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第8話 スライムカタツムリとイネコ毒汁

ゾーゴは冒険者ギルドへ向かう。


途中の道で、貴族学校のトモエルとソーカを目にする。

ゾーゴは気づかれないように下を向く。


ソーカがトモエルにつきまとい、言う。


「トモエル様!合同授業の王子パーティーに私も入れてくださいっ」

「だから、人員選定は私がどうこうする話ではありません。学校が決めることです。私に言っても仕方ないのです」

「そこは、トモエル様の権力でああしてこうしてナニして」

「はあ?そ、そもそもなんでそこまでして王子パーティーにこだわるのですかっ?」

「お、怒りませんか?」

「え?わ、分かりました、怒りません。言いなさい」

「…コネです」

「…はぁ?」

「王子は怖いけど、アモリアに気に入られて王国最高ランクのコネで…」

「あ、あなたという人はっ!そんなことより先にすべき事があるでしょう!」

「うわーん、やっぱり怒ったー」


ゾーゴはそのまま足早に去る。






そして冒険者ギルド。

テーブルにゾーゴ、シャルロット、イネコが座り、今日の冒険の打ち合わせをする。


ゾーゴが言う。


「今日はカタツムリスライムを攻めてみようと思う。どうだ、シャルロット」


シャルロットがニヤリと笑う。


「ニヤリ。さすがやで坊ちゃん。あたしも興味あるわぁ。天才やわぁ」

「ニヤリ。そうだろうそうだろう」

「マスター!肉野菜炒めもちょーだい!」


カタツムリスライムとは、背中にぐるぐるの殻を背負ったスライムである。核は殻の中に入っている。

一般的な討伐方法は、松明で炙り粘体を殻の中に引っ込めさせ、そのまま殻を炙って熱で倒す。

核は普通のスライムよりも大きいが、火炙りの際の劣化が影響して、安くしか売れない。


ゾーゴが言う。


「シャルロット汁を一回試すぞ。実験してみたい事がある。そのあとイネコ汁で核を回収する作業に移る。イネコ、たくさん食べておけ」

「もぐもぐ。やったー!マスター、ポテトフライもちょーだい!青汁ジュースもー!」


シャルロットが言う。


「で、坊ちゃん。今日もシャルロット汁をお持ち帰りか?ふたつお持ち帰りするんか?ふたつなんやな?このこの、色男っ!」


ゾーゴがシュンとなる。


「いや、今日はひとつでいい」

「なに?ひとつ?もしかして、振られたんか?本命に振られたんか?セカンドに振られたんか?振られたんやな?振られたんやな?」

「ふられた訳ではない」


シャルロットの表情が真剣になる。そして、失恋中の女を狙ってナンパするかのように、心から心配そうに言う。


「…どないしたん話聞こか?」


ゾーゴは苦笑する。


「ありがとう。でも気にしないでくれ。あと、振られた訳ではない」

「そっか。分かった。でも、いつでも話してくれてええからな。話したら楽になるかもしれんから。あーあ、振られたんか」

「振られたわけではない」

「そっか…うん、ええんやで」


シャルロットが慈愛に満ちた目でゾーゴを見つめる。


「イラッ」


ゾーゴはイラッとした。









そして草原。


空をぼんやりと見ながら、待つことしばし、やがてシャルロット達の声が聞こえてくる。


「坊ちゃーん。カタツムリスライム連れてきたでー」

「鬼さんこちらー、手になる方へー」


その後ろにはカタツムリスライム。

ゾーゴは立ち上がりふたりに歩み寄る。


「さて、シャルロット汁の実験をしてみるとして…シャルロット、この水筒に汁を入れてくれ」

「うん?ええよ。ウンタラカンタラ(詠唱)…ウォーター」


水筒に汁が貯まる。


「坊ちゃん、いったい何すんの?」

「まあ見ておけ。よし、次は、と…」


カタツムリスライムの進路に、汁を水筒の4分の1程度垂らす。


「なに?どういうことや?」

「仮定の検証だ。前回は過剰な量のシャルロット汁をスライムに吸わせて、耐えられなくなった核が壊れた。俺はそう仮定を立てている。そこで今日は量を調整してみる」

「かぁっ!なるほどなぁ。坊ちゃんはやっぱり天才やわ」

「ふっふっふ。そうだろうそうだろう」


やがてシャルロット汁の上を通過したカタツムリスライムの動きがピタッと止まる。


「前みたいに、殻の中で核が輝いているのかな?」

「見えへんから分からへんなぁ。で、どうするん?更に汁を吸わせる?」

「そうだな。もう少しいってみよう」


カタツムリスライムに少し汁をかける。

殻の中から低い音が聞こえる。

外に出ている粘体が光り出す。


「なんか、ワクワクしてきたな」

「あたしもワクワクしてきたで」


さらに少し汁をかける。

殻に一筋のヒビが入った。そこから光が漏れる。


「坊ちゃん、ギリギリっぽいな。今が壊れるギリギリ手前とちゃうかな。これからどうするんや」

「イネコ。イネコ毒汁をかけてくれ」

「イネコ毒汁!?言い方が悪いよぉ…」


不本意そうな表情で、イネコがカタツムリスライムに近寄る。そして、無詠唱で指先からイネコ汁を出す。

カタツムリスライムに汁がかかった。

その瞬間、カタツムリスライムがビクッと震える。そして、粘体が崩れ落ちた。

転がる殻。その入り口から漏れていた光は、やがて徐々に消えていく。


イネコがズーンとなる。腐った魚の目で元粘体を見る。


「ズーン。毒汁…たしかにイネコ毒汁…」

「坊ちゃん、早く核を見たいなぁ。どんなんになっとるんやろか。あたし、めっちゃワクワクしてきたわ」

「よし、核を出してくれ」

「イエッサー。イネコ、やるでー」


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