↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/64

11.敗北

 


「んなっ!?」




 おれは勇者の攻撃を回避した。



「おい、今の見たか?」

「あいつ、あんなに強かったか?」

「アマチュアのくせになんてスピードだ」

「ありゃ【速 さ】C以上はある」



 ばかな。

 昨日確認したおれの【速 さ】はEだったはず。

 レベルアップしたとしてもそんな急激に上がるはずが無い。


 攻撃を避けていただけで、ステータスが急上昇するほどレベルアップするなんておかしい。

 そもそも四等分でそれほどの経験値が得られるはずが無い。

 それに勇者もおれと同じ経験値を獲得したはず。



 ルーアンやクレアも驚いている。



 もしかして、あの迷宮ボスの本体は迷宮内の『トラップ亜種』では無くて、おれが「爆裂方陣札」で破壊したあの眼玉の方だったのか?



 とどめを刺したおれが一番多くの経験値を得たってことか?



 ―――それで急激にレベルアップした?



「アマチュアが調子に乗るなぁ!!」

「ぐっ」


 怒りに任せた大振りの拳をおれは避けた。


「このぉ!! このぉぉ!!!」


 やはり、見える。

 まだ子供だった時、冒険者に師事して戦い方を教わったことがある。

 スキルは得られなかったがあの時の教えが生きている。


 相手の動き出しの前。


 筋肉の動き、身体のバランスの変化で、次の動きが読める。


 今までは反応しても身体が付いてこなかった。



 間違いない。


 おれの身体が早く動いている!



 ステータスが大幅に上昇しているんだ。

 なら、魔力もか?



『デジャブ』――打ち止めだと思ってたが、いけるかもしれない。



 今の【速 さ】なら『デジャブ』後のフリーズがあっても優位に立てる!!



「すげぇ、A級冒険者の攻撃を避けているぞ!」

「大雑把すぎるんだよ!!」

「勇者はステータス任せすぎるんだ」

「アマチュアの方は意外と動けてるな」

「基本ができている! まるで冒険者のような身のこなしだ!!」




 勇者の大振りの拳を避けながら、カウンターを狙い『デジャブ』を発動。



 >隙を突いたおれの攻撃

 >勇者はそのカウンターに反応

 >反撃のカウンターでおれの鳩尾を拳で貫いた


 >「ガハッーー!!」


 >おれは悶絶し、膝を着く



 ――発動終了。




 よし!!


 ここだ!!



「ぐはっ!? ばかな……勇者であるこのぼくがぁぁ!!!」


 攻撃は当たった。

 おれの攻撃が。


「勇者であるこのぼくが……このぼくがぁぁ!!」



 勇者のカウンターをおれは膝でガードし、カウンターの上に勇者が重ねたカウンターにさらにカウンターを重ね、再び勇者の顔面に頭突きを食らわした。




「す、すごい! すごいよヴィン!!」



 クレアの声援の後、野太い歓声が上がった。




「無茶苦茶だ、完全に勇者の動きを読んでやがる!」

「こりゃ意外な結末だな」

「勇者と言ってもスキルの恩恵が無ければ大したことないな」

「アマチュアは何か先読み系のスキルを持ってるようだな」

「『予知』か? あれって戦闘向けじゃないだろ」

「『直感』じゃないか? 戦闘中に使えるのはあれぐらいだ」

「あいつ……なんでアマチュアなんだ?」



 色々とおれのスキルについて考察が巡らされている。



 もう決着は着いたと思われているらしい。



 だが、【体 力】が高い勇者はあれだけの有効打を受けてもまだ立っている。



 次で決める。


「――!」


 急に勇者のスピードが上がり、おれとの距離を詰めて来た。


「うぉ!?」


 これは『身体強化』か!?


 スキルを使わないという制約を破った。

 だが、だからと言って反則負けというわけではない。

 格下にスキルを使った不名誉な勇者として永遠に語り草になるだろう。



 おまけにその格下に負けたとあれば、こいつは終わりだ。




 一瞬、戦意が揺らいだ。


 何を躊躇している?

 こんな野郎のために情けなんか――



「――ぐっ!!」

 

 接近した勇者の攻撃をおれはまともに受けてしまった。


 油断?


 いや、違う。



 身体が重い。

 さっきのような動きができない。


 強壮丸の影響がまだ残っていたのか?



 身体が――動かなくなって……




「ああ、ヴィン!?」




「ふぅ、ふぅ、ふしゅぅ……ぼ、ぼくをコケにしやがって。勇者であるこのぼくをぉぉ!!」




 何かが身体に絡まっている!?




 動かないおれへ勇者の攻撃が繰り出される。


「このっ、このっ、ははは!!! いい様だ!! 所詮お前はアマチュアなんだよ!!!」

「や、止めて!! ヴィンが死んじゃう!!!」


 なんだ?

 何が起きてる?


 おれは倒れ、執拗に顔や腹を蹴られた。




「参った」は言わない。

 それだけを固く決めて耐え抜こうとした。


 ボキリ、と身体から嫌な音がした。


「ぎゃあああ!!!!」








 気が付くとクレアが決闘を止めに入っていた。


 ああ、意識が遠のく。

 駆け寄ってくるクレア。

 その狭まった視界の中で、勇者はクレアを強引に引き寄せ、その唇を奪って見せた。


 まるでおれへ見せつけるように。


 彼女は泣いていた。





「お前がここまでやるとは思わなかった」


 その声だけが響いた。

 ルーアンか?


「悪いが私は彼を国から任されているのでな。なーに、金と女は融通してやる」


 ルーアンの得意魔法は闇魔法だ。

 幻覚、混乱や催淫などの状態異常系の後方支援で重宝される。


 身体の違和感はコイツか!!


 くそう、卑怯者!!

 決闘に横やりを入れるとは!!

 姑息、卑怯、反則、ズルだ!!


 おれは負けてない!

 だれか見ていなかったのか!?


 だれか、だれか助けてくれ!!!


 誰か……



 クレア……すまない――


 ◇


「うわぁぁぁぁあああ!!!」

「うにゃぁぁぁぁああ!!」


 ネットリと纏わりつく悪夢の沼から、這い出た感覚。



 久しぶりに空気を吸った気がした。


 気が付くと、心配そうな顔で様子を伺うクレアがいた。


「だ、大丈夫?」

「すまん! お、おれは……」


 思わず彼女を抱きしめた。


「ちょぉぉぉ!! えぇぇ!! どうしたの!?」




 しばらくして。


 背中をポンポンと優しく叩かれ、彼女の肩越しに見える周囲の状況をようやく把握した。



「あ、ここは、孤児院、か?」

「そうだよ。悪い夢でも見た?」



 反応でわかった。

 これは決闘の前と同じ。




 また時が巻き戻っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。