15.ステータス
勇者との決闘後。
おれは孤児院で強壮丸の副作用から回復するまで世話になった。
その間、クレアが面倒を見てくれた。
迷宮の攻略やクレアとのことを院長にお祝いしてもらい、和やかに過ごした。
「クレアさんは気が利くし、お手伝いもテキパキできるし、あんなにかわいくて若い子が……ヴィンにはもったいないくらいですね」
「おれもソウ思います」
バリバリの行動派にして、何でもこなすオールラウンダー。
おれは完璧主義の慎重派。
できると誇れることは探索ぐらい。
そういえば結局、彼女がおれのどこを好きになったのか、まだ聞いていなかった。
「あ、そうだ。ねぇ、ヴィン。まだ聞いてなかったや」
「ん、なんだ?」
「ヴィンって好き嫌いある?」
「――めちゃくちゃある」
「こらー」
おれは疑問をそのままにしておいた。
まるで夢の中にいるように居心地がよく、ハッキリさせたいと思わなかったのだ。
やがておれの身体も回復し、二人で冒険者ギルドに顔を出すことにした。
いろいろとこれからのことを決めたが、ギルドで確認するべきことがある。
ステータスだ。
ギルドには『鑑定』の魔導具があり、金を払うとステータスを調べてくれる。
夜でもギルドは賑わっている。
おれはいつも通り、表から行こうとしたがクレアに止められた。
なぜだろう?
ああ、おれと並んで歩くところを冷やかされたくないんだな。
まぁ女心は繊細だからな。
裏口からこっそり入り、こそこそと職員に頼んだ。
いつもは通されない個室に通された。
「こんなところあったのか」
「今やヴィンは有名人だからね」
「え?」
「はい、きっと根掘り葉掘り話を聞かれますよ」
なんだ?
勇者を殴った感触でも知りたいのか?
「何せ迷宮を攻略した人ですからね。迷宮ボスをどうやって倒したのかとか、普段どんな訓練をしているのかとか、今日はみんなそればっかりです。家に行こうって人もいましたよ」
うぇ、おれの家まで?
孤児院にいて良かった。
「それに、A級の勇者を倒したヴィンさんのステータスも謎でした。私も知ることができて光栄です」
職員は『鑑定』を発動した。
少し、ドキドキする。
たぶん相当上がったんだろうが、結局ここまではっきりと知る機会が無かったからな。
「す、すごい……これでアマチュアだなんて。間違いなくアマチュア最強ですよ!!」
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ヴィンセント・アルトリンデン(30)♂
【職 業】:アマチュア冒険者
【レベル】:31
【体 力】:C[1100 / 2000]
【耐 久】:C[ 200 / 2000]
【膂 力】:C[1200 / 2000]
【速 さ】:C[1400 / 2000]
【知 力】:C[1100 / 2000]
【運 気】:E[ 250 / 500]
【魔 力】:B[3800 / 5000]
【精 神】:A[6700 / 8000]
【器 用】:B[3900 / 5000]
【スキル】:『デジャブ』(Ex[1007800/ 1000000])
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「ウソ……これが、おれ?」
「お化粧デビューの女子みたいなリアクションだネ」
数日前までレベル8だったのに。
勇者との決闘でさらに上がったとはいえ、まさかレベルが30を超えているとは!
しかもAがある!!
いや、全体的に飛躍的に伸びている。
「ステータスだけならB級に相当しますよ」
「あ、ああ……」
「【精 神】すご! あとちょっとでSだよ!」
たぶん『デジャブ』による死の経験を繰り返したことで特別【精 神】が向上したんだろう。
【魔 力】と【速 さ】も迷宮ボスとの戦闘による経験値によるもの。
【体 力】【耐 久】【膂 力】【器 用】は――そうか、勇者との二度の決闘だろう。
驚いた。
思えば、おれの布団の中で寝ていたクレアを持ち上げたときにおかしいと思ったんだ。
クレアの背格好で、あんなに軽いなんて。
そうだ。クレアが軽いんじゃない。おれが強くなっていたんだ!!
「ピーン。今失礼なこと考えてるでしょ!」
鋭い。何か話題を変えないと。
「いやぁ。ところでスキルランクの‶Ex〟ってなんだ?」
「あ、そう言えば……見たことないですね」
スキルについて何かわかればと思ったが……
「おかしいですね。スキルポイントがマックスまで貯まっているのに、スキルが一つということは派生スキルが獲得されなかったんですね。ということはこのスキルの効果が上昇したという事でしょうが、う~ん……」
「EってことはもとはFだったの?」
「いや、元々スキルランクは表示されていなかった」
「……意味わからなすぎ」
通常スキルは『筋力上昇・初』(D [500/1000])という風にスキルのランクが表示される。
だが『デジャブ』は(-[999999/1000000])と、カンスト前はランク表示すらなかった。
スキルランクはF~Sで表記される。
Exというのはどの位置にあたるのかなぞだ。
だが『トゥワイス』が起きるようになったことから『デジャブ』の効果が上がったことは間違いないだろう。
不思議なのは通常『デジャブ』でもかなり魔力を消耗するのに、『トゥワイス』はどうやって発動しているのかだ。
「そもそも『デジャブ』なんてスキル自体見たことがありませんし、王都のギルド本部なら何かわかるかもしれないですが」
「そうか」
「まぁ今日のところはステータスを確認できただけでも良しとしようよ」
「そうだな。ところでクレアのステータスは?」
「ん? 内緒」
「鑑定料なら奢るぞ」
「内緒~」
なぜだ?
あ、そうか年齢だな。
こいつ、おれをおじさん呼ばわりしていたが、自分も微妙な年頃なんだな。
まぁいいか。
続いてギルドマスターへあいさつに向かった。
「勇者はすでに発った。連行されたというべきか、この街でのこと以外にも余罪があるかもしれないからな。王国の監察に目を付けられたらしい」
「そうか」
「改めて礼を言うぞ、ヴィンセント。我々は冒険者たちを死地へと追いやり続けるところだった」
「いや……あなたには借りがある」
小さい子供が冒険者ギルドで仕事を斡旋してもらうなどできない。
それでもなんとか金を稼ぎ、冒険者を目指すおれに手伝いを許可してくれたのはこの人だ。
全く食えない時、おれの書いた地図をギルドに置いてくれた。
人のために何かをする。
院長が言っていたことを体言していた良いお手本だ。
「偏屈なくせに義理堅い野郎だ。……それで、これからどうするんだ?」
「まずは冒険者になる。プロの冒険者に」
「だと思ったぜ。いつでも来い、おれが試験してやる」




