24話
暑さもここ最近は落ち着きて、過ごしやすい気候が続いて居た。
マリアはその日の授業も1日中、心ここにあらずであった。
アルフレッドからゼフィサスが法陣局に受かったと言う話を聞いてから、テクラから合格は嘘だったと言う内容の手紙が届くのでは無いかと、毎日レターボックスを確認したが届く事は無かった。
そして、本日はテクラと待ち合わせをした日だ。
マリアは授業が終わると、鏡の前で数十分自分の顔と格闘し、待ち合わせ時間の10分程度前に待ち合わせの場所に着くように学園を後にした。
結局、マリアはお祝いの品を用意する事はしなかった。
心から剥がれ落ちた気持ちが戻る事は無く、買いに行く理由もなくなった。
ローラには何度か買いに行ったか聞かれて、教えてくれた手前、申し訳なく思いつつも忙しくて行けてないとだけ誤魔化した。
流石に、噂の事は知っているようで何度かその話になったが、笑って適当に誤魔化した。
嘘をつかれているかもしれないとは、相談するのが恥ずかしくて嫌であった。
マリアは待合場所に指定された噴水前に予定通り10前には到着した。
緊張をどうにか和らげようと、ゆっくりと深呼吸をして辺りを見回してみる。
噴水を挟んで対局側にスラリと細身で長身のシャープン学園の制服を着た人物が立っているのが見えた。
他に、制服を着て居る人物は居ない。
丁度、噴水から水が噴き出ていて制服しか確認できず、ゆっくりとその人へと近づいてみた。
まだ、待ち合わせ時間よりも早く、違う人物の可能性もあるが、テクラの可能性もある。
会える嬉しさ、嘘をつかれた猜疑心、どんな人物なのかと言う不安と好奇心。
色々な感情がマリアの中で混ざり、鼓動がバクバクと破裂しそうな程うるさい。
少しずつ近づく距離に逃げ出したいと言う気持ちも微かに生まれ、足も少し震える。
近づけばその人物の髪型や手などパーツがハッキリと見えてきた。
どこか見覚えのある髪型と横顔に、マリアはピタリとその場に止まる。
「せ・・・ん、ぱい・・・?」
微かに出た声は噴水の水の音にかき消された。
相手には聞こえないだろう、マリアはそう思った。
しかしその人物はマリアの声に反応したように顔を動かし、マリアの方へと顔を向けてきた。そして、マリアははっきりと相手の顔を認識した。
優しく微笑むその顔が懐かしく感じて、なぜその人物がこの場所に居るのか分からなくて、マリアは動く事ができなかった。
(テクラは嘘を付いて無かった?)
(たまたま、ゼフィサスがここにいるだけ?)
どんな答えが正しいのか、混乱しすぎた今のマリアの状況では答えが出せない。
そして、答えを聞きたいのに、まったく足が動かない。
そんなマリアの状況を理解しているように、ゼフィサスはゆっくりとマリアの方へと向かって歩いてきた。
そのまま通りすぎる事も無くマリアの前で止まる。
「リア、はじめまして」
(ぁ・・・)
「1-3235・・・わたしが・・・俺がテクラです」
愛称を呼ばれ足元から全身に温かいものが湧き上がるのを感じた。
それは、初めてゼフィサスに愛称を呼ばれた時に感じた温もりと同じで全身が温もりに包まれていく。
ゆっくりとゼフィサスが手を差し出してきて、マリアはその手に吸い寄せられるように握手をした。
触れた手からも温かい物が流れ込んでくる。
「先輩?」
「うん」
「なん・・・で?」
「俺がリアの・・・マリアの文通相手だから」
名前を呼ばれた瞬間に一気に身体が熱くなり、マリアは目眩がして足元がフラつく。
ゼフィサスが倒れない様にそっとマリアの腰を抱えて支えた。
「ごめん、さっきから感情が制御できてなくて。魔力をリアに流しすぎた。気をつける」
「魔力?」
「前に読んだ本に書いてなかった?感情が高ぶっている時に相性の良い相手には、名前を呼んだり、触れたりすると魔力が流れるって」
「書いてた?」
「書いてた」
腰を抱えられたまま、ゼフィサスは愛らしい動物を見つめるかの様な優しい眼差しをマリアへと向けてきた。
それなりに密着していて顔も近い。
久々に見たゼフィサスの顔はやはり整っていて、暫く見ていない事で抵抗力が落ちていたマリアには近接での直視はとても心臓に負担になっている。
しかし、まだ足に力が入らず距離を取る事は不可能であった。
「リア、少し話そうか。聞きたいことも沢山あるだろうし。色々と話したいし・・・」
「はい」
ゼフィサスの言う通りマリアには沢山気になる事がある。
「先輩」
でも、まずは最初に伝えなければいけない言葉があった。
マリアは覚束無い足にどうにか力を入れて、自立する。
そして眩しいゼフィサスの顔から目を逸らしたい衝動を抑えて、ゼフィサスの顔をじっと見つめ、テクラの願いだったその言葉をマリアは心を込めて口にする。
「・・・そしてテクラ。合格、おめでとうございます。私も本当に、本当に嬉しかった。・・・おめでとう!」
ゼフィサスは口元を抑えて、目を瞑る。
「あ、ごめんなさい!気持ち悪かった?」
「ちがっ!俺、リアに会えない間本当に今までで1番努力したから、リアからお祝い言ってもらえるのが嬉しくて。感極まってるだけ・・・」
「え!?」
「ありがとう。本当にただ嬉しかっただけだから」
暫くして落ち着きを取り戻したゼフィサスは、ゆっくり話をするために場所を移動する事となった。
マリアはゼフィサスに誘われて近くのカフェへと着いて行った。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます!
文通相手発覚。
キャラクター数多くなかったので、予想通りだったとは思いますが・・・。
残り数話、お付き合いいただけたら嬉しいです!!




