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【お見舞い編3】4人と鈴 『突撃お宅訪問』

 鈴は家から徒歩二分ほどのコンビニでさしあたって必要な食糧を買いこむと、重い身体を引きずるようにしてマンションのエレベーターに乗り込んだ。マスクを押さえてゴホゴホと空咳を繰り返す。


「はあ……。あー。……疲れた。一人暮らしってこういうときに大変……。えっと、バナナと、サラダと、スポーツドリンクと、冷却材に、レトルトスープでしょ。これで充分かな?」


 コンビニの袋を覗きながら、朦朧とした頭で数日生きていけそうだなと判断する。心配してくれた二渡が、仕事終わりに寄ってくれると言っていたから、何か足りないものがあったら頼めばいい。頭痛がするし、深く考えないようにする。

 ポーン、とエレベーターが到着したことを知らせる音が鳴り、まもなく扉が開いた。

 マンションへの道中と同じように時間をかけてずるずると身体を運び、角を曲がろうとして、鈴は廊下を見て固まってしまった。


「……な!?」


 こちらに背を向けた大柄な男が一人。サングラスを掛けてマスクをした茶髪の男が一人。サングラスを掛けた黒ずくめの黒髪の男が一人。セーラータイプのシャツに、短パンを穿き帽子を目深に被った少年が一人。計四人の男の姿が廊下の奥にあった。

 統一性のない怪しげな四人組がマンションの廊下で陣取っているなんて、異様な光景だ。空き巣集団とか? 暴力団のお礼まいりとか? 借金の取り立て? 通報すべきか、誰かに助けを求めるべきか、一旦帰るか。混乱した頭では何が最善手か決めきれない。


 と。観察を続けていると、ふと、全員なぜだか見たことがあるような気がしてきた。それはもう、日常的に、身体つきを覚えてしまうほど近くで――


「孝司くん、シオンさん、宗佐くん、美有貴くん?」


 鈴が呼びかけると、四人がそろってこちらに驚いた顔を向けた。


「あ! 鈴ちーだ! もぉおお! どこ行ってたんだよう!」

「よかった……。インターフォンを押しても応答がないから、熟睡してるのか、意識を失ってるのか分からなくて困ってたんだよ」

「お前、バカじゃねーのか。何、病人がほいほい外出歩いてるんだよ。寝てろよ」

「鈴。平気? 歩ける?」


 鈴が向かうよりも早く、四人は鈴の周りを取り囲んだ。シオンの手がコンビニのビニール袋を奪い取り、宗佐に肩を支えられ、美有貴に手を繋がれ、孝司が鈴の額に軽くデコピンをする。


「いたっ。え、なんでデコピン……。じゃなくて、四人とも、何でここにいらっしゃるんですか?」

「お見舞いだよ! お見舞いしにきたの」

「平良に風邪引いたって聞いたからね。心配になって見に来たんだよ」

「そんな。皆さんに心配していただくほどの症状では……。うつさないようにって、お休みいただいただけなんですよ。大丈夫、大丈夫ですから」


 慌てて首を振って否定するが、孝司が鈴の顔を押さえつけ、熱を測るように額に手を当てた。


「熱あるじゃねーか。ああ?」

「こ、孝司くん、これは――」


 うまい言葉が見つかる前に、鈴は激しく咳こんで言葉をとぎらせた。


「無理に喋らなくていい。鈴。俺たち、家の中に、はいっていい?」


 宗佐がゆっくりとした口調で尋ねて来る。鈴は口を開こうとして、喋らなくていいと言われたことを思い出し、渋々ながら小さく頷いた。


「まあ、入るなって言われても入るけどな」

「最低だねー、孝。オレも入るけどね」

「シオくんもサイテーじゃーん。あはは」

「具合悪い女の子放っておくのはオレの信念に反するよ」

「なにかご飯、食べた?」


 続く質問に、鈴が首を横に振ると、宗佐が少しだけ嬉しそうな顔になった。


「俺たちが、作るよ」

「うん、作るのはオレだけどね」

「わかってる。俺も食べたい」

「あ、そういうこと」


 シオンがやんわりと訂正するが、食い意地の張った宗佐の言いたいことは『自分の分も作って欲しい』だったらしい。


「じゃあ、ぼくも食べたーい」

「お前ら、見舞いに来たんじゃねーのかよ。晩御飯食いに来ただけみたいになってっけど」

「本当だよ。何食分作るのも何人分作るのも同じだけど、全然違うからね」


 いつも通り仲のいい四人の会話に、鈴も思わず笑ってしまった。


「あはは。お見舞い、来て下さっただけで嬉しいですよ。ありがとうございます。どうぞ」

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