表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/64

41.育成校入学試験


謎の少年と一戦交えた後、おれとクレアは無事受付を済ませ、入学試験に(のぞ)んでいた。


試験は戦いを見て、各コースに分配される方式だ。

よっぽどでなければ不合格にはならない。



ランカー育成コース……A級がS級に上がるための訓練

職業取得コース……職業の取得、上級職やサブ職業の取得

クエスト攻略コース……戦闘、探索、収集、各クエストの技能向上

スキル向上コース……スキルの理解を深める、実戦での訓練

基礎教育コース……文字、作法、計算などを一般学習

特待コース……マンツーマンで専属のトレーナーがつき、総合的に学ぶ



「うぉぉ、すげぇ、試験官倒したぞ、あの子!」

「あの子、クレアじゃないか? A級の!」

「すげぇ、伝説の冒険者の娘だ」



クレアは順当に合格を果たし、ランカー育成コースに入った。


「おめでとうクレア。さすがだな」

「うん、ヴィンもがんばって」


一足先にクレアは手続きに向かった。


さて、おれの試験だが少々問題がある。

この日起きる、三つの厄介事の二つ目。


「たった一月でFからEに昇格した、迷宮攻略経験者ですか。私が見ましょう」

「え、いやしかしここの試験は私が……」

「いいから、代わりなさい!! 君のような若者がベテランである私に意見するなど言語道断である!!」

「そ、そんな……」


一回目もこうだった。


強引に試験官として割り込んだ男。


おれを合格させまいと誰かが送り込んだ刺客だ。


誰かは分かっているけどな。



「ヴィンセント・アルトリンデン。三十歳、E級。職業取得コースとスキル向上コースを希望か?」

「ええ」

「そうか、軽く動きを見よう。合格するかは君次第だ」


試験官代理は挑発的で不気味な笑顔を浮かべた。


「『サモン』!」


その掛け声と同時に、床から魔獣が現れた。

召喚士というわけだ。


巨大な三本の首を持つ黒い狼が現れ、バラバラに爆発した。


「うわぁあぁ!!! 私のケルベロスがぁぁ!!」


相性が悪かったな。

スキルを使った後、魔獣が現れるまでに数秒ある。出てくる位置が判れば基礎方陣札と爆薬で造った『省エネ方陣筒』で倒せる。

とは言え、一回目はこの試験官が召喚士だとは知らなかった。


ケルベロス相手に結構苦戦したからな。

即爆殺合格を決めてやったぜ!


「貴様、まだ試験開始前だぞ!!」

「えぇ……いや、あなたスキル使ってんだから、開始でしょ」

「私が召喚獣を呼び出し終えるまで待てぇ!!」

「ええぇ……」


『デジャブ』で確認してみる。

横暴だが、突っぱねるとそれを理由に不合格にされるらしい。


他の試験官たちも見てみぬ振りだ。



「わかりました」

「フン、そんなことは常識だぞ。全く……『サモン』」


おれは召喚獣とやらが現れるまでちゃんと待った。


「世にも珍しいツインヘッドブラックサーペントだ。気を付けて戦えよ、牙には即効性の毒が――ぐへぇああ!! やめっ、いやぁぁ、なんで!?」

「え? 召喚士を倒す方が手っ取り早いし」


召喚が終わってから動いたぞ。

余裕綽々(しゃくしゃく)で話していたから蛇を(かわ)して簡単に殴れた。


「やめろ、これは試験だ!! 召喚獣と戦えぇ!!」

「はぁ?」


迫りくる二頭蛇。

『デジャブ』で攻撃を躱し、隙を伺う。


迫って来た一瞬のスキを狙い、目に攻撃することができた。

二頭蛇は怯んだ。


おれは距離を取り、『省エネ方陣筒』を二つの頭目掛けて投げつけた。


頭が吹き飛び、蛇は死んだ。


「おい、あれ見ろよ……」

「なんだなんだ」

「すげぇ、召喚獣を瞬殺かよ」

「あれってブラックサーペントの希少種だよな。A級でも手こずるって聞いたぜ」

「合格間違いなしだな」


ほほー、おれもついに目立ってしまう時が来たか。


「よくも、よくも私の大事な召喚獣を二体も……」


召喚士の試験官代理はまだやる気だ。

一回目はこんなことなかった。

あ、二匹倒しちゃったからか。

ムキになってる?


「おやめください! もう試験は……十分です! 彼の実力は審査できましたでしょう!?」

「ええい、私に意見するな若造!! 私があの魔獣たちと契約するにどれほどの時間と労力を掛けたか……」

「いや、知らねぇよ。自分から割り込んできたんだろ?」

「こんな、こんな結果は認められん!! 『サモン』! いでよ、我が最強の僕!!!」


現れたのは赤い鱗を持ち炎を吐くドラゴンにも似た魔物。


一気に試験会場の温度が上がった。


「ああ、なんてことだ……」

「誰か、教官を呼んできてくれ!」

「みんな逃げろ!!!」


それまでの召喚獣とは一線を画する存在感。

上級魔物、下級竜種、サラマンダーだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ