42.下級竜種 炎鱗大蜥蜴
三度タイトルを変えました。これで確定で行きます。お騒がせしましたm(__)m
冒険者育成校の入学審査。
おれを落とそうとする試験官代理は召喚士のスキル『サモン』により、サラマンダーを召喚した。
一回目には無かった筋書き。
おれが二匹の召喚獣を倒したことで強硬手段に訴えることにしたようだ。
「みんな逃げろー!」
試験会場は騒然とした。
これはもう試験じゃないな。
おれも逃げようか。
サラマンダーはその鱗から熱を放っている。
下級竜種に分類される、有名なモンスターだ。
「フハハハ、これまでのように手加減してもらえると思うな。身の程を教えてやる!」
「こんなことをして、育成校に居られなくなるぞ」
「私のキャリアは保証されている! 貴様には想像もできないだろうがな。この制裁も不慮の事故として処理される」
勇者といい、こいつといい、強力なバックが付いているようだ。
「このサラマンダーは貴様のために用意されたもの。レベルは55、貴様の今のステータスでは相手にもならん!」
おれを殺すためにそこまで?
ということは、一回目のときは温存していたのか。
闇討ちとか考えていたんだろうな。
正直、頭に血が上って正面から挑んできた今の方がいい。わかりやすくて。
サラマンダーといっても所詮はでかいトカゲだ。
ボリスに比べれば大した威圧感じゃない。
「なんだか申し訳ないな。おれの経験の肥しにしてしまうだけなのに」
「いつまでその余裕が貫けるだろうな? 召喚士がただモンスターを召喚すると思ったら大間違いだ!!! 『シンクロ』!」
誰かが止めに来る前に確実におれを殺す気だな。
ん? 試験官代理が静かになった。
サラマンダーが鋭い爪で攻撃してきた。見た目より早い。
『物理攻撃無効』を使い、攻撃を無効化した。
「あっつ!!」
物理は無効にしたが放出される高温は防げなかった。
おれが怯んだ隙に、サラマンダーは立て続けに攻撃を繰り返す。
「ぐっ!」
おれは『爆裂方陣筒』を投げた。
省エネ版じゃない。小さい鉄の筒に圧縮された局所的破壊の衝撃波、それがサラマンダーの足元へ。
「やったか?」
煙の奥から、鋭い攻撃が飛んできた。
油断していておれは吹き飛ばされた。
「ぐっ……」
「フハハ、サラマンダーは火属性だ! 爆裂魔法は火属性の上位属性。その廉価版の攻撃など、このレベルのモンスターには効かん!!」
属性の相性?
いやあんなのに耐性ある生物がいるっておかしいだろ!
いや、ボリスが言っていた。市販の方陣札の威力にはばらつきやムラがあると。
一番の攻撃手段なのに、後回しにしたツケか。
「どうだ! そのアイテムがなければ貴様はその程度なのだ!! 勇者様に逆らうなどおこがましい!!!」
コイツ、認めやがったな。もう隠す気もないか。
だが確かに不利な状況だ。
魔法を纏った物理攻撃、これが厄介。
呪腕で防げない。
魔法に対する理解と対処、それもボリスに言われたのに……
「くそ……し、しまった!?」
躱している間に、壁際に上手く追い込まれてた。
コイツ、考えてやってるのか? いや、さっきの『シンクロ』ってやつか。
逃げ場がない。
「フハハ、死ねぇ!!!」
大きな口を開け、正面にいるおれに炎を吐いた。
石で出来た床や壁を溶解させるほどの超高温の炎。
辺りは真っ赤に燃え上がった。
「なるほど、意識を共有化するスキルか。確かにモンスターに戦術が宿れば脅威だ」
「なに? なぜ消し炭にならん!!?」
右腕の呪腕が働いた。
『魔法攻撃無効』だ。
おれを巻き込んだかに見えた炎も、呪腕の力に引きずり込まれ消滅した。
正直、ここまでとは。
おれの足元の床は真っ赤に煮えているのに、脚は何ともない。
もちろん靴の性能とかではなく……
この呪腕は効果が表れる際、右腕だけじゃなく全身への攻撃も無効にしているのか。
何はともあれだ。
奴の決め手もおれには効かない。
なら、勝機は一つ。
まずは奴を挑発。
「もう終わりか? コケ脅しだな!」
「ぐぅ、調子に乗るな。貴様の攻撃は効かん。ならじわじわと嬲り殺してやる!!」
「ならやってみな! 一日やっても当たりはしない!」
『デジャブ』で爪を回避。
図体が大きいだけあって連続攻撃はない。
慣れて来た。
おっと?
突っ込んできたか。
確かにおれでもこうする。攻撃速度も範囲も上がった。
それに当たったら痛いじゃすまないからな。
「体当たりか。それがどうした?」
だがトラップ迷宮で迷宮ボスの攻撃を攻撃を避け続けたおれだ。
回避に専念したおれを捕まえられると思うなよ!
「ええい、ちょこまかと!!」
よし、今だ。
この距離なら。
やれる!
左腕からさっきのブレスを魔力に変えて放つ!!
「な、なぁ――!!」
渾身の一撃はクリティカルヒットした。
試験官代理の腹に。
「……がはっ!! な、なんで……」
「試験じゃないなら約束を守るわけないだろ」
モンスターと意識を共有している最中召喚士は無防備。おまけにコイツ自身は大した戦闘能力が無い。
おれを追い詰めるのに夢中になって、攻撃を避けながら接近されていることに気が付かなかったようだな。
「大したことなかったな」
召喚士が意識を失ったことでサラマンダーは消えるものと思っていた。
「あ、あれ……?」
だが、サラマンダーはタガが外れて思う存分暴れ始めた。
逆に被害が拡大していく。
「ああ!!」
試験会場は火の海だ。避難?
いや、放置したら怒られるか……
どんどんと施設が破壊されていく。
「ああ、うわぁぁ……しょうがないな」
おれは右腕を使うことにした。
こいつにはここしばらくの間クレアやボリスの打撃を吸収させている。どれだけの攻撃を無効にし、攻撃に転化できるかの実験だった。まだ完全なコントロールは難しいが、全部放出せず二割程度の威力に抑えれば十分だろう。
「やい、トカゲ野郎! こっちに――」
そう考え、実行しようとしたとき、サラマンダーの首が落ちた。
「はぇ?」
ドスンという音と振動。
駆け寄ると誰も居ない。首の断面を見るときれいに斬ったように見えた。
周囲を見渡すと、何人かいた。入学志願者って感じじゃない。ずっといたのか?
誰だ、この中の誰かがやったのか。
「今年は面白い人がきたね」
「本当に、興味ありますわ、その右腕……」
「これは余計なことをしてしまったかな?」
コイツらも勇者の回し者か?
神官風の若い男。眼鏡の奥の眼は淀んでいる。魔導士風のエルフの女。眼の下には濃い隈ががある。それに、暗殺者風の、細身で隙の無い男。マスクと頭巾で表情は読めないが、手には短刀。あれでサラマンダーの首を落としたのか。
まったく見えなかったぞ。
「やぁ安心していい。君は文句なく合格だよ、うん。そしてぼくが君の教官になる。よろしくねぇ~」
暗殺マスクマンが握手を求めたので、応じようとした。
「ああ、握手は止そう。うん」
呪腕のままの右手を見て手を引っ込められた。
フレンドリーなのか失礼なのか、距離感が近いのか遠いのか、なんか不気味なやつだな。
この人が教官?
なんのコースだ?
「ようこそ、冒険者育成校、特待コースへ」




