【お見舞い編1】4人と平良 『あのこは特別』
「おっはよーう!」
「うるせえ静かに入れ」
「おはよう、みーくん。宗佐」
「ふあ……おはよう」
美有貴が元気に楽屋に入ると、孝司から苦情が、シオンから挨拶が返ってきた。二人とも、長いテーブルの対角に座っている。互いが視界に入らないようにしているのかもしれない。
一緒に来た宗佐は、あくびをしながら、ソファーにおぼつかない足取りで向かって行き、そのまま座りこんだ。
「あー、ぼくもそこ座りたいと思ってたのにー。ずるい。ひとり占め禁止だっ」
「ぐえ」
美有貴は宗佐の腹の上に、遠慮なしに馬乗りになった。完全に目を閉じていた宗佐にとっては不意打ちの攻撃だった。
「ぐえって、あはは。面白い」
「みー。笑ってないで。重いから。どいて」
「やーだよー」
美有貴はべーっと舌を出し、宗佐の両腕をとらえるとますます体重をかけた。美有貴のいたずらには大概慣れている宗佐は、軽くもがいただけで諦めたように力を抜く。
「えー。秦っち、この状態でも寝るのー!? ねえったら」
「諦めろよ。朝早ぇし、ねみぃんだろ」
「みーくん、こっち来て台本でも読んでたら? お菓子もあるよー。おいでおいで」
不満げに唇を突き出した美有貴は、手招きするシオンに向かっていこうとした。コンコン、とノック音が彼の足を止めた。
「鈴ちーかなっ!」
さっきの不満そうな顔はどこへやら、美有貴の目はぱっと輝いた。
「どうもお。失礼します。おつかれさまでございますー」
まったりとした口調で現れたのは、衣装担当する小柄な女性スタッフ――ではなく、ウェーブがかった髪をした、穏やかそうな顔つきの男だった。
「あれ」
「なんでお前?」
「たいらん、鈴ちーは?」
「……ん?」
「どうも、平良です。今日はよろしくです。そんな、そんな、全員で残念そうな顔してこっち見なくてもいいのにー」
平良に言われて、美有貴はそれぞれの顔を眺めた。孝司は残念そうと言われたのが心外だったのかしかめ面をしているし、シオンはいつも通り楽しそうに微笑んでいて、眠たそうな宗佐は、まだ状況がよく読みこめていないらしく、おおげさなほど首をひねっている。
「で、鈴ちゃんはどうしたの? 着替えがなくちゃ始められないよ」
「いや、だから、俺が今日の担当だからー。今から衣装着替えてもらいますから」
「は? 聞いてねえぞ。休みってことかよ」
「はい。それです。あの子休みです」
「えー。なんで? なんで? なんかあったの?」
「は、まあそりゃ、なにかあったから俺がここにいるんだけど――」
「鈴になにかあったの」
すっかり眠気が覚めたらしい宗佐がずずいと平良の脇に立った。男性の平均身長よりはるかに高く、体格もいい宗佐に迫られたせいで、平良がすっかり委縮してしまった。
「よ、四人で責めなくてもいいじゃないすかー。ただの風邪ですよ。喉と熱が酷いらしいですよー。皆さんにうつるといけないんで、休んでもらいました」
「なんだ……風邪か、風邪ね」
「平良、鈴はいつ戻る?」
「えー、心配だよー。うつるかもってことは超咳してるってことでしょ?」
「いやいや。俺は知らないです。病院には今日ちゃんと行くって言ってたんで、二・三日でどうにかなるんじゃないですかねー」
平良の言葉を聞いて、四人は互いに顔を突き合わせた。
「ちゃんと寝て、身体にいいもの食べてるといいけれど。暇だからって仕事してそうな気がするんだよね」
「……あり得るから困る」
「俺も心配だ」
「うんうん。ぼく、見に行きたいな。お見舞い、どうかな」
平良は言いづらそうに「そろそろ衣装着替えしませんかー」と提案してみたが、真剣に相談する四人に華麗に無視されてしまった。




