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第12話 合同授業 後編

少ししてソーカが声を上げる。


「あ、またスライムの跡を発見しました。2回連続です。トモエル様、ほめてください」

「ソーカ、お見事ですよ。努力の成果ですわね」

「やったー!トモエル様に褒められた!」


見ると、向こうにスライムがいる。

トモエルが言う。


「では王子、次は私でよろしいですか」

「ああ。やってくれ」


王子がどうでもよさそうに答える。

ソーカがトモエルを応援する。


「トモエル様、頑張ってください!」

「ええ、頑張りますわね」


トモエルはスライムの方に歩く。その後ろを他のメンバーがぞろぞろとついていく。

そして、スライムまで5メートル程度の場所で足をとめる。


「さて、こんな所かしら。ウンタラカンタラ(詠唱)…ファイヤー!」


振り上げた右腕の上、宙に直径1メートル程のうごめく赤い炎の塊が生まれる。

アモリアが感嘆の声を上げる。


「トモエルちゃん、すごいよ!」


トモエルは満足げな顔になった。

そして、右腕を振り下ろす。炎の塊は指向性を持ち、スライムに襲いかかる。

スライムが炎に包まれた。

数秒でスライムを焼き尽くし、そして炎は消える。

残ったのは元は核だった石ころだけ。


ソーカが手を叩く。


「トモエル様最高!天才!この女ったらし!」

「ソーカってば、そんなに褒めないで…女ったらし!?」


ゾーゴは焦げた地面に近寄り観察する。

そして、事務的に言う。


「スライムの核が焦げていますね」


トモエルが隣に来て核を観察する。


「ちょっとやりすぎたかしら」

「まあ、それでも核は核です。これで課題をクリアですね」

「…いえ、駄目です」

「え?」


トモエルが拳に力を込めて言う。


「上っ面のクリアなど私は認めません。大切なのは結果でなく過程です。努力して、もっと良い核を手に入れること。その努力こそが大切なはずです」

「ヨッ!トモエル様えらい!男前!」

「男前!?」


ゾーゴはため息をつく。


「分かりました。では、次のスライムを探すことにしましょう」






しばらくして、ソーカが声をあげる。


「あ、またスライムの跡を発見しました。3回連続です。トモエル様、ほめてください」

「ふふふ。ソーカはスライムを見つける才能がありますわね」


ゾーゴも内心で感心していた。趣味がスライム狩りの人間としては、見逃せない才能だった。

アモリアが言う。


「じゃあ、次は王子がやってよー。久しぶりに王子の武術が見たいなー」


王子が面倒くさそうに答える。


「俺はいい。それよりも、ソーカ!」


ソーカがビクッとなる。


「ビクッ。は、はい王子、なんでしょうか」

「次はお前がやれ」

「…はい?」


ソーカが困惑する。


「わわわ、私が何をするんでしょうか」

「スライムの核を手に入れる。それ以外にないだろう」

「で、でも私は…」


ソーカがモジモジする。

ソーカは稀な存在である召喚術士。召喚術士とは、異界の門を開きモンスターを召喚し使役する力を持つ。

しかも、ソーカはドラゴンを召喚する力を持つ。

しかし、肝心のMPがない。ドラゴンの尻尾の先分しか門を開けない。


「私は、ドラゴンの尻尾しか…MPが…無能でして…」

「ピクッ」


無能という単語にゾーゴが反応する。

モジモジするソーカの姿に胸がチクリと痛む。

だが、無表情を貫く。

見かねてトモエルが言う。


「王子、私がやりますわよ。ソーカは下がっていなさい」


アモリアが口を挟む。


「ダメダメ。ソーカちゃん、やって見せてよ」

「え?」

「ドラゴンなんてすごいじゃん!見せてよ」

「で、でも⋯」

「別に倒せなくてもさー、トモエルちゃんも私も王子もいるし、ゾーゴ君もいるし、別に失敗してもいいじゃん。気楽にやっちゃいなよ」

「…はい。わかりました」


スライムはまだ遠くにいる。

ソーカが震えながら詠唱する。


「どうせスライムすら倒せないので、ここでお見せしますね。ナンタラカンタラ(詠唱)…いでよロンロン!」


地面に黒い穴が空く。50センチ程度の穴。

そこから、ドラゴンの尻尾がスルスルと出てくる。そして、1メートル程度出たところでつっかえてしまう。

尻尾がうねり、少しでも外に出ようと努力するが、かなわない。


「ああ、ロンロン…ゼエゼエ」


そして門は閉じていき、尻尾は中に戻っていく。


アモリアが言う。


「ソーカちゃん…」

「ビクっ。す、すいません。お見苦しいものを見せてしまって。なんとお詫びすればいいのか」


卑屈になるソーカに、アモリアが言う。


「すごいよ」

「…へ?」

「ボク、ドラゴンの尻尾なんて初めて見た!すごい!あのドラゴンはロンロンちゃんっていうの?」

「は、はい。ロンロンです」

「今度、触らせてよ。すごいなぁ、もう少し尻尾を長く召喚できたら、尻尾ぶん回しで絶対に凄く強いよ。ソーカちゃんの今後が楽しみだね」


「ブワッ!」


ソーカの目から涙があふれた。

トモエルは感動している。

王子は無関心である。


ゾーゴは無表情で向こうを見る。スライムがゆっくりこちらに迫ってきている。うねうねしている。


孤独感の中、シャルロットとイネコを思い出した。

ふたりに会いたくなった。3人でスライム狩りをしたいと思った。

あのふたりとアホな会話をしたい。


そう考えると気が抜けてしまった。


「可能性があるだけマシだろ。俺には可能性がないんだ」


小さくつぶやいてしまう。そして、ハッと我に返る。

王子がゾーゴを見ていた。

聞かれていたか、と考えるが、ゾーゴは無表情を貫く。


「じゃあ、そろそろ帰るか」


無表情で王子が言う。

ゾーゴが確認する。


「では王子、スライムの核はトモエルが手に入れた1点でよろしいですね」

「うむ」


王子は地面から石ころを拾う。

詠唱をしてから、それをスライムめがけて思い切り投げる。

ヒュン、と音がなり、次の瞬間スライムが吹き飛んだ。

王子が言う。


「さあ、帰るぞ」






ゾーゴの邸宅。

机でゾーゴは合同授業の報告書を書く。

私見は一切述べない。

発生した出来事だけを淡々と書く。


ソーカが3回スライムの跡を発見した事。

アモリアがスライムを吹き飛ばした事。

トモエルがスライムを焼き、核を回収した事。

王子が石ころでスライムを吹き飛ばした事。


書き上げて、ひとつため息をつく。


「王子とアモリアは人外だな。トモエルは上位の魔法使い。ソーカはレアな召喚術師。そして俺は…ただの書記官だ。王子やアモリアは、生きていて楽しいだろうな」


立ち上がりベッドに移動する。

寝転がり、天井を見ながら言う。


「ソーカがこのまま無能で終わればいいのに」

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