シンフォート家 2
「奥様、夕食の準備が整いました。」
ドア越しに声がすると、お母さんの身代わりは早かった。
「わかったわ。」
そう言って、ドアを開けるとメイドに笑顔を向けた。凄いな…さっきまで娘の口を塞いでた人とは思えない。
「レイの事は頼んだわよ?」
メイドに私の事を頼むと颯爽と美しい銀髪を靡かせて、部屋を後にした。
あぁ、また親があんなのか。きっと成長したら、もっと悪化するんだろうなぁ。
物思いにふけっているうちに、メイドが私の目の前までやってきていた。
このメイドさんも綺麗だよな。中身がどうか知らないけど。なんかされても抵抗なんて出来ないけど、心の準備は大切だと思う。
メイドさんは、ゆっくりと私に手を伸ばしてきた。さて、また口を塞がれるか、それとも叩かれるのかな?目を逸らしたら負けた気がするし、なんかやだなぁ。
ということで、メイドさんの目を真っ直ぐ見つめてみた。すると、メイドさんは一瞬息を呑んでから、一筋綺麗な瞳から涙を流した。
え?いやいやどうしたの?大丈夫?待って、泣かないで。
そんな思いから私はメイドさんの目元にまだあまり思い通りに動かない手を伸ばして、涙を拭った。
「レイ様っ。申し訳ありません…。私の力が及ばないばかりに、あの様な目に…。」
あの様な目に、ってさっきの見てたのか。でも、そっか見てなきゃあんなにタイミング良く部屋に入ってこれないよね。
私は目の前で泣いているメイドさんに困惑していた。だって、今まで私は謝罪をする側で、謝罪されるなんてことは無かったから。この世界でも、親から愛されないんだって思った。でも、家族じゃなくても私の事を愛してくれるの?
「必ず、必ず私がレイ様を御守り致します。レイ様は私達の宝でございます。沢山のことを見て、聞いて実行して、レイ様の望む事を行ってください。私達、使用人はその為に必要なことは、何を置いても優先させて頂きます。」
こんな力もない子供の私にこのまで言ってくれる、今までそんな人はいただろうか。いや、いなかった。こんな私のために、涙を流してくれる人がいるのかと思うと嬉しくなった。
「…レイ様には笑顔が良くお似合いですね。」
えがお?笑顔って…私笑ってたの?
最後に笑ったのっていつだっただろう?まだ、私の事を両親が疎ましく思ってなかった時?
「レイ様?私達使用人はレイ様の味方ですよ。もちろん旦那様も。旦那様は王都での仕事が多いので、領地にお戻りになられる事は少ないですが、いつもレイ様の事を気になさっています。本日の事にしても、エリカ様が企画なさったパーティーを蹴って、レイ様のためのお薬を調達なさってから、王都にお戻りになられたんですよ。」
エリカはお母様の名前だ。
そっかぁ。お父様は私の事を愛してくれているんだ。
この世界では、私は誰からも愛されていないわけじゃない。もちろん愛してくれない人もいるけど。それは当然の事で、すべての人から愛されたいなんて、ただの傲慢だ。少なくても、私を愛してくれる人たちがいる、それだけで十分だ。その人達のために、私ができる事をしよう。
まずは、この世界の事を知ろう。




