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第4話 シャルとイネコのウォーター

ゾーゴの邸宅。

朝、ゾーゴは鳥のさえずりで目を覚ます。

ゆっくりと身だしなみを整え、食堂に向かう。

そして、アズが用意した朝食を食べ、ゆったりと食後の紅茶を飲む。


ゾーゴがアズに言う。


「今日は一日、外出してくるよ。昼食はいらない。夕食だけ用意しておいて」

「かしこまりました。どちらへ行かれるのですか?」

「ダチネルと街をブラブラするよ。アズも好きなことをしたらいい」

「ありがとうございます」


食事を終え、ゾーゴは家を出る。

しばらく歩き、冒険者ギルド近くの武器屋に入った。

武器屋の壁には剣や鎧がかけられている。ゾーゴは鉄と油の匂いを楽しむ。

武器屋の主人は、スキンヘッドのいかついおっさんだった。

主人がゾーゴに気付いた。


「お、坊ちゃん。いらっしゃいませ。今日は何のご用で?」

「前に俺が買った、革の鎧と小剣があっただろ?保管しているか?」

「もちろんですぜ。今日は試着して遊びますか?」


遊ぶ、という単語に引っかかる。金持ちの道楽だと思われている。

しかし、仕方ない。実際に、今までは道楽だった。この店で装備を買い、試着して楽しむ。冒険者のコスプレごっこだ。

実際に冒険をするつもりはなかった。

わざわざ意味もなく危険な冒険をする意味などない。そう考えていたからだ。


しかし、今日は冒険をして、シャルロットとイネコの無能を楽しむつもりだった。

ゾーゴが言う。


「皮の鎧と小剣を装備させてくれ。あと、松明も用意してくれ」

「松明ねぇ。スライム退治でもするんですかい?」

「さあな」


装備を終え、冒険者ギルドに入る。

チラホラと冒険者達がいる。

ゾーゴの存在に気付いたシャルロットが手もみをしながら近づいてくる。


「ようこそゾーゴ様!ささ、汚い場所ですが、どうぞどうぞ」


シャルロットはヘラヘラ笑いながら、奥に陣取っていたテーブルへ案内する。

途中、シャルロットをクビにした冒険者パーティーの横を通る。

彼らは、ゾーゴが高貴な人間だと気づいており、シャルロットを攻撃することなく大人しくしている。


ふと、シャルロットと冒険者パーティーのリーダーの目が合う。

シャルロットが笑う。


「ニチャア」

「くっ(怒)」


リーダーがスキンヘッドを光らせながら下を向いた。握った拳がプルプルと震えている。

ゾーゴとシャルロットが席に着くと、座っていたイネコが言う。


「ゾーゴ様、おはようございます!おなかすいたー!」


屈託のない笑顔にゾーゴは苦笑する。

そして言う。


「好きなものを食べればいい。おごってやる」

「やったー!」

「じゃあゾーゴ様、あたしもええですか?」

「ああ。好きなだけ食べればいい」


すぐに料理が運ばれてくる。

シャルロットとイネコは黒パンと肉の煮込みを貪り食う。

その間、ゾーゴは手持ち無沙汰である。

シャルロットが言う。


「むしゃむしゃ。せや、ゾーゴ様にお見せせんとあかんのやった。おーい、マスター。こちらの男前のゾーゴ様に空のコップを2つ用意してやー」


ゾーゴの前に空のコップが2つ並べられる。

シャルロットが言う。


「ほれ、イネコ。ウォーターをやれ」

「もぐもぐ。ふぁい」


黒パンを口いっぱいにほおばりながら、イネコはコップの上に手をかざす。

指先から無詠唱で水が出る。

ゾーゴが目を見張る。


「無詠唱!話には聞いていたが…」

「ゾーゴ様、飲んだらあかんで」


ゾーゴはコップの中の水を覗き込む。

茶色く、不純物が浮いている。


「イネコは魔力操作は苦手なんや。こんなモン、ブタも飲まへん」

「ビクッ!」


ブタという単語にイネコがビクッと反応した。

シャルロットが気味悪そうにそれを見るた。そして言う。


「さ、さて。次はあたしや。ウンタラカンタラ(詠唱)…ウォーター」


シャルロットの指先から水が出る。

シャルロットが言う。


「飲んでみてや。トブで。げっへっへ」


気味悪がりながら、ゾーゴはコップの水をのぞき込む。透明な不純物のない水だ。恐る恐る、一口なめる。

そして、カッと目を見開き、言う。


「これは魔力操作によるものか一切の雑味がない、しかしそれは無味というわけではなく滋味、身体に染み渡る潤いこそがこの味わい!これはまさに滋味のエクスカリバーやー!」

「ニチャア…ていうか、滋味のエクスカリバーって何なん?」

「勢いだ。しかし、このシャルロット水は、うまいな」

「いや、なんかその言い方…」

「聖水だと言ってもいい。シャルロットの聖水だな」

「…」

「聖水…ペロペロ」


ゾーゴは大切にシャルロットの聖水を舐めて味わう。

シャルロットが微妙な表情でそれを見る。

そうこうしているうちに、食事が終わる。


「では、行くか」


3人は立ち上がり、外に向かう。

シャルロットがイネコに言う。


「せやイネコ、そこのリーダーのコップに…ゴニョゴニョ」

「うん?分かった!」


シャルロットは、クビになった冒険者パーティーの席の横で、わざとらしく転ぶ。


「おっといけなーい!何もないのに転んだー!」


冒険者パーティーの面々が驚いてシャルロットに注目する。

その隙に、イネコがリーダーのコップにウォーターを注ぐ。


「いやぁ、ごめんねごめんね~」


シャルロットは謝りながらその場を去る。

呆然と見送る冒険者パーティー。

リーダーが怒りに震える。


「くそ、あの無能の豚め!調子に乗りやがって」


そしてコップの水を一気に飲み干す。

顔をしかめる。


「…うわ、なんだこの味は。ドブ川の水を煮詰めてから1年放置したかのようなまずさ!例えるなら、病原体のグングニルやー…ぐはぁ」


感想を述べてから、盛大に後ろにひっくり返るリーダー。

仲間達が騒ぎ出す。


「リ、リーダー、大丈夫!?」

「いかん、死にかけている」

「このなかにプリースト様はいらっしゃませんかー」


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