18話
一日ゆっくりと部屋で休み、その次の日にマリアはローラと共に学校へと登校した。
捻挫した足の影響で歩きにくさはあるが、ガッチリと固定をして居るので今は痛みはそれ程ない。
時々、すれ違う人が、マリアへと視線を向けてきている気がした。
一昨日の話を見たり聞いたりした人かもしれないとは思いつつも、マリアは今日の一限目の授業がある講義室へと向かった。
「な〜んか、見られてるねぇ」
ローラもそれに気付いたのか、マリアへこそっ、と声をかける。
「みたいだね」
昨日、授業が終わってからローラは置きっぱなしだった鞄と、一緒に受けている授業のノートを纏めて、マリアの様子をみにきてくれた。
足の事を話すと、明日からしばらくは一緒に登校しようと提案してくれた。
同じ授業を受けることもあるが、別の授業もある。
そのため、登下校はほぼ別々だ。
しかし、慣れるまでは不便なこともあるかもしれないと、ローラの優しさに甘えることにしたのだ。
暫くはローラと投稿できるのがうれしい。
「マリ!」
講義室に入ろうとしたら、アルフレッドが講義室から出てきて入り口を塞ぐ。
いつもの、怒った様な口調ではない。
「「おはよう、アルフ(くん)」」
「あぁ・・・おはよう。マリ、体調は大丈夫か?」
「心配してくれたの?大丈夫。ありがとう」
「今、ちょっとだけ良いか?変な噂が流れてる・・・」
アルフレッドはマリアとローラを廊下の端へと移動させて、真剣な表情で小声で話し始めた。
「リア、お前があの先輩と仲のいい1年生の美人でかわいい女子を妬んで、暴言を吐いて池に落とそうとしたのに、誤って自分が落ちたって噂が少しずつ流れてる。お前があのイケメンの先輩に夢中だとか言う話も・・・」
「はい?」
アルフレッドに思わず聞き返した。
「だから・・・」
「それって、反対だよね?」
アルフレッドがもう一度説明しなおそうとすると、ローラがそれを遮った。
珍しくローラの表情も固い。
「うん。色々と混ざってる・・・。先輩に付き纏っていたのはシルヴィアだし、一昨日の朝急に呼び止められて、大声で話し始めるたから人目もあるし放課後に池のほとりのガゼボで待ち合わせた。そしたら、結構色々と言われて、私もだいぶ口悪く言い返した・・・。そのまま、帰ろうとしたら腕を掴まれたから振り払おうとして、足を捻って・・・気づいたら池の中?押された様な気もするけど、そこは不鮮明・・・なんだよね・・・」
昨日、ローラには説明していた事をアルフレッドにも説明する。
あまり、面白い話では無いのでアルフレッドの表情も少しずつ険しくなっていく。
「・・・そのシルヴィアとか言うのが噂の出どころっぽいけど?」
アルフレッドは考え込む。
だから、先ほどから廊下でもちらちらと視線を向けられていたのだろう。
「取り敢えず、俺も噂はデマだって流すけど、辛い時は俺かミーサンでも頼れ。なんで被害者側が・・・」
「アルフ、ありがとう」
いつも突っかかってくる子供ぽい雰囲気とは違い、真剣に心配してくれて、頼りたくなる抱擁力をアルフレッドに感じる。
アルフレッドも成長しているんだな、と親戚のお姉さんのような気持にマリアはなった。
「気にすんな」
少し照れた様に顔を背ける。
そういうところはいつも通りぶっきら棒だ。
「あの先輩には話しといた方がいいんじゃないか?」
「・・・先輩とは距離を置こうと思って」
ニコリと笑って答えると少しだけ、マリアの胸がシクシクとする。
「え?あんな素敵な人なのに?」
「よくしてもらっては居たけど、やっぱり私みたいなのは先輩の近くにいても見劣りするって言うか・・・」
「そんな事気にする必要なんかないだろ。あの女に言われたのか?」
「少しだけね」
ローラもアルフレッドも表情を固くする。
「こんな可愛いマリちゃんを傷つけて!」
ローラはぎゅーっと抱きして、ヨシヨシとマリアを撫でた。
その温もりが心地よくてありがたい。
「アルフは一限目ここ?」
「いや、違う」
「なら、わざわざ私に話に来てくれたんだ・・・。ごめんね」
「謝るな、気持ち悪りぃ」
「アルフくん、ちなみにまだ時間は大丈夫?」
「あ!やべぇ!!」
チラリと廊下にかけてある時計を確認して、アルフレッドは慌て出した。
この慌て方からして、少し遠い講義室なのだろう。
「じゃ行くわ。色々と用心しろ。同じ授業の時はミーサンか俺の側に居ればいいし」
「アルフ、ありがとう!!」
そのままアルフレッドは自分の授業の行われる方へと駆け足でかけていった。
「ローラも一昨日は何も言わなくてごめんね」
「巻き込みたくなかったんでしょ?でも、次は話してね。寂しいし、悲しかったよ。もしマリちゃんに何かあれば私たちの心も傷つくんだからね?もし、次も同じようなことがあって黙ってたら絶交ね」
「それは嫌だから、話します」
予鈴がなり、ローラとマリアも講義室へと入っていった。
噂を聞いてきた友人達から、色々と事情を聞かれて間違った部分を訂正する。
今マリアに出来る事はそれくらいだろう。
それは本鈴が鳴るまでの短い時間行なわれた。




