第9話 デートの約束
シャルロットとイネコがスライムカタツムリの殻を起き上がらせた。
そして、ゴロゴロと転がす。
「ヒビが入っとるからな。ゆっくりやぞ」
「あれ?うわー、これ楽しいー」
「こらイネコ、ゆっくりって言うとるやろ」
「ごめーん。ふふふ、ゴロゴロ」
やがて、殻からカタツムリスライムの核が転がり出た。
シャルロットが一目見て感嘆する。
「これは…」
そして、用意しておいたウエス布で核を取り上げ拭き拭きし、ゾーゴに手渡す。
「坊ちゃんお見事。大成功やで」
「うむ」
ゾーゴはそれを受け取る。
ノーマルスライムよりも一回り大きい。
そして、ほのかに光っている。
満足気に笑う。
「やっぱり、坊ちゃんは天才や」
「そうだろうそうだろ」
「で、これは…高く買ってくれますのん?」
「安心しろ、高く買い取ってやる」
「よし来た!イネコ、やったな!」
「やったー!たくさんご飯を食べれるー」
シャルロットが続ける。
「で、この核は何に使うん?夜の明かりに役立ちそうやけどな」
「いずれ石ころに戻る物だからな。普通に何かに役立つものではないみたいだ。まあ、魔法学部に寄付をする」
「寄付?タダかいな。なんでそんなことすんの」
「理力のけん…学術の発展の為だ」
シャルロットはニヤリと笑う。
「ニヤリ。ふーん。やっぱり坊ちゃんは偉いお方やなー。金の使い方をよく分かっとる。生きた金の使い方や。あと、あたしにもたくさんお金ちょうだい」
ゾーゴが言う。
「では、この調子で続けてくれ。スライムとカタツムリスライムの核を強化してから集めてくれ。シャルロット汁とイネコ毒汁でやってくれ」
「イネコ毒汁…言い方…」
シャルロットが口の中でつぶやく。
「ゾーゴ様はさっき、理力の剣って言ったわな。確かオークションどうこうの奴や」
その日の結果は、スライムで失敗1回、スライムの強化核をひとつ、カタツムリスライムの強化核をふたつ集めた。
冒険は終了となった。
冒険を終え、ゾーゴは邸宅に戻る。
玄関を開けると、アズが出迎えてくれた。
アズが不審げに言う。
「坊ちゃん、最近は休日に1日出かけていますが、一体どこへ行っているのですか?」
「ダチネルとブラブラしてるだけだよ」
「危険な事はしていませんか?」
「してない。心配してくれてありがとう」
ゾーゴは懐から水筒を取り出し、アズに渡す。
アズの喉がゴクリと鳴る。
「ゴクリ。これは⋯」
「例のブツだ」
「…シャルロット汁ですね」
アズの瞳が歓喜で潤む。
ゾーゴは嬉しくなる。
「あと、これもアズにプレゼントだよ」
今日1番大きなカタツムリスライムの核を取り出し、渡す。
アズの手のなかでほのかに光る。
「きれいです…」
「喜んでもらえた?」
「はい、とても…」
美しい笑顔に、ゾーゴは赤くなる。
夕食の後、2人のシャルロット汁茶の時間を楽しむ。
そして、ゾーゴは自室に戻る。
机の上には、貴族学校からの手紙が一通置いてあった。
ゾーゴは蝋印を取り開封する。
中には書面が1通
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来る〇月☓日、合同授業を行う。
目的
スライムの核を一つ以上狩り、提出すること
参加者
リーダー レインハルト・ヴェンリス 王子 帝王学部
サブリーダー トモエル・フォン・ペンドラゴン 伯爵家子女 帝王学部
武官 アモリア・フォン・チオル 伯爵家子女 帝王学部
書記 ゾーゴ・フォン・ムラタリア 伯爵家子息 統治学部
雑務 ソーカ・フォン・ドラコニア 男爵家子女 魔法学部
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ゾーゴはマジマジと眺める。
「なんだコレ。王子と、後は伯爵家ばっかりじゃないか。ひとり男爵家が混じっているけど」
しばらく考えて呟く。
「親睦を深める的なアレだろうか。よく分からんな。いずれにせよ、王子は…嫌だなぁ」
盗み聞きしたリズの会話では、王子がリズの好みらしい。
ゾーゴも学園で何度か見かけている。表情少なく、冷たい印象の超美男子。
ゾーゴは憎々しげに呟く。
「あんな子犬でキャッチボールしてそうな男の、一体どこがいいのか」
ゾーゴはふと鏡を取り出し、自分の顔を見る。そこには平凡な顔の一人の少年。
「…まあ、顔では確実に負けてるか」
翌朝。
ゾーゴは強化核を持って研究室に向かう。
一瞬躊躇して、研究室のドアをノックする。
「どうぞー。入ってくださーい」
リズの声が聞こえた。緊張する。
「失礼する」
「あれ、ゾーゴ様!?」
中にはリズと波平ハゲの中年男性がいた。
ゾーゴを見てリズが驚く。そして言う。
「お呼び頂ければ、私の方から伺いますのに」
「暇だったんだ。気にしなくていい」
中年男が立ち上がり出迎える。
「ゾーゴ様、よくおいでいただきました。私は室長のタカス・シンイールと申します」
「ゾーゴ・フォン・ムラタリアだ」
「さあ、お席へどうぞ」
勧められるままに椅子に座る。
タカスが言う。
「ゾーゴ様にはぜひお礼を申し上げたかったのです」
「お礼?」
「はい、例のスライムの核です。ああ、そうだ、先日ドアの前に置いていた核も、やはりゾーゴ様の物ですかな」
「そうだ。急いでいたのでな、勝手に置いていったんだ」
「いやいや、ありがたい限りです。あれ程の品質のスライムの核をどこで手に入れられたのですか?」
「それは…」
正直に言おうとして、やめる。趣味の冒険者ごっこの説明をする羽目になるからだ。
「それは、秘密だ。すまないな」
「いえいえ。お気になさらず。残念ではありますが…」
ゾーゴは昨日手に入れた強化核を取り出し、タカスに渡す。
タカスが目を見開き驚く。
「これは!こんな見事なスライムの核は見たことがありません」
リズも驚き、ゾーゴに話しかける。
「ゾーゴ様!ありがとうございます!これ程の品ならば、きっと研究が大きく前に進みます」
「う、うん…」
ゾーゴが赤くなる。
それを見てタカスがニヤリと笑った。
タカスがゾーゴに言う。
「ゾーゴ様、研究の報告をさせて頂きたいのですが…」
「うむ。実は、今日はその理由もあってここに来たんだ」
理力の剣とスライムの核。
それについて聞きに来たのだった。
タカスが言う。
「実は今日は、私もリズもバタバタしておりまして。申し訳ございません」
「そ、そうか。急に来てしまい、申し訳なかった。退散しよう」
「いえいえ。そこでですな、リズと食事しながら、リズから研究の報告をさせる、というのはどうでしょう。明後日はご都合はいかがですか?」
「「はい?」」
ゾーゴとリズが驚く。
タカスがリズに言う。
「リズ。明日の夜、ゾーゴ様にご飯をご馳走になりなさい。その際に研究についてご説明する事。いいね」
「え?は、はい」
タカスは勢いでリズを押し切る。
そして、次にゾーゴも押し切る。
「ではゾーゴ様、明後日の夕方、ここでリズを迎えに来てやってください。そして、何か美味しいものでも食べさせてやってください」
「え?」
「リズは独身の一人暮らしだから、食事に頓着していないのですよ。研究は健康第一。栄養を取らせないといけません」
「は、はあ」
「いやぁ、リズは独身でしてなぁ。どこかにいい男がいませんかなぁ。わっはっは」
「う、うむ。では、失礼する」
そしてゾーゴは研究室を出る。
何がなんだかよくわからない。
ひとり呆然と呟く。
「これはつまり、リズとデート…なのか?」
怖くなる。
「どうしよう。何をどうしたらいいんだ?誰に相談したらいい?」




