23話
長期休暇が明けて、授業が再開された。
人が疎で静かだった休暇中とは違い、校舎内はとても賑やかだ。
どこに居ても休暇の間は何をしていたかと言う話題で盛り上がっていて、自然と耳に聞こえてくる。
テクラから合格の知らせが来て、初めて2人が顔を合わす日時が決まった。
授業が再開された、1週間後の放課後だ。
アリスが何日か上げた予定の中で、テクラの現場実習が無く学内に居るのがその日しか無かったため、その日に決まった。
決まれば、その日に向けていつも以上にお肌の手入れをしたり、数日だけだがダイエットをしてみたりと、マリアもそれなりに気合を入れ最後の足掻きをしてみたりしている。
「ローラ、合格祝いって何がいいと思う?」
「合格って・・・もしかして、テクラさん?え?!受かったの?」
「うん。そうみたい」
「おめでとう!」
決して自分の事では無いが、マリアは自分の事のようで嬉しくなった。
「お祝いに何かプレゼントしたいなって」
「なら、いよいよ初対面なんだね〜。どんな人が楽しみだね!」
そして、ローラは明後日の方向を見ながら考え込む。
マリア自身は男性が貰って喜びそうな物に心当たりが無く、悩み抜いた末に友人に頼る事を選択した。
「うーん。文通していたわけだし、無難にペンは?」
「もう、持ってるのに?」
「実用性があっていいんじゃないかなぁと」
「確かにそうかも。ありがとう!また、見に行ってみる」
ペンはプレゼントとしてはあまり考えていなかったので、マリアにはとても有意義なアドバイスだ。
「一緒に行こうか?」
「プレゼントは自分で選びたいの」
アドバイスは貰って、プレゼント自体はマリア自身が選びたい。
勿論、ローラと一緒に行けば楽しいだろうが、1人で見て集中して考えたかった。
マリアはプレゼントにそれだけの気持ちを込めたかった。
「なら、おすすめのお店だけ聞く?」
「それは教えていただきたい!」
「前に新作のモンブラン食べに行ったカフェの近くにあるお店がおすすめだよ。品揃えいいから名前はねぇ・・・」
ローラに店名と詳しい場所を聞いてメモを取る。
「今日か明日にでも、行ってみるね」
「あ・・・私、そろそろ行くね。次の講義室遠いの」
「ローラ、ありがとう!またあとでね」
ローラは荷物を纏め足早に講義室を出て行った。
マリアは次の授業も同じ場所のために居座ったままだ。
ローラからもらったアドバイスで、どんなペンが良いかマリアは考え始めた。
書きやすさは勿論だが、色などは何色が好きだろうか。
テクラに聞いたことが無かったのでマリアはまだテクラの好きな色を知らない。
「リアも次ここか?」
一人でぼーっと考えていると、後ろからアルフレッドが声をかけてきた。
「そう、ここ」
「ふーん。そう言えば法陣局、今年ウチから合格者が1人出たって」
「そうな・・・」
「スゲェーな、あのゼフィトスとか言う先輩。頭、まじでいいのな」
「は?どういう事?」
何故急にゼフィサスの名前が出て来たのか、思わずマリアは聞き返してしまった。
「だから、今年はあのゼフィトスっていう先輩が、うちからは久々に一人だけ受かったらしいぞ。あの人が受かったんなら、お前の文通相手ダメだったんだろ?」
「・・・・・・」
「残念だったな。あ、鳴った・・・授業始まるぞ」
本鈴が鳴り、そのままアルフレッドの会話は終了した。
マリアは話の内容が理解できないまま宙ぶらりんの状態で授業が始まった。
そんな状況でマリアは授業内容が入ってくる事はない。
(は?1人・・・。先輩、だけ?)
マリアはテクラが不合格だったのに嘘をついたのではないかと言う疑念を抱き始めた。
なぜそんな嘘をつく理由があるのかと考えたら、マリアに会いたいからではないかとは思う。
啖呵を切った手前、不合格だった事を言い出せ無かったのだろうか?
不合格だと知っても、マリアから会う提案はしただろう。
逆に、合格したと言う直ぐにわかる嘘を付いても、マリアには不信感しか持たなくなるだろう。
今まで築いてきたテクラへの気持ちが少しだけ崩落する。
そのポロポロと落ちる気持のかけらが、これ以上広がらなければいいがマリア自身にそれを止める術はない。
(ここにきて・・・。てか、先輩もとか聞いてない!本当に凄い人だったんだな・・・)
まさかの人物がテクラと同じ就職先が志望であった事は寝耳に水であった。
まぁ、ゼフィサスの進路を聞いた事が無かっただけではあるが。
そこにきちんと受かるゼフィサスをマリアは尊敬している。
だが、もしゼフィサスが受けて無ければテクラは受かったかもしれない・・・。
色々なモヤモヤした気持ちが生まれる。
そのままマリアは残りの授業も終始ボーッとしたままであった。
たまたま実技などの授業で無く、座っておけば良いだけの授業だったため、マリアは心ここにあらずでも凌ぐ事ができたのは、幸運であった。




