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第15話 オークション 中編

オークションは笑いと緊張の中進行する。


「さあ、本当にこの価格でよろしいですか?皆様、後悔されませんか?では、ハンマープライス!おめでとうございます!ホイミルーラ様が22万で落札!盛大な拍手を!ではホイミルーラ様、奥の控え室へどうぞ」


ゾーゴ席では、周囲に負けじとアズが懸命に拍手をしている。

ゾーゴはウェイターを呼び、アズに冷たい飲み物を用意するように言う。

ダチネルが言う。


「ゾーゴ、なかなか楽しいな」

「ああ、楽しい」

「最近のお前が休日に遊んでくれないのも、これでチャラにしておいてやるよ」


ゾーゴは、しまった、と思う。

ダチネルに口止めをするのを忘れていた。

アズには冒険のことを内緒にしており、ダチネルと遊んでいることにしておいたのだ。

見ると、アズがゾーゴをじっと見ている。少女のようにはしゃいでいたアズは消え、主人に忠実なメイドのアズに戻っていた。


「坊ちゃん、あとでお話があります」

「…はい」


そして、オークションは続く。

珍品貴品が続き、そして4つ目の品目。


「さて、皆様お待たせしました。次は本日の目玉商品となります。数百年前にペンドラゴン領内にて生まれた竜人メリュジーヌ。かの凶悪なモンスターは王国の騎士達に見事討ち取られ、ひとふりの剣を残しました。さあ、メリュジーヌの剣の登場です」


理力の剣が出品されるという噂の大元がこの剣なのだろう。

ゾーゴは息を凝らして壇上を見つめる。


やがて運ばれてきたのはボロボロの銅剣。

ダチネルが笑って言う。


「なんだよ、アレ。ボロボロじゃないか」


ゾーゴも思わず苦笑する。


「ひどいもんだな。まあ、投機対象なんだろうう。時間が経つほど値上がりする代物なんじゃないか」






さて、アモリアのテーブル。

アモリア・フォン・チオル。自信満々のアホ。

今日はアホ製造器である両親と一緒にオークションに参加している。

アモリアパパが言う。


「さあ、理力の剣の登場だ!お父さん落札しちゃうからなー」

「お父さん、頑張って!」

「任せておけ!20万!」


アモリアママが言う。


「さぁて、アモリアちゃんは強くて強くて強いから、理力の剣で箔をつけないとね!」

「ママー、そんなに強い強いって褒めないでよー」

「あらあら。私ったらつい本当のことを言っちゃったわね!メンゴメンゴ」

「ママは正しい!30万!」


アモリアが笑顔で言う。


「じゃあ、頑張ってもっと強くなるね」

「アモリアちゃんなら大丈夫!40万!」

「アモリアちゃんは長所を伸ばしてね。あなたの長所は強くて賢くて優しくて前向きで思いやりがあって可愛いところだからね!」

「うん!頑張るよー!長所を伸ばすねー」

「アモリアちゃんなら絶対にできる!50万!」








トモエルのテーブル。

トモエル・フォン・ペンドラゴン。融通の利かない努力家。


トモエルはメリュジーヌの剣を見てため息をつく。

ソーカが言う。


「トモエル様、さっき、ペンドラゴン領内のメリュジーヌ、って言っていましたが…」

「ええ、言ってましたわね。正確には、ペンドラゴン本家の領内です。私は分家ですわよ」

「へえー。じゃあ、あのボロボロの剣を出品したのは、トモエル様の本家となるんですか」

「ええ、そうです」


トモエルはため息をつく。


「本家はお金が入り用なのでしょう」

「そうなんですか?」

「嘆かわしいことです。人生とは修行です。努力して努力して自己を高めて、人は前のめりに倒れて死んでいくべきなのです。それなのに、くだらない賄賂やらで無為にお金を浪費して、ついにはこうやって家宝を売り飛ばすのです。本家は一体、何をやっているのやら」


ソーカは下手に何も言えず、ヘラヘラと笑う。

トモエルは自分の発言にハッとなり、言う。


「ソーカ、今の私の本家批判は他言無用にしてください。いいわね?」

「は、はいっ、もちろんです」


トモエルはまた理力の剣を見て、ため息をついた。





ビップルーム。

レインハルト・ヴェンリス王子。次の国王となる予定の男。

王子は豪華なソファーに座りながら、会場を見下ろす。

そこに、一人の男が入ってくる。

ヴァルドリウス・ヴェンリス。現国王。


国王が言う。


「よう、息子。元気か?」


王子が面倒そうに答える。


「まあね。元気だよ」

「そうか。おっ、あれが理力の剣か。ペンドラゴンの家が出品したヤツだ」


国王が顎をしゃくり、続ける。


「ペンドラゴンの家は長くないな。軍縮に怯え、金をばらまいて生きながらえようとしている。取り潰しも検討せねば」

「ふーん」

「この前の課外授業でトモエルと会っただろう。ペンドラゴンの分家だ。彼女を後釜に据える可能性もある。覚えておけ」

「はいはい。で、アモリアは?」

「お前の腹心にする」

「ソーカは?」

「ソーカ?ああ、それは賑やかしで参加させただけだ。伯爵家ばかりで空気がピリついてもいかんだろう。忘れてよい」


少し考えて王子が言う。


「ゾーゴは?特に何かの役に立つ人間とは思えないけどな」

「ああ、ゾーゴの父とは学友でな。とても仲が良かったんだ。温厚で思慮深い、とても良い男だった。王都に残って欲しかったが、親への孝を理由にムラタリアに戻って領地を継いだ」

「だから何?」

「親友の息子と我が子を引き合わせたかった。それだけだ」

「ふん、くだらない」


国王が笑う。


「息子よ、お前はあまりにも優秀すぎる。努力しなくても何でもかんでも上手くいってしまう。それでは生きていて楽しくないだろう。楽しめ。人生は修行じゃない。楽しむものだ」

「ふーん」

「ゾーゴが役に立たない男と思うなら、試しに友達になってみろ。見えてくるものがあるはずだ」

「まあ、やめておくよ」


国王は首を横に振る。


「頑固者。誰に似たんだかな」


拍手が響く。

やがてメリュジーヌの剣は落札に至った。

落札したのはアモリアパパ。


「おめでとうございます!チオル様が75万で落札!皆様、盛大な拍手を!ではチオル様、奥の控え室へどうぞ!」

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