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16話

ゼフィサスと話すのは楽しいし、ゼフィサスの考えている事が何となくわかるのも嬉しい。


ただ、ローラに言われたように何も突出した才能がなく、平凡なマリアがゼフィサスの横にいるのは、マリア自身にとって身の丈に合っていないような気がずっとしていた。


ゼフィサスと一緒に帰ったり、課題のアドバイスを貰ったりしたのはマリアが望んだ事ではなく、たまたまゼフィサスと話す中で優しいゼフィサスが気を使って声をかけてくれたからだ。


学園の高嶺の花。


あれだけ素敵なゼフィサスに憧れる女性は多い。


そのゼフィサスがたまたま声をかけてくれた運だけの女。


その運が尽きたのだ。


平凡なマリアでもゼフィサスと魔力の相性が良ければ、自信をもって横にいれたのだろうか。


ぼんやりと薄れる意識の中で、マリアの脳内はそんな事ばかりを考えていた。




先輩が・・・



テクラに会いたかった・・・





ぼんやりとしてきた意識の中、誰かが近づいてくるのが見え、そのままマラリアは意識を手放した。





********





マリアが池に落ちた瞬間、シルヴィアは顔を真っ青にして立ちつくしていた。

暫く経ってもマリアは水面に姿を現さない。

1秒がとても長く感じる。

シルヴィアは恐怖のあまり足が震えだし、逃げ出そうと振り向いた瞬間、シルヴィアが恋焦がれる人物が慌てたようにシルヴィアの横を通り過ぎてそのまま水飛沫と共に池の中へと姿を消した。


「なんで・・・」


すれ違ったのは一瞬だけ。

だけれども、その人のいつもの無表情な顔は焦りで歪んでいた。

しかも、その場にいたシルヴィアに目も向けない。


シルヴィアの表情に恐怖と嫉妬が入り混じる。


目撃者もそれなりにいそうではあるが、距離がそれぞれ離れていた。

水に落ちた音を聞いてからこちらを見ている者ばかりで、ハッキリと見たものが居るかも怪しい。

シルヴィアは、今は逃げ出すのは利口ではないととっさに判断した。


「誰か!誰か助けて!」


シルヴィアは悲痛な叫び声と表情を作り、わざと大声で泣き叫んだ。

その泣き声を聞きつけ、何人かの人物が集まってきた。

髪も振り乱していれば見る人は勝手に色々と勘違いするだろう。


()()()()()先輩に近寄らないでっ・・・て、あの女の人に・・・注意されて・・・手を払っただけなの・・・、そしたらあの人勝手に足を滑らせて池に・・・あぁ・・・。ごめんなさい・・・。ごめんなさい。ごめんなさい・・・」


泣き叫んでいると、ゼフィサスがマリアを肩に背負い水面に浮上し、顔を覗かせた。

マリアはぐったりとしていて顔は見えない。


(運は私の味方ね)


「ゼフ先輩!」


岸辺へと近づいてきたゼフィサスにシルヴィアは駆け寄った。

集まってきた男性2人がマリアとゼフィサスを岸辺へとあがるのを引っ張り上げる。


ゼフィサスが上がりきるとシルヴィアが駆け寄り腕へと縋り付いた。

触れる事で濡れてしまうのは、今は仕方ないだろう。


「先輩、怖かった。この人が私に・・・」

「どけろ!」


ゼフィサスはシルヴィアの手を払い除けて、地面に横にされたマリアへと近づいて行った。


「リア・・・」


ゼフィサスのその瞳は心配そうではあるが愛しげで・・・、マリアしか映っていなかった。

それすらも、今のシルヴィアには毒でしかない。


ゼフィサスはそのまま心肺蘇生に取り掛かる。

マリアを引き上げてくれた人間と二言三言何かを言い交わすと、一人が胸部圧迫をはじめた。

その後、ゼフィサスがマリアへと息を吹きこみ、二度目の胸部圧迫。

その途中でマリアは水を吐き出した。

その吐き出した水を飲みこまないように、慌ててマリアの身体を横にする。


そこでマリアの呼吸が再開したのか、ゼフィサスの顔に安堵の表情が窺えた。

暫く呼吸の状態をみて、意識が無いままのマリアを抱えてゼフィサスはそのまま何処かに消えていった。


シルヴィアにはその光景がモノクロで見ていた。


「大丈夫?」


立ち尽くしていたシルヴィアに集まっていた中の誰かが声をかけた。

シルヴィアはそこで再び泣き始めた。


涙は嘘ではない。


だって悲しいし辛い。


あの人に見てほしい。


図書室で初めて会った日。


運命を感じた。


この人だと心が欲しいと叫んだ。


見た目も勉学もなんでも最高の相手を見つけるために磨いてきた。


そして、図書室でその相手を見つけたのだ。


少しずつ、周りから印象操作していけばいい・・・。


よく一緒にいるなと言う印象から。


付き合っているの?と聞かれれば笑って誤魔化す。


すると相手は勝手に想像してくれる。


特に、相手が有名であれば有名であるほど自然と話は広がって行ってくれる。


その人の情報を皆が聞きたいから。


しかし、しばらくしたら避けられる様になり、他の女が近づいてきた。


(なんで・・・?なんで、なんで、なんで・・・)


悲しくて涙は止まらない。


そして、異性はシルヴィアの涙に弱い。


シルヴィアはそれをよく知っていた。


だから、今は泣きながら先ほどの状況をただ話せばいい・・・それだけだ。



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