14.スキンシップ
目が覚めると、クレアが上で丸くなって寝ていた。
「またかよ!!!」
「にゃは!! びっくりしたー!!」
孤児院だ。
クレアが上で寝てるのも前と同じ。
また繰り返しか!!
今回は三度め?
「お、おれは勝ったか?」
「もうー、忘れちゃったの?」
クレアに頭を引き寄せられて、口付けされた。
「思い出した?」
「……そうだ、思い出した……」
心臓がバクバクする。
「くっ、おれはお前にとどめを刺されて意識を!!」
「ごめ~ん!! 私もキスで失神するとは思わなくて……」
「あらあら、強壮丸を飲んであまり興奮するようなことは避けてね、クレアさん?」
クレアがすごい勢いでおれから離れた。
「それと、ヴィン」
「はい」
「『誰かのためなら命を懸けてもいい』なんて思い上がらないことです」
「はい」
「あなたが軽々しく賭ける命、それはあなただけのものだと思う?」
「いえ」
「もう三十歳なんだから、親を不安にさせないでちょうだい」
「はい、すいません」
もう泣きそうだ。
「でもクレアさんのためによくがんばりましたね。大人としてはイマイチですが、男として冒険者としては成長しましたね」
「院長……」
良かった。
これからは綱渡りのギリギリの闘いは避けよう。
もっと圧倒的に、完璧な準備をしなければ。
「じゃあ、ヴィン。安静にしていて。あまり興奮することはしちゃだめよ」
「し、しませんよ」
クレアも高速で首を縦に振る。
「……なんで孤児院なんだよ」
「だってヴィンの家知らないし」
「そりゃそうか」
おれにとっては五日目だが、実際は三日目。
それでも語らうには時間が無さ過ぎた。
おれたちはお互いについて知らなすぎる。
「あ、えっと……あの後あったこと教えるね」
「ああ」
クレアからその後のあらましを聞いた。
勇者は降格。
ルーアンは冒険者資格はく奪の上、魔導士協会に連れて行かれた。
さらに朗報があった。
迷宮の攻略報酬と獲得した財宝、アイテムがおれとクレアの二人の所有として認められた。
「書類上の手続きはいろいろあるけど、ルーアンの獲得分は今回の処分で没収。勇者は賠償で処分の軽減を求めてそれが認められたわ。それを私たちに割り振るってことらしいよ」
「そうか。それっていくらだ?」
「3000万ゴールドだって」
「そうか……なぁ!!!!」
心臓に悪い。
「一人、1500万ゴールドか」
「いや、一人3000万ゴールドだよ?」
「ナニィィ!!!!」
「まだアイテムのほとんどは査定が終わってないからもっと増えるよ」
「うぇぇぇ!!!!」
「安静にしてなさいって言ったでしょ!!! もう!!!」
「「はいぃぃ……」」
色々と心臓に悪い報告ばかりを聞いていたら身体が休まらない。
そこでおれはクレアのことを聞いた。
「なぁ、クレアの両親ってーー」
度々出てきた『ママ』のこと。
クレアは伝説の冒険者を両親に持つ、生粋のサラブレッドだったのだ。
「ヴィンのこと、手紙で伝えておいたから。もし家のことで何かあっても護ってもらえるよ」
「すごいな、クレアが強いのも納得だ」
「まぁね」
それと、『二回目』の確認をした。
昼頃にまた眠りについたことで決定的となった。
◇
「わかる。二回目だ」
三日目も二回目が起きた。
睡眠によってだ。
「なるほどな。分かって来たぞ」
上で丸まって寝ているクレアを起こさないよう、そっと頭を撫でた。
おお、何だこれ。
髪の毛ふわっふわする。
耳も柔らかい。新触感だ。
観察しているとおれの上で丸まり、絶妙なバランスで落ちない。
なぜこんな不安定なところでわざわざ?
自分のものだと主張しているのか。
まぁ悪い気はしないな。
夕方ごろ。
「もう、なんで起こしてくれないの!?」
楽しくてつい。
「すまん、クレア。二回目だ」
「え、じゃあ、全部知ってる?」
「ああ、おかげでしっかり休めた。でもこの現象も良し悪しあるよ」
「そうかな? すごい便利でしょ」
「院長に怒られた、同じ説教二回目……」
「ああ、そっか」
すごいダメージだ。
しかも二回目の方がちょっと長かった。
クレアが寝ていた分、遠慮が無かった感じだ。
院長だってクレアの耳フニフニして遊んでたのに。
「色々試す必要がある。寝ないとどうなるとかな」
「そうだね。それにステータスも確認して、装備を揃えて……あ、育成校はどうする? もうお金あるけど、今のヴィンなら行かなくても」
「行くさ。もちろん冒険者試験は先に受けるけどな」
今のステータスならば確実に受かる。
冒険者育成校はその後でもいい。
おれに『デジャブ』以外のスキルが発現しないことや、『二回目』のことについて何かわかるかもしれない。それに――
「もう院長に怒られたくはないからな」
一か八かではなく、きっちり、実力をつけて冒険者になる。
もう心配を掛けないで済むように。
そのためにも育成校に行けるなら行った方がいい。
「良かった。私も行きたかったんだ!」
おれたちはこれからのことについて話し込んだ。




