探そうかと思う」
「巣があるとなぜわかるのだ?」
シンシアがもっともな質問をした。
「ふむ、巣というより土砂を吐き捨てる場所であろう」
「あれだけの質量、消化して栄養にしているわけがないのでございますぅ」
「そっか。道に吐き捨てたら今度は通れなくなるし、どっかに捨ててるってことだね」
そうだ。奴らは道を開拓するとき大量の土砂を喰ってる。それを頻繁にどこか開けた場所に捨ててるはずだ。
「おお、それならそこに三人が埋まっていてもおかしくないな!」
問題はその巣にどうたどり着くか。
「一回目で見つからなかったのだろう? ならばそれ以外をくまなく探そうではないか」
「とてもできるとは思えない。12階層ある迷宮を囲んでいるんだぞ。それに堆積場が近場にあるとは限らない」
「むむむ」
皆が考えを巡らす。
「一匹おびき寄せれれば…‥‥」
「手負いにさせ、堆積場まで導かせる」
「そうだな」
クレアとツユキのアイデアを採用して、待ち伏せすることにした。
「あの手のモンスターを相手にどう戦う?」
「さっきから質問ばかりだなヴィンセント」
「おれはモンスターに関しては素人だぞ?」
あれが何なのかよくわかってもいない。
「この中でこの手のモンスターの討伐経験が多いのは誰だ?」
リナトリアとツユキが手を挙げた。
「ワタクシ、以前似たモンスターを狩ったことがございますぅ」
「拙者もある。地中をねぐらにする類は正面が面倒。そこで左右から胴を狙う」
「注意を逸らす優秀なタンクと遠距離ができる魔導士が必要でございますぅ」
「いるではないか。ここに」
「じゃあ、私とツユで挟撃だね」
「……その作戦におれ入ってるか?」
おれ戦闘になるといなくてもいいのでは。
「お主は『デジャブ』で機を報せよ。逃がしても、討伐してもやり直しなのだぞ」
「あ、ああそうだな。みんなおれの指示に従えよ」
「「「「おー」」」」
◇
派手な音を立て、奴らをおびき寄せる。
すると竪穴の下から這い上がって来るものがあった。
ギザギザの刃が幾層にもついた口をぽっかりとあけながら、うねるモンスター。
「おい、あれ大丈夫か?」
「問題ない」
シンシアは自信ありだが、直径五メートルの口だ。盾で防ぐようなものじゃない。
それにおれたちは垂直の穴にリナトリアの精霊魔法で浮いて足を付けているだけだ。
踏ん張りがきくのか?
せまるモンスター。
「聖騎士様、付与は必要でございますか?」
「否!」
シンシアが弾き飛ばされたら後ろにいるおれとリナトリアは即死だ。
「シンシア、信じてるぞ」
モンスターは突撃の姿勢。
身体を捻り回転しながら襲いかかった。
「シンシア、信じてるからな」
「くどい!!」
激突。
盾と回転する牙が激しく火花を上げた。
凄まじい衝突音。
「……な、止まってる?」
モンスターも先に進めず困惑している様子だ。
「い、今だ、二人とも!!」
作戦通り、タンクのシンシアが盾で進行を止めた。
その間に横穴からクレアとツユキが胴体にダメージを負わせる。
モンスターは体をうねらせた。
「ッ、シンシア、土砂だ。吐き出すぞ!!」
『デジャブ』で先を読んで伝える。
「そちらはお任せを!」
リナトリアが吐き出された土砂を操った。土砂はおれたちを避けていく。
「おぉ……! 逃げるぞ!」
モンスターは後退した。
「追うぞ!」
後を追う。
竪穴を降り続けるモンスター。
しばらく横穴を経由し、ついに開けた場所にたどり着いた。
そこは巨大な空間。
地下水が溜まり、大量の土砂。それに大量のモンスター。
こうして遠目に見ると、虫だな。巨大なミミズ。
それがワラワラと大量にいる。
「さて、どういたしますか、リーダー?」
「救出だけなら引き返す。だがこれは、この地方では自然なことか?」
「いいえ。これはかなり異常ですねぇ。放置すればこの地を穴だらけにして地盤が沈下。地すべり、崩落、それに迷宮も巻き込まれるでしょう」
「ならば駆除するぞ!!」
「隊列は先ほどと同様に! ヴィンセント殿、常に『デジャブ』で動きを読み続けよ! 拙者が『サトリ』で覚る!! クレア殿、拙者に合わせろ!」
「はい」
「わ、わかった!」
迫りくる巨大ミミズをツユキとクレアが斬りまくる。
後方からリナトリアが援護する。
おれはひたすらに『デジャブ』で先を読み続ける。
一匹一匹がA級冒険者の脅威になるモンスター。
それを次々と屠っていく。
おれは補助に徹した。
ツユキとクレアに襲いかかるタイミング、位置、数を把握する。
ツユキはおれを見ることでその全てを把握する。
クレアに指示しながら危なげなく切り伏せていく。
徐々にモンスターの数が減っていく。
するとモンスターとは別に何かが動いているのが見えた。
「いたぞ! 三人だ!」
「よし、助けに行こう!」
クレアとツユキが注意を逸らし、おれたちは三人の下へ。
「おまえら、よく無事だったな」
三人固まって土砂の中に隠れていたようだ。
おれたちを見て安堵した様子はなく、ひどく焦った口調でこう言った。
「あんたら早く逃げろ。アイツらはただの雑兵だ! 親玉が戻って来るぞ!!」
「え?」
地の底から他の十倍はある特大ミミズが姿を現した。




