40.いざ冒険者育成校へ
タイトルを度々変更しています。混乱させてしまいましたらすいません。そろそろ落ち着くと思います。
「ひゃーすっごいねぇ。これみんな冒険者?」
「いや、ほとんどが貴族の跡取りと魔導士希望者だ」
おれたちは冒険者育成校への入学試験にやって来た。
王都の門と遜色ない、途方も無い大きさの門の下には、それでも溢れんばかりの人が集っている。
だがこの門の先には冒険者育成校の他に二つ、別の学校がある。
今日はたまたまその二つの学校の入試と重なっているのだ。
「育成校は毎月入学試験をやっている。他の王立魔道学院と王立中央学園は年一回。それがたまたま今日だったみたいだな」
「なるほどー。よく見るとなんとなくわかるね」
「ああ。ローブを着て隅を歩いているのは魔導学院の入学希望者だな。種族年齢様々。道の真ん中を歩いている従者を連れた未成年は学園に入学する貴族の子供だろう。あとはおれたちみたいな荒くれ者の無作法者たち」
「そうかそうか。どうりで視線を感じると思った。警戒されてる?」
「いや」
クレアはかわいいから目立っているだけだ。
「それで、どうなのヴィン? 夢だった育成校がすぐそこですが?」
「そうだな。ついに来たって感じだ」
自分に冒険者として欠けているもの。それを補うために育成校へ行こうと決めたのは、もう何年も前のことだ。金を貯めて、王都に行く。決意はしていたが、まさかこんなにすぐ、それにこういう心持で入学することになるとはな。
ここには、職業取得とスキル向上を目的にきた。
だが、やることは他にもある。
パーティメンバーを探す。
シンシアが入るおかげで、おれの職業が決まれば他も誘いやすい。
伝説の冒険者の二世が二人だからな。
それに支援も取り付けやすい。
冒険に必要なのは金と情報だ。パトロンがいた方が望ましい。
それに移動の脚や、アイテムを安定して確保したり、食料、他国に行く際の手続きなど細々した雑務を任せるサポーター。七大迷宮を攻略するなら、迷宮以外の煩わしい問題に捕らわれている暇はない。
さらに、武器、アイテムの製造から修繕まで請け負ってくれる専属の武器職人や錬金術師。
人脈づくりだな。
「忙しくなりそうだ」
「まだ入学もしてないよ?」
「それは大丈夫」
「はっ! ヴィンだけズルいーぃ! 二回目でしょ!? 試験内容知ってるじゃん!」
そう、おれはこの試験の行く末を知っている。
おれたちが不合格になることは無い。
ただ、ちょっと面倒はいくつか起きるがな。
おっと、そろそろか。
大きな三叉路に出て、人が散って疎らになった時だ。
一つ目の厄介事がやってきた。
「はぁはぁ、ふぅ……ぬ、はてどっちだったか?」
ローブを目深に被った男がキョロキョロと辺りを見渡す。
近くにいるのはおれたち。
「そこの者たちよ。すまぬが学園はどっちであっただろうか?」
「それより、御仁。追われているのでは?」
「な、なぜそれを!?」
一回目もこのおっさんに同じ質問をされた。
だが一回目は学園のことなんて知らなかったからまごついている間に追手に追いつかれてしまい、おっさんは連れて行かれてしまった。
別にそんなことで罪悪感など感じはしないが、おれはその時重要なことを耳にした。
追手の一人がこう言った。
『陛下、お戻りください!』
へへへ。
これは、いいパトロンを見つけた。
恩を売るチャンスだ。
「もうすぐそこまで迫っていますよ」
「うぅ~、こんなことを頼む義理ではないのは承知だが、た、頼む足止めしてくれ。奴らは儂の部下だ。ちょっと孫娘の試験を心配で覗きにきたら騒ぎになるからと絶対NGを出されてしまってな」
いやそんなことかよ。あれ? おれの聞き間違いだったのか?
「いいでしょう。お孫さんを心配するその親心はわかります。ここはまかせて行って下さい。真ん中の道です」
「おお、恩に着るぞ!」
おっさんは走り去っていった。
「親心?」
クレアが不審そうな顔だ。
「ちょっとした人助けだよ。院長の教えに従ったまで」
「ふーん。手伝う?」
「いや」
すぐに追ってはやって来た。従者程度なら軽く一ひねり。後で問題にならないように、やさしくケガさせないように倒す。
「お待ちください! お待ちください!!」
「おっと、ここから先はおれを倒してから行きな」
「ちょ、邪魔しないで下さい!! どかないと斬りますよ!」
「フン、やってみな」
「くっ、怪我しても知りませんよ!?」
先行した追手の一人が剣を抜いた。
剣士か!
卓越した剣捌きは抜いた瞬間に分かった。
いけない。
ただの家臣ならおれでも簡単に倒せると思ったが、甘い考えだとやられる!!
おれは即座に『デジャブ』の重ね掛けを行った。
息もつかせぬ怒涛の剣撃。
七つの斬撃。
おれはそれらを紙一重、ギリギリで躱した。
「ぼくの『神閃七連』を躱した……!?」
躱せた。反撃するつもりだったが、躱すのでやっとだった。
クレアの『加速』状態と遜色のない動き。
彼がおれに手心を加えていなかったら、今頃バラバラだっただろうな。
「あ、あなたは……!」
「やめとこう。試験前に君みたいな奴とやり合うと予定が狂う」
「ひ、人のことを制しておいて勝手です。ですがこちらも急ぎます。失礼します! ヴィンセントさん!」
さすがにこれだけ時間稼ぎしたんだ。
十分だろう。
「ヴィン、今の何だったの?」
「さぁ?」
「知り合いじゃないの?」
「え? いや、初対面だ。一回目は話さなかったからな」
「いやでもヴィンの名前知ってたじゃん」
「あれ? そういえば確かに」
誰だ?
おれにあんな強い知り合いいないぞ。
これから試験だってのに、調子狂うな……




