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25話

ゼフィサスに付いて行き、着いたその店の外観は水色と白で可愛らしく、女性が好きそうな店構えであった。

予約制の店で、マリアも一度も来てみたいと思っていたカフェだ。

可愛いが詰まったお店で、男性だけでは入りにくそうなカフェである。

ゼフィサスは緊張した面持ちで先導して入店してくれた。

それが、少し可愛くてマリアは思わず笑みがこぼれる。


店内も可愛らしくて、マリアは思わずキョロキョロと店内を見回してしまう。


案内された場所はゆったりとした時間を過ごせそうな個室で、パステルカラーのふかふかのソファーは座り心地も良く、生地の肌触りの良さに思わず睡魔に襲われそうだ。

注文したスイーツセットは美味しそうで、それを載せている食器類も顔が反射するほど磨かれていて美しい。


「なにもかもが可愛いすぎる!制服も可愛い~」


外観と同じように水色と白の上品な作りワンピースにエプロン。少しフリルも多めで、エプロンに刺繍されているお菓子が、また可愛い。


「リアは好きかな、って予約しといた」


以前、テクラとのやり取りを思い出す。

甘い物を一緒に食べに行くのも約束していたのを覚えていてくれたのだろう。

本当はお祝いでマリアが手配すべきだったのだろうが、それどころでは無くすっかり忘れていた。


「素敵なお店をありがとうございます。ところで、これからどう呼べば・・・テクラ?先輩?」

「できれば名前で・・・」

「テクラ?」

「じゃ、なくて・・・」

「ゼフィサス?」


ゼフィサスはうんうんと頷き、嬉しそうな表情をマリアへと向けてきた。

あまりにもその顔が神々しすぎて、マリアは眼球保護の為に笑うふりをして目をそっと閉じた。


「呼びにくければ、ゼフかゼファーでも良いよ」

「なら、ゼファーって呼びます」


ゼフだと、どうしてもシルヴィアの事が頭をチラつく。

金切り声で何度もゼフ先輩、ゼフ先輩と呼んでいたのはあまり思い出したくない記憶だ。


「なんで、テクラって名乗ってたんですか?」

「本名だと、相手が一人で暴走しそうで・・・」

「あぁ・・・たしかに」


ゼフィサスの名前が手紙に書かれていれば、色々と詮索したり期待したりしてしまいそうである。

愛称でも、調べれば誰か直ぐにわかるだろう。

本人もそれを懸念してバレにくい異名を選んだと説明し、最後に騙すつもりは無かったと謝ってくれた。


「でも、途中でリアには気づいて欲しかった・・・」


ゼフィサスは少しだけ寂しそうに肩を落としていた。


「ゼファーはいつ、私がリアだと気づいたんですか?」


「図書室で魔力の相性の本を借りた時。リアの書く数字が特徴的で文通相手に似ているなって思った。確信したのは、課題している時のリアのノート見た時。あとは、俺ほぼ無表情なのに俺の気持ちわかってそうなのも、そうなのかなって思うきっかけにはなった」


文通を始めたばかりの頃からである。

そんな細い所まで観察しているゼフィサスを改めて凄いなとマリアは思った。

そして、魔力の相性が良いと感情が読み取りやすいと、以前読んだ本に書いてあった事を思い出す。


「そんなに早くから・・・。なら、ゼファーが急に話してくるようになったのって・・・」


「文通相手がどんな子か知りたかったから。リアは俺が近寄っても媚びたり、擦り寄ってくる事もなくて、ちゃんと一定の距離を取ってくれてたよね?」

「そうでしたか?自分じゃよくわからないけど・・・」

「何度か急に顔、触ってきた時は驚いたけど」


その言葉に、過去にゼフィサスの顎付近や額などを触ってしまった事を思い出し、一気に顔が赤くなった。

マリアにとっては思い出したくない過去だ。


「わ、忘れてください!」

「嫌」

「先輩、今日は沢山しゃべりますね!」


嫌だと即答されて、言い返す言葉も思い浮かばずマリアはついつい憎まれ口を叩いてしまう。気の強いところがこう言う時に出てしまうのは、マリアの残念なところだ。


「リアと喋るのは楽しいし、会えなかった分・・・沢山喋りたいから」


この時、マリアはゼフィサスには敵わない事を悟った。

どこまでも素直なゼフィサスの言葉はまっすぐで甘く、恥ずかしくはあるが信用できるだけの想いを感じる。


「あ、ありがとうございます」


紅茶をひと口飲んで、マリアは聞きにくいことを口にする。


「その・・・ゼファーはまだ、私の事を・・・どう・・・」

「好き」


即答だ。

サラリとさっぱりと清涼感を感じるほどあっさりとゼフィサスは答えた。

それはもう、いつものアンニュイさが爽やかさに置き換わるレベルであった。


「もちろん、一度フラれた時は落ち込んだけど、俺じゃなくてテクラを見てくれてるのは嬉しかった。しかも、まだテクラとしては諦めなくて良い事もわかっていたし、俄然やる気がでた。リアは?」


すっと最後にゼフィサスの表情か消えて、いつもの無表情である。

しかし、リアには少し緊張している様に見えた。

あの日の告白とは違い、ゼフィサスはきちんとマリアを見てくれている。

寂しいと感じる事も無い。


「私・・・テクラがゼファーだったらと考えた事も何度かありました。まさか、そんな奇跡みたいな事が起こるはずなくて・・・。法陣局にシャープンから1人、合格が出た・・・それがゼファーだって聞いた時、テクラに結果を嘘つかれたと思った。その時は悲しくて、不信感が否めなかった。本当は信じるべきだったのに・・・そんなテクラを信用しきれ無かった私でいいの?」

「それは黙っていた俺にも原因があるだろ?」

「否定はしないけど・・・」

「それに、相性が良いのがわかってるから、隣に居てくれるよね?」

「うぅ・・・」


(確かに言った!言いました!)


「これからも、デートでこうやって甘い物食べに行こう?」


ジッと紫色の瞳がマリアを射抜く。

いつもと違いギラギラとしたその瞳は、獲物を狙う猛獣の様な鋭さもありマリアにはいささか刺激が強い。


「わ、わかりましたから!そんなに見つめないで!!」


マリアは両手で目線をガードして、顔を晒す。


「お返事は?」


顔を背けて見ていないはずなのに、ゼフィサスの醸し出す雰囲気と声に圧倒される。


「せ、先輩の隣にいます!はい!テクラも先輩も大好きです!」


マリアは早口で言い終える。

噛まなかったのを褒めて欲しい。


「ゼファー・・・でもう一度?」


しかし、ゼフィサスは褒めるどころか纏う物が余計に黒くなった気がする。


「はい!ゼファーの隣にいます!テクラもゼファーも大好きです!!!!」

 

マリアは二度目もはっきりと言い切り、ゼフィサスは満足そうにアイスコーヒーをかき混ぜ、ストローに口につけた。

ここが個室でよかったなと、マリアは思った。


そして、それ以降は少しずつ緊張もほぐれて美味しそうなスイーツたちを堪能することにした。

少し慌ただしく、色気もない告白ではあったがそれがマリアらしくもある気もする。


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